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コミュニティイベント潜入記

コミュニティは「人とのつながり」をつくり出す

岑康貴
2008/10/31

日本にはさまざまなエンジニア・コミュニティが存在する。どんなコミュニティが存在するのか。また、参加する人々はどんなことを考え、どんな活動を行っているのか。8つのコミュニティが一堂に会したイベントの模様を伝える。

 2008年8月26日、マイクロソフトが開催したテクニカルカンファレンス「Microsoft Tech・Ed 2008」。その中で、コミュニティに関するセッションが行われた。

 その名は「コミュニティ ライトニングトーク」。コミュニティに参加している8人のエンジニアが、技術ではなく「コミュニティ」というテーマについて、5分間のライトニングトークを行うというセッションだ。

 関東のみならず、日本中のコミュニティ参加者が集まったこのセッションの内容から、コミュニティの「面白さ」を探ってみよう。

 登壇コミュニティは下記のとおり(発表順/敬称略)。

コミュニティ 登壇者
Admintech.jp はなずきん
わんくま同盟 とっちゃん
NT-Committee2 小林裕子
極東IT Engineers 森博之
.NET 勉強会 / ヒーロー島 上本亮
Okayama IT Engineers Community(OITEC) うなまな
Visual Studio User Group(VSUG) 遥佐保
SQL Serverユーザーグループ(PASSJ) 石坂忠広

「勉強会に参加申し込みをする勇気」を持とう

 トップバッターは「Admintech.jp」。IT関連業務に従事する「ITプロフェッショナル」のためのコミュニティだ。登壇者は、「IT勉強会カレンダー」でおなじみとなった「はなずきん」さん。

 
 
Admintech.jpのはなずきんさんによる
「コミュニティ勉強会で必要なこと」

 はなずきんさんは、「コミュニティの勉強会とは、企業ではなくユーザーが中心となって行っている学習の場。座学よりディスカッションが主」と、コミュニティにおける勉強会を定義。あまたある勉強会から自分に合ったものを探すために、自らが運営するIT勉強会カレンダーを活用しよう、と呼び掛けた。

 また、勉強会で必要なのは「勉強会に参加申し込みをする勇気」「初めての相手でも話し掛ける勇気」「いろいろな人と意見交換をする努力」の3点だと説明。「同じ興味を持った人たちの集団なのだから、構える必要はない」と締めくくった。はなずきんさんは発表1人目というプレッシャーの中、発表を5分ぴったりで収め、後に控える7人を焦らせた。

 2番手は「わんくま同盟」。登壇した「とっちゃん」さんは、「わんくま同盟は縦ではなく横のつながりで成り立っているコミュニティ。東京と大阪でほぼ毎月、勉強会を開催している」と説明。名古屋や福岡など日本各地で勉強会を開催しており、「現地で手伝ってくれるスタッフがいれば、日本全国どこででも開催します」と話した。

 勉強会では、会場に来られない人のためにオープンチャットの画面を流しており、Web経由でも参加ができるという。勉強会の内容に決まったテーマはない。.NET Framework、Oracle、SQL-Server、C++、Java、WSH、PowerShellなど、さまざまなテーマを扱っている。

モチベーションの維持に、開発コミュニティは最適

 3番手は「NT-Committee2」。Windows NT関連の情報交換の場として1997年から活動を始めたコミュニティだ。コンピュータやネットワークにかかわる情報交換と発信を行っている。各地で勉強会も開催している。

 登壇した小林裕子さんは、「メンバーの高齢化問題が発生している。多様な業種・職種の人が集まっており、多くのコミュニティリーダーを輩出しているが、若い人が増えない」と現状を嘆く。若い人にもコミュニティに参加してほしいと投げ掛けた。

 
 
極東IT Engineersの森さんが提唱する
「イカすスパイラル」

 4番手は「極東IT Engineers」。登壇者の森博之さんは、「開発系のコミュニティが盛り上がっている。モチベーションの高いエンジニアが多く集まっており、エンジニアにとって非常に魅力的な場だ」と、現在のエンジニア・コミュニティについて説明。「モチベーションが高いと仕事がはかどる」「仕事がはかどると早く帰れる」「早く帰れると時間ができる」「時間ができると勉強する時間ができる」「勉強すると仕事がはかどる」というスパイラルを提唱し、モチベーションの維持のためにも、開発コミュニティへの参加が有効であると語った。

 森さんはエンジニアとしての成長のために、「思ったことは実践で示すべき」と提言。最初から成功をイメージせず、失敗を繰り返すことが重要だと話した。

地方におけるエンジニア・コミュニティ

 5番手は「.NET 勉強会 / ヒーロー島」。広島を中心に活動しているITエンジニアのコミュニティだ。マイクロソフト中国支店主催の「中国.NETパートナー会」という、パートナー企業向けのプログラムから派生してできた。

 登壇者の上本亮介さんは、広島で開催している勉強会について紹介。第6回からオープンな勉強会として展開し始めたという。

 
 
OITECのうなまなさんは
「セッション情報の共有」を行おうと提言

 6番手は「Okayama IT Engineers Community(OITEC)」。その名のとおり、岡山でIT関連の勉強会開催を促進するコミュニティだ。登壇者の「うなまな」さんは「地方には勉強会など、技術者同士の意見交換や交流の場が少ない」と語った。そうした問題を解決するため、岡山を中心とした地域で、「定期的に勉強会を開催できる仕組みづくり」や「気軽に参加・発表できるようなサポート」に尽力しているという。2008年7月にWebサイトを立ち上げたばかりだが、ヒーロー島とも連携し、地方でのコミュニティ活動を盛り上げようとしている。

 うまなまさんは、勉強会のセッション内容を共有する場をつくったらどうか、と提言。勉強会の主催者はセッション選定に時間がかかる。ほかのコミュニティや勉強会で行われたセッションが利用できれば、効率よくイベントを開催できる。また、(イベントの)参加者についても、聴講できるセッションのバリエーションが増えるというメリットがある。

「技術に公平なコミュニティという存在に感激」

 7番手は「Visual Studio User Group(VSUG)」。Visual Studioや.NET技術に関する情報交換を中心としたコミュニティで、会員は約7000人。登壇者の遥佐保さんは「VSUG初心者フォーラム」のリーダーであり、Silverlightに関するコミュニティ「Silverlight Square」の管理人でもある。

 
 
VSUGの遥さんは
「コミュニティで人とのつながりが増える」
と呼びかけた

 遥さんはコミュニティへの参加のきっかけについて講演。マイクロソフトのWebサイトでVSUGを知り、2008年1月に初めてイベントに参加。技術に公平なコミュニティという存在に感激し、そのまま懇親会にも参加した。それからブログの開設を勧められ、自分のメモ用として運用していた。Silverlightについてブログに書いたところ、VSUGのイベントで知り合った人が「詳しい人を知っているので、勉強会でもやりますか?」というコメントを書き込んでくれた。それがきっかけで、自らSilverlight Squareを運営するに至った。「コミュニティはとても自由な活動場所で、人とのつながりが増える。自分のスキルアップのモチベーションも高まります」と遥さんはコミュニティの良い点について話した。

 最後に登場したのは「SQL Serverユーザーグループ(PASSJ)」。SQL Serverにかかわるデータベース管理者・開発者を対象としたコミュニティだ。登壇者の石坂忠広さんは、巨大なフォントで「会員になってください」と書かれたスライドをスクリーンに映し出して、トークを開始した。「セミナー(アフタースクール)に参加できる」「PASSJ Conferenceに参加できる」「書籍の購入で割引を受けられる」「メーリングリストで情報交換できる」「掲示板で情報交換できる」というPASSJ会員の5つのメリットを説明した。

 現在、PASSJの会員数は2万人以上。アフタースクールではSQL Serverについてセミナーを行っており、マイクロソフトのSQL ServerエバンジェリストやITベンダの社員などが講師を務めるという。

人とのつながりが得られるコミュニティ活動

 
LT終了後のディスカッションの様子
 

 ライトニングトーク終了後、コミュニティ運営にまつわる「コストの問題」や「個人情報の取り扱い」「Webサイトの運営」などについて議論が行われた。また、ヒーロー島やOITECからは「地方で勉強会が少なくて困っている人たちに、どうやって情報を届けたらいいだろうか」という悩みが出された。地方におけるエンジニア・コミュニティの在り方に関しては、今後も議論が必要だろう。

 登壇者の共通点は、「コミュニティによってできた人とのつながり」を語っていたことだ。コミュニティに参加する動機は人それぞれだが、少なくとも「同じ技術者同士のつながり」が得られるという点では、コミュニティは共通の価値を持っているといえるだろう。


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