第3回 売り手市場でも結果に明暗あり
大石直也(パソナキャリア)
2007/7/12
したいことをするため、条件のいい仕事に就くためなど、さまざまな理由で人は転職する。組み込み業界とて例外ではない。組み込み業界の転職活動の喜怒哀楽を、キャリアコンサルタントがこっそり教えよう。 |
売り手市場といわれる組み込みエンジニアの転職。だが売り手市場だからといって、すべての人が待遇アップの転職を果たしているわけではありません。とはいえ、前年収に比べて、「100万円以上の年収アップ」や「約1.5倍の年収アップ」を果たしたエンジニアも存在するのは事実です。
もちろん、転職では年収がすべてではありません。とはいえ、大きな要素であるのは間違いありません。2007年5月に@IT自分戦略研究所とJOB@ITが共同で行った読者調査では、転職する理由として58.1%の人が「収入を上げたい、収入の上がる可能性を高めたい」を挙げています。
では、転職で年収アップを実現できるエンジニアは、そうでない転職者と何が違うのでしょうか。キャリアアップに興味があるエンジニアの場合、評価される「技術」や「経験」が気になる方も多いでしょう。もちろん、転職において評価される経験や技術はあります。しかし、キャリアアップ・年収アップをするエンジニアの共通点は、そうした技術や経験ではなく、別のところにあるのです。
■年収アップできるのは「リーダー資質がある」人材
年収アップできるエンジニアとして必要なものは、「リーダーとしての資質」です。
リーダー経験があれば当然評価されます。しかし、経験がある人だけではなく、「リーダーとしてのポテンシャル」があれば評価されるケースも多くあります。そのため、いまは入社した企業、配属されたプロジェクトの関係で、残念ながらリーダー経験を積めなかった、という方でも転職できる十分なチャンスがあるのです。
それでは、求められるリーダーとしての資質とはどのようなものでしょうか。
- 主体性を持って仕事を進めているか
- 全工程を意識して作業を進めているか(進められそうか)
- 日々勉強をしているか
それでは、それぞれについて求められる背景などを中心に説明します。
●主体性を持って仕事を進めているか
大幅な年収アップ転職が可能なのは、ソフトハウスからメーカーに転職したり、元請け案件の多い企業に転職したりするケースです。こうした転職では、仕様書どおりにコーディングできればよい、そんな考えでは年収アップなどは夢のまた夢です。さらに、メーカーで勤務するに当たっては、ハードウェアを開発する部門をはじめ、さまざまな部門や外部の関係者との交渉も必要となることが多いのです。
そのため、周囲に働き掛け、主体的に仕事を進めることのできる人材が求められるのです。
●全工程を意識して作業を進めているか(進められそうか)
年収アップ転職が可能なポジションにおいては、プロジェクトの管理に関する業務を担当するケースも多いでしょう。プロジェクトをスムーズに進めるに当たっては、ハードウェアとソフトウェアの間での調整が非常に重要です。そのため、ハードウェアを含めた開発の全工程を考慮に入れ、必要に応じて調整を行ってプロジェクトを進められる能力が求められます。
●日々勉強をしているか
技術が日進月歩で進む業界なので、提案力・技術力を保つためには日々の勉強が欠かせません。さらに、後進の教育なども求められるポジションであるため、その面の勉強も欠かせません。
転職マーケットにおいて、比較的ニーズの高い技術もありますが、一概に「○○を勉強すべき」というものはありません。自らが開発する製品に関連する知識を、幅広く身に付けていくことが求められます。
例えばアルゴリズムに関する知識は、どの分野でも必要ですが、通信機器に関するエンジニアであればネットワークや規格に関する知識、量産製品の設計にかかわるのであればプラットフォームに関する知識など、開発に役立つ知識は何か、ということを自ら考え、学ぶことが重要です。
■リーダーシップの取り方は企業次第
あとは、「メンタル面でのサポートなど、部下に頑張らせることのできる力」「顧客に対してうまく交渉を行うことでスムーズにプロジェクト進める力」など、社内のリーダーシップについては、企業などによって求めるスタイルが多少違うようです。
主体性・調整能力などは、どの企業でも求められる資質ですので、日々の業務の進め方から見直してみてはいかがでしょうか。そうすれば、転職で大幅な年収アップも可能かもしれません。
筆者プロフィール |
大石直也(パソナキャリア)●大学で材料工学を専攻。卒業後、工業用計測器業界および自動車部品業界にてエンジニアとして経験を積む。その後、パソナキャレント(現:パソナキャリア)に入社。電気・電子・機械などのメーカー系人材の転職のサポートを行っている。 |
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