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第4回 宮下剛輔――「自分を知ってもらう努力をしよう」

岑康貴
2008/7/1

エンジニアにとって仲間とはどういう存在なのだろうか。極端なことをいえば、自分1人で作業が完結できてしまうエンジニアにとって、仲間とのコミュニケーションにはどんな意味があるのか。エンジニア同士のネットワークを通じて、エンジニアにとっての仲間とは何かを探る。

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 サイボウズラボ 竹迫良範氏(コミュニティは「知り合い系」から「出会い系」へ変化する)、モバイルファクトリー 松野徳大氏(松野徳大――「だまってコードを書けよ」)、KLab 廣瀬正明氏(ひろせまさあき――勉強会は「取りあえず行っちゃえ」)とつながったエンジニアの輪も、今回で4人目。前回の廣瀬氏から紹介されたのは、paperboy&co. 事業戦略本部 宮下剛輔氏だ。「YAPC::Asia」をはじめ、多くのカンファレンスや勉強会でスピーカーを務める宮下氏に、こうした活動をするようになった経緯を聞いた。

シャイなプログラマ、mizzy

 
paperboy&co, 事業戦略本部
宮下剛輔氏
 

 ドクターペッパー好きのプログラマ「mizzy」として一部で有名な宮下氏。彼は、前回登場の廣瀬氏(ちなみに、こちらはカレー好きとして有名)が主催する「KLab勉強会」第4回で、システム管理フレームワーク「Func」について話している。それ以外にも、大規模なPerlカンファレンスとして有名なYAPC::Asiaなどさまざまな場所でスピーカーを務めており、その姿を見たことのある人は少なくないだろう。

 しかし、実はシャイなのだという。

 「ただの参加者として勉強会に行っていたころは、自分から知らない人に話し掛けるというのはしていなかったですね。懇親会にも出ないで帰っちゃう」

 以前はシステムインテグレータ(SIer)で、プリセールスエンジニアとして働いていたという宮下氏。コンピュータは好きだったが、プログラミングはあくまで「何かをするためのツール」でしかなかった。しかし、いつからかプログラミング自体の楽しさに目覚める。

 「プログラミングが楽しいと思い始めて、それからいろいろ情報を集めました。そうすると、自然とブログに行き着くんです。それじゃあ、自分でもブログを始めてみようと思いまして。既成のツールじゃあ面白くないので、最初は『blosxom』(ブロッサム:Perlによるブログ・ソフトウェア)をベースに自作プラグインなどでカスタマイズしたもので運営していました」

 やがて、ブログって楽しいな、と思うようになっていったという。初めて参加したイベントは、ブログ系のカンファレンスだった。

聞くだけのつもりが、いつの間にかスピーカーに

 それ以降、仕事とは別に、趣味のプログラミングの成果をブログで発信するという切り分けが行われていった。ブログを書くうえで、意識していたことがあるという。

 「すごいエンジニアに自分の存在を知ってもらおう、と考えていました。最初のころは、少しいやらしい話ですが、わざと関係のあることを書いて、リンクを張ったり、トラックバックを送ったり。そうやって、自分が見てるということを示して、見てもらうということを意識していました。自己ブランディングっていうんですかね。そこから、仕事にもつなげられるかなと思っていました」

 戦略的にブログを運営していたという宮下氏。その後、YAPC::Asia 2006の懇親会で多くのPerlエンジニアたちと出会う。「こんなブログを書いているんです」という言葉が、話のきっかけとして大いに役立ったという。

 それから約1カ月後のこと。当時、Plaggerのコミッターとしても活動していた宮下氏は、あるカンファレンスに“1人の参加者として”出席しようとした。2006年5月12日に行われた「Plagger Conference #1」である。ところが、主催者でPlagger開発者の宮川達彦氏の「コミッターはデフォルトでスピーカーです」という鶴の一声で、宮下氏も“スピーカーとして”参加することになってしまった。これが、宮下氏のスピーカー初体験になった。「宮川さんの陰謀で、承諾もなしにスピーカーにされてしまって」と苦笑い。

 「でも、いまではすごく感謝しています。それまでは、前でしゃべる人っていうのは、それこそ雲の上の人というイメージしかなかった。だから、なかなか自分からスピーカーになろうという気持ちにはなれなかったんです」

 しかし、実際にしゃべってみたら「すごく楽しかった」という。そして、楽しかっただけではなく、ある変化が起こったのだ。

 「そういうところで話すと、当然そこにいる人はみんな僕のことを知ってくれる。そうすると、その後の懇親会ですごく話しやすいんですよね。いままでは勉強会に行っても誰とも話さずに帰っていたのが、こちらを知っていて話を振ってくれるっていうふうに変わったんです。人のつながりをつくるうえで、スピーカーとして話すのは、すごくいいなって思いました」

1000ポイントをくれた人

 SIerで働きながら、Perlを中心としたコミュニティで活動し、ブログを書き続けていた宮下氏は、やがて「Webって面白い、Webに関する仕事をしたい」と思うようになっていったという。

 学生時代にも、Webが楽しいと思った時期があったという。NBAが好きで、試合や選手の情報がどんどん入ってくるWebに夢中になった。だが、仕事としてWebを選択することはなかった。

 「だから、Webが面白いと思ったのは2回目。今度は仕事にしようと思って、転職を考え始めたんです」

 転職先を決めたきっかけを聞くと、「それが面白いんですよ」と、にやりと笑う。

 「はてなブックマークに、はてなポイント(はてなのサービスで流通するポイント)を送る機能があるんですけど、相手がはてなのIDを持っていれば、はてなダイアリー以外にも送れるんですね。それである日、ブログをいつものように書いていたら、1000ポイントをくれた人がいたんです」

 はてなポイントは通常、多くても数十ポイントくらいのやりとりだ。「えっ」と思って見てみると、paperboy&co.代表取締役社長の家入一真氏のIDだったという。

 「いつも良い情報ありがとうございます、というコメントとともに1000ポイントが送られていて、面白いなと思いました。転職を考えていた時期で、家入さんのブログを見たら、ちょうど社員募集をしていて。これも何かの縁かなあと思って応募をしたんです。後で本人に聞いたら、『ポイントの相場がよく分からなかった』っていってましたよ」

 やりたい仕事も、コミュニティでの活動も、実際の転職活動までもがブログを中心にして展開した宮下氏。彼にとって、コミュニティとはどんな存在なのだろうか。

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