第9回 リーダーの方程式「信頼+安心+納得=安定を与える人」
樋口研究室
山口紀子
2011/4/25
リーダーは、メンバーや顧客に「安定」を与える存在である。「信頼感」「安心感」「納得感」、3つの視点で安定感をもたらそう。 |
■ キャリアアップを目指すうえで、必要になるリーダーシップ
震災からの復興、不況からの脱却、財政の立て直し――危機や難局から抜け出す時には、リーダーの存在が欠かせません。しかし今、「リーダーの不在」に悩む企業が多いと聞きます。
世の中に、技術に強い人、経営ができる人、マネジメントに卓越した人はたくさんいます。しかし、それと「リーダーという仕事」を果たすことは、似て非なるものです。さらに、「リーダーシップ」はマネジメントスキルやテクニカルスキルのように体系化して学びにくいという特徴があります。
ですが、リーダーシップは、いつの時代でもどの場面でも求められます。特に、現在のように難しい局面に立たされている時ならなおさらのこと。エンジニアがキャリアアップを図るうえで、「リーダーシップ」は必須だといっても過言ではありません。
では、リーダーシップとは具体的にどのようなもので、どう形成すればよいのでしょうか? 今回は「キャリアづくりにリーダーシップを活用する」ビューを紹介します。
■人材育成の現場が考える「リーダーの素質」
まずは、どのような素質を持った人が「リーダーの素質がある」と言われるのかを考察しましょう。人材育成の現場、リーダー育成を成功させる研究分野においては、「リーダーの素質」として、以下の能力を挙げています。
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- 自立力がある人
- 交渉力がある人
- 決断力がある人
- 経営力がある人
なるほど、分かるようでいて分からないですね。一体、何に注意して仕事をすれば、このような力が身に付くのか、いまひとつピンとこない人は多いと思います。
そこで、多くのエンジニアに「自分が考えるリーダー像」について聞いてみました。出てくる意見はさまざまですが、それらをじっくり眺めてみると、リーダーとしてあるべき行動や考え方、仕事への取り組み方が見えてきます。
■リーダーとしてふさわしい人はどんな人?
「あなたにとってリーダーとしてふさわしいのはどんな人?」――こんな問いを、さまざまなエンジニアに投げ掛けてみました。あなたは、どの答えに一番近いですか?
- プログラマのAさん:「最新の技術を極めている人。そうでなければ、現場のエンジニアに尊敬されない」
- SEのBさん:「システム全体を完ぺきに把握している人。何かあった時に頼りたくなる」
- 技術セールスのCさん:「お客さまの満足度が高い人。高い満足度を維持するためには、高い意識がなければ務まらない」
- プロジェクトマネージャ(PM)のDさん:「沈着冷静で落ち着いている人。プロジェクトをうまく運営するためには必須の能力」
- グループリーダー(管理職)のEさん:「決まったことを正確に実行する人。信頼の源泉はそこにあると思う」
リーダー像はさまざまですが、いくつかの共通点があります。リーダーには「高いスキル」「深い知識」「経験」が必要である、という答えが導けそうです。
■アンチパターンを考えよう。リーダーにふさわしくないのは?
では、この問いはどうでしょうか。「リーダーとはいえないのはどんな人?」
- プログラマのAさん:「困っている時に助けてくれない人」
- SEのBさん:「難しい局面で回避策ばかり考える人」
- 技術セールスのCさん:「お客さまの要望に耳を傾けない人」
- PMのDさん:「責任を押し付ける人」
- グループリーダーのEさん:「約束や日時を守らない人」
上記のような行動をする人が近くにいたら本当にイヤですね。上記の声から「逃げる」「避ける」「遠ざける」といった行動は、リーダーには好ましくないと、エンジニアたちが感じていることが分かります。
■リーダーの方程式「信頼+安心+納得=安定を与える人」
最後の質問です。「あなたがリーダーに一番期待することは何?」
- プログラマのAさん:「常に技術をリードし続けて、正しい選択肢を示してくれること」
- SEのBさん:「いつもユーザーに満足度の高いシステムを提供すること」
- 技術セールスのCさん:「どんな状況でも、お客さまにぴったりフィットした製品を提供できること」
- PMのDさん:「納期やコストを必ず守ってくれること」
- 管理職のEさん:「頼んだことをしっかりと実行してくれること」
さて、彼らの意見の共通点にお気付きでしょうか。「いつも」「どんな時も」「必ず」「しっかり」といった行動は、どんな人から見ても「信頼」がおける行動です。そういう行動をする人と一緒に仕事をすれば「安心」ですし、メンバーやお客さまも「納得」できます。
「信頼」「安心」「納得」――これらの3つのキーワードは、リーダーとして仕事を実行するために必須となる資質と言えるでしょう。
役職上のリーダーがいても「リーダー不在」状態はある |
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