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転職目的別・これが私の生きる道

第10回 家族との時間、開発する時間。どちらも犠牲にしない道

アデコ 高野和幸
2009/10/14

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「業務を軽くしてもらうことは可能。でもそれはベストじゃない!」

 筆者にも同じくらいの年齢の娘がいて、同じように生活とのバランスについて悩みながら仕事に取り組んでいたことがあります。だからこそ、高橋さんの辛い状況がとてもよく理解できました。

 筆者が転職活動についてご相談をいただくITエンジニアの中で、同様の悩みを抱えている人が増えてきていることを伝えました。決して高橋さんにだけ問題があるわけではない、ということを、ゆっくりと理解してもらうことにしたのです。

 少し力が抜けたところで、筆者は「他のクライアントのプロジェクトに変更してもらうことはできないのですか?」と質問してみました。転職ばかりを勧められると思っていた高橋さんはびっくりした様子でしたが、「まずはお客さまにとってベストな選択肢を探ることを大切にしているんです」とご説明しました。

 「もちろん、もっと業務の軽い現場に変えてもらうことは可能です。でも、それはわたしにとってベストな選択肢ではないと思います」

 そう思う理由はなんでしょうか。高橋さんは、現在の会社ではハードな現場でいかに頑張れるかが社内評価の最重要ポイントであり、業務が軽いプロジェクトではどれだけ努力して成果を出しても、これまで以上の待遇を得ることは難しいからだ、と教えてくれました。

 また、「頑張り」についても、最終的には残業時間が長い、休日出勤が多いといった指標で判断されることになるそうです。評価を得ようと思えば、現場を変えても状況は変わらないだろうとのことでした。

 「それでも、奥さまと娘さんのための時間は確保できるようになりますよね。現在の高橋さんの目的は達成できると思うのですが、いかがですか?」

 筆者の再度の質問に対して、高橋さんははっきりとした口調で断言しました。

 「やっぱりわたしが仕事で頑張って、2人を幸せにしたいという気持ちは変わりません。業務の中でしっかりと評価を得られるよう努力しながら、妻を助けたり、娘と一緒にいる時間をできるだけ確保できる環境。わがままかもしれませんが、ベストな選択肢は間違いなくこれですね」

 確かにそれがベストだと思います、とお伝えすると、高橋さんは笑顔でうなずいてくれました。

家族のために使う時間以外は、ずっと仕事をしていたい

 高橋さんは、もともと周囲のペースを気にしやすい性格で、自分の仕事が終わってもなかなか席を立てず、プロジェクトリーダーという立場なのでメンバーがいるととても帰宅しにくい、と悩みを打ち明けてくれました。

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 また、本来であればマネジメントよりも開発業務が得意で好きだったが、現在の会社ではリーダー以上にならないと年収がアップしないため、そのキャリアパスを選んだのだと教えてくれました。

 そこで筆者は、周囲にお客さまがいる環境ではなく、自社で業務に専念できること、高いプログラミングスキルをマネジメントと同様に評価していただけることをポイントとして、自社ソフトウェア製品の開発に携わることができる企業をいくつかご提案しました。

 高橋さんは忙しい業務の合間を縫って積極的に企業に応募し、面接の場で各企業での働き方をしっかりとイメージしながら、ベストな選択肢を探っていきました。

 本命だと考えていた外資系の企業が、意外にも「みんな仲良く、残業もみんなで」といった雰囲気だったために候補から外れるなど、当初の予想とは異なる展開もありました。しかし、高橋さんの揺るぎない信念のおかげか、複数の内定を獲得することができました。

 最終的に高橋さんが入社を決意した企業は、完全成果主義が徹底されており、裁量労働制もしっかりと制度化されていましたが、非常にハードなことが業界内でも有名でした。他の内定企業の中には、もっと仕事と生活のバランスが取りやすい企業が含まれていたので、筆者は何度か「本当にそれで大丈夫ですか?」と確認してしまいました。

 すると、高橋さんの口からは驚くようなプランが。

 「わたしは転職活動を通じて、家族のために使う時間以外はずっと仕事をしていたいんだと気付きました。大好きな開発業務をして、それが待遇アップにつながるなら尚更です。定時で帰宅して娘を寝かしつけたら、そのまま会社に戻って仕事をすることも考えています。また、そのうち自宅の一室に環境を整えて、そこで仕事ができるよう会社と交渉中です。だから、仕事は十分なボリュームがないと困るんですよ」

 今回の決断の理由の中に「企業が自宅から近いこと」も含まれていたことを思い出した瞬間でした。

あなたが最も大切にしたいものは?

 高橋さんの転職活動における成功のポイントは、「自分が大切にしたいもの」をクリアにできたことだと思います。

 「目的地」が明確であるからこそ、そこへと向かう有効な「手段」を検討することができます。

 ワークライフバランスといっても、ベストバランスは人それぞれ。どんな仕事であれば、どんな生活であればハッピーだと感じられるのかを真剣に、前向きに考えることで、初めてどちらも充実したものにできると思います。

 ぜひ普段から、ご自身のベストバランスについてイメージしてみてください。

 

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筆者プロフィール
アデコ 人材紹介サービス部 コンサルタント
高野和幸
1974年埼玉県生まれ。大学卒業後、テレビゲーム雑誌、パソコン雑誌の編集・ライターを経て、2001年アデコに入社。スーパーバイザーとして、通信キャリアや大手航空会社のユーザー系システム開発企業にて派遣スタッフの管理を担当し、厚い信頼を得る。現在はキャリアコンサルタントとして、IT関連職種を中心に転職希望者のサポートを行っている。日本産業カウンセラー協会認定 産業カウンセラーおよびキャリアコンサルタント資格取得。

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