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組み込みエンジニアへの転身指南

第1回 新入社員、5年後の転職を狙う

香取裕子(パソナキャリア)
2007/5/21

したいことをするため、条件のいい仕事に就くためなど、さまざまな理由で人は転職する。組み込み業界とて例外ではない。組み込み業界の転職活動の喜怒哀楽を、キャリアコンサルタントがこっそり教えよう。
 

目指すはS社、新卒時から

 野口さん(仮名)は大学時代、メーカーを中心に就職活動を行いました。大学の研究室の推薦枠もあったのですが、入社後のしがらみのことを考えると何となく嫌で、自力で就職活動を行うことにしたのです。

 野口さんが就職活動を行った時期は、就職氷河期といわれた時代です。そもそも新卒を募集していなかったり、募集していても若干名の募集だったりと、就職活動は大変厳しいものでした。野口さんは当初有名な大手メーカーを中心に応募していましたが結果は振るわず、最終的に1社だけ内定をもらえたI社に入社を決めました。

 それなりにI社は気に入っていましたが、心の中ではこう決めていました。「この会社でスキルを身に付け、5年後にはS社に転職する」と。

S社を目指して技術の習得に励む日々

 入社後の配属についてもS社を意識して、携帯電話向けの組み込みソフトウェア開発を希望しました。そして、野口さんの希望どおり、携帯向け組み込み開発のプロジェクトの一員となったのです。

 S社の応募要件を確認し、できるだけその応募要件に当てはまるよう、S社で必要とされるOSや言語を意識して勉強するようにしました。業務時間外に、転職時のPRになるように資格取得のために勉強を行い、情報処理技術者試験の「テクニカルエンジニア:エンベデッドシステム」に合格することができました。

 このように、S社への転職という目標のため、着々とスキルを身に付けていましたが、日ごろの業務では、いわれたものを作るだけで面白くないと感じることがありました。そんなときには、技術力を身に付けてS社に転職することを考え、さまざまな工夫をするなどして業務をこなしました。

応募した結果は?

 I社に入社してから6年が経過。野口さんは、自分なりに技術力も付いたように思ったそうです。この6年でプロジェクトメンバーからサブリーダー、そしてプロジェクトリーダーとしてプロジェクトを管理するようになっていました。そして担当していたプロジェクトは、そろそろ終了しそうです。

 ちょうどそのころ、野口さんの知人が人材紹介会社経由で希望の会社に転職したと聞いたのです。そこであわてて人材紹介会社に登録し、転職の手続きを進めました。もちろん、狙うはS社です。S社に応募したところ書類選考は難なく通過し、面接となりました。

 そして本番、S社の面接です。野口さんは正直なところ、質問内容に対して何を答えたのかしっかりと覚えていません。想像以上に緊張していたようでした。面接の結果は、残念ながら不合格でした。

企業からの評価は?

 不合格の理由としては、緊張してしまってうまく技術力をPRできなかったから仕方がない、と思っていたところ、予想外のフィードバックをもらったのです。

 S社の評価は、技術力に関しては問題がなかったが、コミュニケーション能力の面で採用を見送ったとのことでした。当初、後輩の指導・プロジェクト管理経験については、技術力のおまけ程度に考えていた野口さん。S社では、こうした後進の指導やプロジェクト管理の経験を高く評価していたそうです。

 コミュニケーション能力について人材紹介会社経由でS社によく聞くと、主体性の欠如・提案力の不足ということが問題だったようです。面接の前に行った模擬面接の際にも、顧客に行った提案などがあれば、もっとPRした方が良いとアドバイスされたことを思い出しました。

 それまではキャリアアップといえば、野口さんは技術力を中心に考えていました。が、実務経験が想像以上に重視されることが分かり、その後プロジェクトの中などで提案を積極的に行うようにしました。1年たてばリベンジ(再応募)ができるそうなので、数年内には再度S社に挑戦する予定です。

技術ばかりではなく、人間力を磨くことも重要

 若手のITエンジニアの中には、先端技術に触れることができる大手のメーカーに転職したい、と考える方は少なくないようです。先端技術にかかわるために、技術力の有無が最も重要だと思う方もいらっしゃるようですが、企業の評価ポイントは少し異なります。

 企業の評価するポイントは、組み込み技術はもちろん重要ですが、提案力やリーダー経験がより重要となってきます。組み込みエンジニアの場合は、すぐに即戦力として働ける方を求めています。

 その場合の即戦力になるか否かで重要なのは、コミュニケーションを周囲と取りながら、主体的に動けるかどうかです。

 技術力の高いメーカーで働きたいと考える方こそ、より人間力が重要なのかもしれません。


筆者プロフィール
香取裕子(パソナキャリア)●大学・大学院で日本語教育を選考する傍ら、学生やビジネスパーソンに進路指導カウンセリングなどを行う。大学院卒業後、原子力関係の研究所に勤務し、研究者や技術者のサポートに携わる。その後、パソナキャレント(現:パソナキャリア)に転職。



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