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組み込みエンジニアへの転身指南

第10回 こだわり転職の実現に必要なこと

大石直也(パソナキャリア)
2008/3/18

したいことをするため、条件のいい仕事に就くためなど、さまざまな理由で人は転職する。組み込み業界とて例外ではない。組み込み業界の転職活動の喜怒哀楽を、キャリアコンサルタントがこっそり教えよう。

あなたはこだわり派?

 多くの組み込みエンジニアの方々と話をしていて、システムエンジニア(SE)と違いを感じる点は、「お願いします。大きな仕事探してください」でも触れたように、仕事についてのこだわりが非常に強いという点です。年収や勤務時間などの待遇面よりも「担当製品」「担当フェイズ」「利用技術」などを重視している方が、SE以上に多いと感じています。

 ただし、一言で組み込みエンジニアという仕事にやりがいを持っている方が多いといっても、その理由は「コーディングが好きだから」「最新のデジタル機器開発に携われるから」「最先端の技術が使えるから」などさまざまです。

 今回はこだわり派の組み込みエンジニアだからこその転職について、紹介したいと思います。

組み込み用OSベンダの製品開発エンジニアへ

 昔から電子工作などが大好きだった高梨さん(仮名、28歳)は、高等専門学校の卒業後、組み込み専門のソフトハウスに入社し、主に携帯電話やDAP(デジタルオーディオプレーヤー)などのデジタル機器の組み込みプロジェクトに携わり、開発に従事してきました。

 そんな環境にいた高梨さんが転職を考えるようになったのは、「組み込みの仕事は非常に楽しいが、1つのことに長く携われない」という不満からでした。

 組み込み関連のプロジェクトも、開発期間がどんどん短くなっており、3カ月程度のプロジェクトも多くなってきました。そこが、高梨さんにとっては不満だったのです。

 そこで、高梨さんは当社に相談にいらっしゃったのです。高梨さんが最終的に選んだ転職先は、組み込み用OSベンダの製品開発エンジニアでした。その選択の理由は、自社製品の開発のため1つのことに長く携わることができること、これまでと同じ組み込みの分野であるので、仕事のスタイルもそのまま維持できそうだ、というものでした。

開発ツールベンダのプロダクトコンサルタントへ

 中嶋さん(仮名、34歳)は大学で電子工学を専攻し、卒業後、メーカーの系列会社で組み込みエンジニアとして働いてきました。メーカー系列ということもあり、プロジェクトでは組み込みソフトウェアの開発方法の検討フェイズから参画することができ、中嶋さんはこの業務にやりがいを感じていました。

 とはいえ、中嶋さんにも不満はありました。開発方法の検討はプロジェクトの初期段階だけのものであり、実際の業務に占める割合が非常に少ないことでした。そこで中嶋さんは開発方法の検討を中心に携われる仕事を探すため、弊社にお越しになったのです。

 いろいろと悩んだ末、中嶋さんは組み込み用の開発ツールベンダのプロダクトコンサルタントに転身しました。その会社を選んだ理由を中嶋さんは、「クライアントや製品ごとに開発ツールを取り扱うことで、さまざまなプロジェクトに対して開発方法の検討フェイズに携われる」ためだとおっしゃっていました。

システムインテグレータのPLMコンサルタントへ

 渋谷さん(仮名、29歳)は大学の文系学部を卒業後、独立系のシステムインテグレータ(SIer)で組み込みエンジニアとしてプロジェクトをこなしてきました。

 組み込みエンジニアとしての仕事は面白く、やりがいも感じるものの、担当するフェイズが組み込みソフトウェアの部分のみであり、製品の企画から生産までを見渡せるような業務ができないことに不満を感じていました。そこで、その不満を解消できる職場はないかということで、渋谷さんは当社に相談に来られたのです。

 一般に製品開発全体に携わるには、メーカーが最適と思われていますが、必ずしもそうでないことは、前回の「全体にかかわれるのはメーカーだけ?」で紹介したとおりです。

 そこで私は、現在普及しつつあるPLM(Product Lifecycle Management)領域のコンサルタントについて説明しました。PLMのコンサルタントは直接ものを作ることはありませんが、製品開発にかかるすべての部分に携われる可能性があります。

 話を聞き、渋谷さんもPLMの仕事に興味を持たれました。最終的には同業他社のSIerに転職されたのですが、その転職決断の最大の決め手は、その会社がPLMのコンサルティング事業を強化していて、そのコンサルタントとして内定を得られたからです。また、その会社には組み込みエンジニア出身の方が何人かコンサルタントとして活躍されていて、その転職理由が渋谷さんと同じだったことも決め手の1つとなりました。

こだわりの実現の仕方にはいろいろあり

 今回紹介した3人は、それぞれの方法でこだわりを満たすような転職を果たすことができました。

 では、こだわりを満たす転職を果たすには、どうすればいいのでしょうか。ちょっと抽象的な提案ですが、こだわり以外のものを一度、取り外して視野を広く持ってみることです。そのとき、さまざまな仕事に目を向けてみましょう。すると、いままでなら関係ないと見もしなかったところに、今後やりたいことのヒントが転がっていることがあるのです。だまされたと思って、一度試してください。

筆者プロフィール
大石直也(パソナキャリア)●大学で材料工学を専攻。卒業後、工業用計測器業界および自動車部品業界にてエンジニアとして経験を積む。その後、パソナキャレント(現:パソナキャリア)に入社。電気・電子・機械などのメーカー系人材の転職のサポートを行っている。


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