第2回 法人設立準備に奔走。お役所巡りは大変
ナレッジエックス 中越智哉
2006/9/5
この3月に独立したばかりのITエンジニア。彼はなぜ独立を決意したのか。法人を設立するに当たって、具体的にどんな苦労があったのか。独立を果たしたいま、どんな思いでいるのか。それを語ってもらった。 |
前回「起業を夢見る学生時代から独立前夜まで」に続いて、今回は独立を決意した後、どのように準備を進めていったかをお話しします。
■法人設立準備開始
独立といっても、法人でないフリーランスとして仕事をするというのは考えていませんでした。
独立後も、勤めていた会社からもし依頼があれば、仕事を請け負いたいと考えていました。しかしやはり個人ですと直接契約してくれるケースは少なく、そういった意味でも法人を設立する必要を感じていました。もちろん、ゆくゆくは仲間を増やして、組織として仕事をしたいと考えているからというのもあります。そこで、退職が決まってからはもっぱら法人設立のための準備をすることとなりました。
何はともあれ、設立に必要なものに関して情報を集めなければなりません。独立を意識していままで過ごしてきたものの、実際の事務的な手続きに何が必要なのかについて、私はほとんど知識を持っていませんでした。
私が設立しようと考えていた法人のスペックはこんな感じです。
- 取りあえず社員は自分1人。当然役員も自分1人
- 資本は自己資金で賄う。自己資金は300万円前後
これに合う法人形態を探すことになりました。
■旧法での有限会社か、新会社法での株式会社か
折しも私が法人設立を考えていた今年の初めごろは、新会社法が話題になっていました。書店に行けば「新会社法で起業はこうなる!」のような本があふれ返っていました。私もそれらの本を読み、「有限会社は新しく設立できなくなる」「資本金1円、役員1名でも株式会社が設立できる」などは知っていました。
急がないのであれば、新会社法の設立を待って、小資本で役員1名の株式会社を設立するという選択肢もあると思っていました。そうすれば自分の考えていた法人のスペックに合います。
ただ問題だったのは、新会社法の施行時期と、具体的な登記手続きでした。私は退職後すぐに法人として仕事を始めたいと思っていましたが、法人設立の準備を始めた時点では、新会社法の施行日は正式に決まっていませんでした。仕事を始める時期が法律の施行時期に左右されてしまうというのは、あまり歓迎できることではありません。
また、新会社法の仕組み自体を解説する書籍は多かったのですが、具体的にどういう手続きを踏めば設立登記ができるのかまで詳しく解説した書籍は、まだほとんどありませんでした。というより、施行されてみないと分からないことがまだまだたくさんあったということです。
そんな理由もあり、新会社法での株式会社設立はやめ、旧法での有限会社を設立することにしました。
有限会社の設立を決めてまず初めにしたのは、インターネットで情報を集めること。いまやどんな情報でもインターネットから探し出せるといわれ、有限会社設立の手順についてもいろいろな情報がありました。しかし、細かいところがいまひとつ分からないなど不安があったので、やはり書店で解説書を購入しました。
■発見! 創業支援施設
ちょうどそんな情報集めをしていたころ、妻が地域の区報に「創業支援施設の入居者募集」という記事があるのを見つけ、私に教えてくれました。最初は自宅で始めるとしても、そのうち事務所を借りて仕事をしたいと思っていましたので、この募集は私にとって非常に魅力的なものでした。
自宅の近くで事務所を借りようとすると、SOHO向けの小さなスペース(区画貸し)でも結構な賃料が掛かります。いくら有限会社で小資本で始めたところで、費用として出ていく固定費が多くては、すぐに資金が不足してしまいます。
その施設は非常に賃料が安く、しかも経営や事業計画をサポートしてくれる「インキュベーションマネージャ」という専門のスタッフが常駐しています。まさにこれから独立しようという自分のような人間のためにある場所だと思い、すぐさま応募しました。
応募の際には事業計画書を添付する必要がありました。そうです、大学時代に起業を考え直す原因になった、あの「事業計画書」です。これが書けるかどうかが、あのときの自分といまの自分との違いを示すことになるのです。
内容の良しあしはともかく、確かに当時よりも具体的に計画書を書くことができました。その後、妻や親しい友人にも読んでもらいコメントしてもらいながら、何度か書き直して完成させました。
後に書類審査、面接などを経てめでたく入居できることとなり、6月中旬からこの施設に通勤しています。
■お役所巡り
法人の設立をするには、いろいろな役所を回らなければなりません。役所関係は基本的に平日の9〜5時しか開いていませんので、役所に行く日は有休を取りました。
実は、少々お恥ずかしい話なのですが、私は会社の設立をするまで、自分の実印というものを持っていませんでした。私の場合、サラリーマン時代には実印がなくてもほとんど困ることはありませんでした。ですが会社の設立登記を行う場合は、必ず実印が必要です。
ですので、生まれて初めて自分で印鑑を作りに行きました。印鑑の材質にいろいろな種類があるというのもこの年になって初めて知りました。
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