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なぜ、彼らは転職を考えたのか

第11回 目先の給与アップにつられて転職、そしてすぐ後悔

アデコ
藤田孝弘

2008/7/30

第10回1 2次のページ

ITエンジニアは、どのような理由で転職を考えるのか。いくつかの事例から、転職者それぞれの課題と解決のプロセスを紹介する。似たような状況に陥ったときの参考になるだろう。

 転職活動で苦労した末に、ようやく入れた新しい会社。なのに、想像していた仕事内容と異なるなど予想もしなかった事態に。入社したばかりなので、今後のことを考えるとすぐに転職することもできない……。そんな話を聞いたことはありませんか。

 ITエンジニアが転職を考えたさまざまな理由、その課題と解決のプロセスを紹介する本連載は今回で最終回です。「入社後、間もなく転職を考えた理由」と題し、2つのケースについて解説します。

CASE1 入社後、会社の方針と自分の目指す方向が異なることに気付く

 大友さん(仮名)は、携帯コンテンツ運営会社に勤める30歳のITエンジニアでした。大学卒業後、新卒でシステム開発会社に入社して以来、一貫してシステム開発を経験しています。当時の会社は4社目でした。年齢の割に転職回数が多めだといえます。

 1社目は、業務系システムの開発を幅広く手掛ける会社でした。ユーザー企業に常駐し、1〜2カ月の短期プロジェクトにプログラマとして参加することが多かったといいます。上流工程を経験したいと考え始めた大友さんは転職を決意し、2社目のシステム開発会社に転職。会社の規模は小さいのですが、古い付き合いのある特定の企業から直接仕事を請けていました。そのため小規模プロジェクトながら、要件定義から携わることができました。

 ところが不運なことに、この会社は大友さんの入社後1年で業績が急激に悪化し、倒産してしまいました。失業した大友さんは、経済的な問題で実家に戻り転職活動をすることにしました。

 その結果、地元で有力な情報雑誌を発行する会社に入社が決まりました。これが3社目です。今後拡大予定のインターネット向けシステム開発職として採用されたのです。

 同社はインターネット事業を始めたばかりでした。事業自体が小規模だったため、大友さんの仕事の内容は、Webシステムの開発だけではなくコンテンツの企画からデザイン、コピーに至るまで、インターネット媒体運営のすべてにかかわりました。そんな状態で3年間勤務しましたが、大友さんの中では「ITエンジニアとして、特定分野の技術を究めたい」という思いが芽生え始めました。そして転職を意識するようになったのです。

大企業からの誘い

 そんなとき、大友さんは、かつてコンテンツ制作の関係で取引があった会社から誘いを受けました。大友さんの仕事ぶりを評価し、「君のような人材に来てほしい」というのです。

 ここは携帯電話のコンテンツを提供する会社で、特定分野においてはトップの実績を持っています。大友さんも以前から注目していた会社でした。「技術を究めたい」という希望がかなうかどうかは不明でしたが、業界最大手からの誘いということで面接に行くことにしました。

 話はとんとん拍子に進み、2週間ほどで内定をもらうことができました。提示された年収は570万円。何と80万円のアップです。

 かつて取引があったため、会社の内情もよく分かっていました。社員の定着率が高いという評判を聞いていたので、長く勤められるという安心感もありました。

 業界大手の企業からの誘い、しかも大幅年収アップという話に、大友さんの心は揺らぎました。結局、大手携帯コンテンツ会社への入社を決めることになりました。

キャリアアップって、何だろう?

 入社後、大友さんは、開発エンジニアとして部門に配属されました。ところが、エンジニアというのは名ばかりで、実際に行う仕事は、画面やレイアウトの修正といったものがメインだったのです。年下の上司から振り分けられる仕事は、定型的な業務のみ。前職以上に仕事内容への不満が募っていったそうです。

 業界大手、定着率、年収アップという点のみで転職を決めたことへの後悔の念をかみしめつつ、大友さんはキャリアアップの意味を深く考えるようになりました。

 大友さんは、奥さんと子どもの3人家族です。家族のためにも、簡単に会社を辞めて転職することはできません。転職回数も増えたので、これ以上の失敗は許されません。しかしこのままでは、成長のできない環境で腐ってしまいます。

 大友さんは今回の転職を振り返り、何が悪かったのかを真剣に考えてみました。失敗の要因は何だったのか? 給与条件、定着率といった環境面ばかりに気を取られてはいなかったか? と自問自答を繰り返し、次のような考えに至りました。「仕事を選ぶポイントとして重要なのは、待遇ではなく、自分の目指す将来像が描けるかどうかである」

真のキャリアアップを目指して再び転職

 大友さんは、再び転職活動を開始することにしました。3カ月間という短い在籍期間が不利であることは承知のうえです。前回とは異なり、将来のキャリアパスを重視して活動を進めることにしました。これまで我流で身に付けてきたスキルを洗練されたものにしたいと考え、方法論やノウハウに実績のあるシステム開発会社複数社に応募することにしました。

 心配とは裏腹に、大友さんは企業から高く評価され、結果として中堅のシステム開発会社から内定をもらうことができました。

 この会社は、大規模なインターネット開発やビジネス系のシステム開発を多く手掛けた実績を持っています。前回の転職での反省を踏まえ、内定後に配属予定部門の方に時間をもらい、会社や部門の方針、任せてもらえる仕事などについて詳細に確認をしました。思っていた以上に将来のキャリアパスが明確に描ける環境であること、目標にできるエンジニアが多そうなことが分かり、『ここなら頑張れる』と確信した大友さんは、入社の決意を固めました。

給与アップ、でもスキルダウンした布施さんのケース  

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