職種別! エンジニア採用天気予報 2011年4〜6月編
今が旬! 2〜3次請けSIエンジニア、
ソーシャル業界に転身図る
景気の上向きが伝えられるが、エンジニアの転職市場はどう変化しているのか。ソフトウェア系職種を4つに分け、新年度が始まる4月以降について、3カ月間の短期予想を行った。各分野のベテランアドバイザーたちが、この2011年春の求人動向を予報する。 |
※この記事は東日本大震災前の取材内容を基に、構成しています。
足踏み状態から脱しつつあるといわれる日本の景気。地域によっては前進・後退を小刻みに繰り返しており、今後の米国、アジア、中東の経済情勢次第では大きく下振れする可能性もあり、予断を許さない。総務省が3月1日に発表した1月の完全失業率(季節調整値)は4.9%と、前月と同じ水準。これから見る限りは、景気回復の動きは緩やかなものだ。
ただ、リクルートエージェントのキャリアアドバイザーらが日々接するエンジニアの転職マーケットからは、年初来、求人回復の兆しが明瞭に伝わってくる。職種によっては2月の求人総数が前年同期比の1.5倍となったところもあり、製造業全体の新興国向け輸出増加や設備投資の活性化が、雇用にも反映した格好だ。
自動車サプライヤや半導体製造装置メーカーでは、年間数十人規模での採用を計画しているところもある。年度替わりの4〜6月の株主総会シーズンまでには、大手企業の中途採用計画がはっきりするが、中には大量採用を打ち出すところもあるのではないか。
いずれにしても、これまでパッとしない天気に鬱々(うつうつ)としていたエンジニアも、草花の芽吹きとともにむっくり起き上がり、動きだしてもよいシーズンの到来といえる。
もちろん、こうした求人増加傾向も、リーマンショック以前の水準にははるかに及ばな今だその半分ぐらいだろう。果たして今後、そこまで戻ることがあるのかどうかさえ分からないが、3年前に比べれば人材の厳選傾向は依然続いている。気を引き締めるに越したことはない。
求人回復の報を聞いて動きだすのは1人だけではない。同じ動機で動くエンジニアは何千、何万人といるだろう。それだけ景気回復期には競争も激しくなる。自分の技術的な特性と今後のキャリアに対する明確なビジョンを持って、春の転職戦線に臨んでほしい。
グローバル化がますます進む中、エンジニアのコミュニケーション能力、わけても英語力の重要性はますます高まっていることは覚えておこう。
・気になる職種の天気予報を見る
【アプリ系SE】 ソーシャル業界のけん引で求人増、ただし採用難易度は高止まり |
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【天気予報】 晴れ! 【求められるのはこんな人!】LAMPやモバイル用OSの知識を持つ人、Javaでの開発経験者 |
3月は年度末の駆け込み需要ということもあり盛況を呈しました。4〜6月期も引き続き堅調に推移すると予想していますが、採用難易度は高止まりの傾向があり、ピンポイント採用になると思います。求人数自体は伸びるものの、採用条件はさほど緩くはならないのではないかと見ています。
目下の求人をけん引するのは、何といっても携帯電話やスマートフォンでのソーシャルアプリ、ソーシャルゲーム開発分野でのニーズです。今はゲームだけではなく、あらゆるアプリケーションがソーシャル化していく傾向にあります。AR(拡張現実)技術を使った広告サービス、電子書籍などもソーシャル化の流れから無縁ではありません。こうした時代の流れを読み取りながら、ユーザーのニーズを先取りし、アイデアを実装化する力がエンジニアには求められています。
リクルートエージェント ITマーケット キャリアアドバイザー 福森嘉奈美氏 |
当社の登録者の中では、特に2次〜3次請けのSI企業出身のエンジニアから、ソーシャル系業界への転職意欲を強く感じます。ソーシャルの技術はまさに旬のもので、ソーシャルアプリ開発エンジニアは時代の花形と見なされているようです。
ソーシャルアプリ開発で武器となるのは、Webアプリケーション開発のためのLAMPの技術。これに加えてiPhone、AndroidのOSや開発環境の知識、Object-C、Javaでのプログラム開発経験などです。
もちろん、これらすべての知識を備え、実務で使いこなしているエンジニアは決して多くはありません。そのため、企業では自宅サーバでLAMP開発環境を構築し、iPhoneやAndroidのアプリを書いているようなプログラマにも採用の手を伸ばそうとしています。これまでフリーランスでアプリ開発をしてきたエンジニアでも、高いスキルを持っていると採用の幅が広がっています。
一方、SI企業は1社当たりの求人数は伸び悩んでいます。しかし、大手だけでなく中堅SI企業からの求人も出るようになり、全体として求人数は増える傾向にあります。各種パッケージを用いてのSI案件や、クラウドサービスの案件が増えています。
最近、あらためて注目されているのが、Javaによる基幹系・業務系システムの開発経験者です。もちろん、開発力に加えて、当該業界の業務知識も求められますから、決して楽な転職とはいえませんが、挑戦しがいはあると思います。
【コンサルタント】 攻めのシステム投資に動く顧客企業 コンサルティングファームの求人も活性化 |
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【天気予報】 晴れときどき曇り 【求められるのはこんな人!】IFRS、SCM、金融業界の統合再編に伴う開発・提案の経験者 |
2011年に入って、中途採用求人の伸びが目立つようになりました。同時に、応募者の書類選考通過率も高まっており、企業の採用意欲の回復傾向が顕著になってきました。コンサルティングファームでは大手だけでなく、中堅、中小からと求人企業のすそ野が広がってきた印象があります。
リクルートエージェント プロフェッショナルサービス事業 第二マーケット コンサルタント 垣見大介氏 |
これまでもJSOX(金融商品取引法)に基づく内部統制の基準作りや、個人情報保護法に基づく企業内セキュリティの強化など、法律制定や制度改革に対応した経営改革には、顧客企業も投資を怠ることはありませんでした。また、利益を生み出すためのコスト削減につながる投資は、不況下でも熱心に取り組んだものです。
しかし、現下のシステム投資は、制度対応やコスト削減だけでなく、事業拡大、売り上げ拡大につながる前向きな案件も増えてきています。
そういう状況下でコンサルタントに求められるのは、あらためて「提案力」といえるでしょう。とりわけ、ITエンジニアがコンサルタントへ転職する場合には、この要素が重要になります。顧客のシステム要件に沿って、いわれたことに基づいて開発するという姿勢では、コンサルタントとしては到底やっていけません。
顧客との会話の中から顧客が真に困っていることを見抜き、先回りして提案していく姿勢が欠かせません。コンサルタントを目指すエンジニアは、日頃からそうした意識を持って仕事に取り組むことが大切になります。
コンサルタント職に求められる知識・経験としては、会計、IFRS(国際財務報告基準)、SCM(サプライ・チェーン・マネジメント)、金融業界のM&A関係といった要素が挙げられており、これらの採用基準はこれまでとあまり変わりません。
また、戦略的なアウトソーシングが重要なカギになってきます。戦略的な業務請負に加えてシステム運用、海外データセンター構築、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)といった案件も増加してくるでしょう。こうした領域の経験者は、転職活動でも有利に動けると思います。
そして英語力。読み書きに加えて会話ができればベストで、TOEICでいえば700点以上。海外現地スタッフへの指示など、英語を使う頻度が高まってきています。コンサルティングファームでは以前から英語力をプラスに採点する傾向はありましたが、それが+1採点から+5採点ぐらいに上がった印象を受けます。
【ネットワーク・サーバ関連】 ソーシャル系企業のニーズは強いが、求められる要件も高度化 |
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【天気予報】 曇り 【求められるのはこんな人!】Linux、WindowsなどのサーバOS、サーバアプリやDBなどの知識を持つ人 |
ネットワーク・サーバ関連の求人は全体に回復傾向にありますが、前期と比べて全体的には微増といったところです。その中でもPC、携帯電話、スマートフォンで利用するソーシャルアプリや、BtoC向けWebサービスのネット系企業の、インフラ構築分野からは強い採用ニーズがあります。
ただ、いずれの企業も採用基準は高く、なかなかそのハードルを越えるエンジニアが少ないというのが現状です。
現在好調のネット系企業の多くが、最初は小さくサービスを展開するうちにトラフィックが増大し、それをハードウェア、OS、ミドルウェアなどサーバ構成の工夫を通して、上手に負荷分散することに成功したという経験を持っています。当然ながら、求人対象のエンジニアにも同等のスキルを求めるわけですが、それだけの大規模トラフィックをさばいた経験がある、もしくは幅広いプロダクト技術を持ったエンジニアは市場にそう多くいません。
リクルートエージェント ITマーケット キャリアアドバイザー 森 琢郎氏 |
もちろん、そのハードルを越えられるエンジニアにとっては、新しい経験が待っています。こうした企業は経営の意思決定スピードも速く、実力を発揮すればすぐにコア人材として重用されることになります。報酬についても、技術に見合うだけのものを提供する柔軟な姿勢を取っています。
今後、スマートフォンが普及するにつれて、日本の技術とサービスがグローバルに拡大していくチャンスも増えますので、チャレンジしがいのある領域であることは間違いありません。
一方、ネットワーク・サーバエンジニアのクラウド技術への対応も、これから注目されるところです。クラウドなのか自社運用なのかは、企業のIT投資の方向性に関わるところでもあります。クラウドへの移行が進めば、社内のサーバ技術は不要とされるのではないかと危機感を覚えるエンジニアもいるかもしれません。
確かに、単純な社内のサーバ保守業務は、今後は縮小傾向にあるでしょう。しかし、クラウドサービスを利用したシステム基盤の運用業務や、それに伴うベンダ側との調整業務を経験していれば、今後クラウドサービスの展開を予定している事業会社のIT担当者や、クラウドサービスを提供するデータセンターやSI企業側のエンジニアとして、また新しい仕事が待っているはずです。
いずれにしてもこれからのサーバエンジニアは、ネットワーク基盤からサーバOS、ミドルウェア、アプリケーションに至るまでの幅広い階層にわたる知識が不可欠です。その中のスキルを柔軟に組み合わせ、自分が強みとするスキルセットとして売り込んでいくという姿勢が、転職活動に当たっては欠かせません。
【制御系SE】 自動車サプライヤが堅調、今後は総合電機メーカーの動きに注目 |
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【天気予報】 晴れときどき曇り 【求められるのはこんな人!】ファームウェアエンジニア、アプリ層の開発者で英語力がある人 |
自動車サプライヤからの求人が、自動車ECUの組み込みソフトなどを中心に、堅調に動いています。東海地区の企業だけでなく、北関東や首都圏でも求人が増えてきつつあります。制御ソフト開発の経験があれば、必ずしも自動車関連の経験はなくても可とする企業が多いことも特徴です。
リクルートエージェント プロフェッショナルサービス第二マーケット コンサルタント 畠田仁氏 |
その他、半導体製造装置、工場で使用する搬送機などFA(ファクトリー・オートメーション)機器、ネットワーク機器、外資系メーカーからの携帯端末のソフト開発求人が増えています。医療機械の制御ソフトウェア開発も、経験者以外でも採用を検討する会社も出てきました。このような傾向は4月以降も続くと予想できます。
これまで求人が少なかった大手電機メーカーから、制御系やネットワーク系のソフト開発などの即戦力求人が、4月以降に発生する可能性があります。リーマンショック以前の状況まで戻ってはいないものの、それでも順調な回復の歩みが確認できるのは確かです。今まで採用を抑制してきた大手企業も求人を出してくるでしょう。転職希望者は、少なくとも2011年度上半期は、明るい展望を描いてもよいのではないでしょうか。
視線を「海外企業とのビジネス」という方向に向ければ、さらに転職の受け皿は広がります。近年は、日本企業の仕様を受けて設計から製品開発までを請け負い、製品を供給するODM(Original Design Manufacturer)企業が増えています。技術知識があり、仕様書が書け、ODM先企業との窓口になれる――そんなメーカー側のエンジニアへの求人ニーズもあります。
開発コストを抑える目的などから、ODM側の人材やブリッジエンジニア、独自のソフトウェアを保有している外資系企業の日本法人などで、よりグローバル環境での開発を行う求人は増えてくると思われます。語学が堪能な技術者のニーズもさらに高まるでしょう。
制御ソフトウェア開発も海外生産にシフトしていく今、エンジニアに求められるスキルは、ベースとなる技術力に加えて、マネジメント力やコーディネイト力、さらに英語力が、これからの定番になっていくのではないでしょうか。
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提供:株式会社リクルート
企画:アイティメディア営業企画
制作:@IT自分戦略研究所編集部
掲載内容有効期限:2011年5月17日
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