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組み込みエンジニアへの転身指南

第5回 退職理由と転職理由に矛盾はありませんか

池井戸こずえ(パソナキャリア)
2007/10/15

したいことをするため、条件のいい仕事に就くためなど、さまざまな理由で人は転職する。組み込み業界とて例外ではない。組み込み業界の転職活動の喜怒哀楽を、キャリアコンサルタントがこっそり教えよう。

退職を考えたきっかけは……

 組み込みエンジニアに限りませんが、エンジニアを取り囲む環境は、楽観できるものではありません。開発にずっと携わりたいのにプロジェクト管理がメインの業務になったり、上流工程の仕事に携わりたいのに状況的に難しかったりするようです。また、最近転職をサポートした方々の中のご相談の中には、残業時間を含めた労働環境が厳しいという声も意外と多く、そのため、スキルアップを図る勉強時間がないと訴える方も多いのです。

 そのため、ふと転職をお考えになり、ご相談をいただくケースが結構多いのです。

 それはそれでいいのですが、気になるのは現在の職場(もしくは、前職)と決別し、新たな職場を探そうとするきっかけとなった「退職理由」と、これからの自己実現に向けて望まれる「転職・志望理由」とが、大きく乖離(かいり)しておられる求職者の方が意外と多くいらっしゃることです。今回は、少し組み込みエンジニアだけではなく、エンジニア全体でもいえるこの問題を、取り上げたいと思います。

新しい職場への期待!

 日々、多くの方とお会いして、転職のサポートをさせていただいておりますが、転職活動のご相談をいただく際には、まずは現在の希望をお伺いするように心掛けています。

  • 「どんな会社で働きたいのか?」
  • 「どんな仕事を望んでいるのか?」
  • 「どんなものの開発に携わりたいのか?」

などなど。

 転職をお考えになっている求職者の皆さんは希望に満ちあふれていますので、たくさんのリクエストをいただくことが多いです。

  • 「消費者に近いデジタル家電に携わりたい!」
  • 「メーカーに行きたい!」
  • 「ソフトウェアとハードウェアの両方をマネジメントしたい」
  • 「製造プロセスの変革に携わりたい」

 希望はそれこそたくさん出てきます。

 これからの転職のお手伝いをするに当たり、私もとてもワクワクする瞬間です。

現実を振り返る

 一方で、この転職をお考えになるきっかけとなった「退職理由」もお聞きしなければなりません。より良いアドバイスをさせていただくため、いろいろとお悩みになった経緯なども伺っています。

  • 「残業が多い」
  • 「友人に比べて給料が安く思えた。もう少し年収を上げたい」
  • 「望まない部署に異動になった」

などなど。

 正直、ネガティブな思いをたくさん抱いてご相談に来られる方が多いと、ひしひしと実感します。

 ただし、これらのネガティブなことを転職理由としてはいけないと思っておられる方が多く、本音を隠して転職理由を作ろうとされる方もいるようです。しかし、そんなところから、意外な落とし穴にはまることが多いのです。本音を隠し、いかにも、という作りものの退職理由にこそ、脆弱性(ちょっと変な例えですが)が生まれやすいのです。

退職理由と転職理由

 そうしたことを踏まえたうえで、再確認してみましょう。

 「いまの仕事・職場環境を変えたい理由と、これから望む仕事には、きちんと筋が通っていますか?」

 ご自身が将来的に望んでいるキャリアプランに向けて、現在何かしら不足を感じているからこそ、転職理由は成立するものです。つまり転職理由と退職理由とは、表と裏の関係にあることが多いのです。

 例えば、「この会社ではXXができない」から、「XXができるような会社に転職したい」と考える場合、当然前半が退職理由ですし、後半が転職理由となります。

意外なNG理由

 キャリア採用(中途採用)を行っている会社は、基本的にはいま空いている求人ポジションにふさわしいスキルのある方を求めているのは間違いないのですが、同時に、会社は採用された方に今後目指していただきたい(任せていきたい仕事やポジションなど)イメージも持っているものです。

 そのイメージに、求職者が望むキャリアプランが重ならなければ、会社は活躍していただけるイメージが合わないという理由で、不採用(NG)とする場合もあるのです。

 また、何より転職・志望理由と、退職理由が乖離しているからこそ感じてしまう違和感から、NGになるケースも多いのです。

 応募要件は満たしているのに、どうしてNGだったのだろうと思うことが、これまでにありませんでしたか。もしかすると、このあたりに理由があるかもしれません。

 単にスキル面がマッチするからといって、内定には至らないケースが多い現実をご存じですか?

あえて提言したいこと

 もちろん、退職理由と転職・志望理由は、客観的にアドバイスしながら整理することで、筋道立てて話ができるようになる方もたくさんいらっしゃいます。

 ただ、あえて申し上げたいのは、現状の仕事や環境の不満だけで転職をお考えになるのは、慎重にした方がよいということです。

  • いまの不満、ほかの会社で働けば解消されるものでしょうか。
  • その不満を解消するために、どのような努力をされたでしょうか。
  • そして、将来の自身のキャリアプランを考えるうえで、いまの会社での経験は本当に無駄で役に立たないものでしょうか。

 キャリア採用が新卒採用と異なるポイントは、ご存じのとおり「即戦力」であることです。「即戦力」であることの条件として、自身に与えられたミッションはもちろんのこと、自身でキャリアプランを立ててその目標に向けて実行していけるかどうかも、大きな条件なのです。


筆者プロフィール
池井戸こずえ(パソナキャリア)●住宅メーカー・住宅設備機器メーカーを経て、現職。メーカーが特に活況の東海地方で転職サポートを2年行い、その経験を持って現在は機械・電気・化学に特化したグループを担当。また、IT、メディカル、金融といったマーケットを担当した経験より、異業界からの転職相談などのアドバイスも行っている。



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