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コラム:自分戦略を考えるヒント(33)
ITエンジニアは楽しい仕事?

堀内浩二
2006/9/21

 こんにちは、堀内です。今月末に「@IT自分戦略研究所 MIX」というイベントが開催されるのですが、わたしはパネルディスカッション「エンジニアを楽しむための3つの提案」でモデレータを務めることになりました。そこで今回は、イベントにかこつけて「ITエンジニアを楽しむ」という観点から書いてみたいと思います。

なぜ「楽しむ」なのか

 なぜ、ITエンジニアを「楽しむ」なのか。イベントのコンセプト作りに参加させていただきましたので、企画会議の実況中継から始めたいと思います。ベースとなった情報は、2006年春に@IT自分戦略研究所とJOB@ITが共同で行った読者調査です。その読者調査を基にした記事が、「エンジニアの危機感は自分のスキルに」です。

 2002年の夏に行った調査(@IT自分戦略研究所の前身である@ITの1フォーラムのEngineer Lifeフォーラムが行った調査)と比較して、下記のような傾向が明らかになっていました。

  • 雇用や業界の先行きに対する不安は減少した
  • スキルアップの必要性を強く感じている
  • キャリアプランが描けないなど長期的な方向性についての不安は高まった
  • 潜在的な希望(いい話があれば考えたい)を含め、転職に前向きな人はやや増加

 そしてわれわれは、次のようなことを話したのです。

「取りあえず会社の景気が良くなったので不安ではなくなったという人もあれば、(不安に思っていても世の中の流れは変わらないので)覚悟を決めたという人もあるだろう。どちらにせよ、雇用や業界の先行きに対して不安を感じる人が減少したのは、喜ばしい」
「スキルアップの必要性を感じたり、自分のキャリアの長期的な方向性に不安を感じたりする人が増えたこと自体は、『健全』なこと」
「業界の先行きに対する不安が減少したということは、読者の皆さんが、この業界が変化し成長を続けるという見込みを持ったということでは」
「業界というと、なんだかそういう世界がどこかにあるようだが、業界を構成しているのは個人。個人が変化し、成長しなければ、業界としての変化も成長もない」
「ただし、その不安が度を過ぎて、圧迫感を感じたり、憂鬱(ゆううつ)になるということであれば、『健全』とはいえない」

 そんなディスカッションの中から、「楽しむ」という言葉が浮かび上がってきたのです。この言葉が魅力的だったのは、IT業界は、「楽しくない業界」という評判があるからです。実際、長時間労働やサービス残業を強いられるケースがあり、新卒の学生がIT業界への就職を希望する率も下がってきたといいます。

 現在われわれは、グローバル化・自動化といった大きな環境変化の過程にあります(参照記事:「Steve Jobsのスピーチから読み取る自分戦略」)。これはIT業界に限った話ではありません。ただグローバル化・自動化しやすいIT業界の仕事が、影響を受けやすいのは確かで、その変化を利用する人もあれば、変化に飲み込まれてしまう人もいるでしょう。

ITエンジニアの楽しさとは

 パネルディスカッションでは、パネリストの皆さんと上記のような背景を共有したうえで、ITエンジニアという職業の楽しみ方について語ってみたいと思います。「こう楽しむべきだ」という正解を定義することはできませんが、各パネリストの言葉はきっと自分の職業観を養ううえで参考になるはずです。わたしは当日モデレータで、喋る時間がありませんので、このコラムを借りて自分なりの「ITエンジニアの楽しみ」を書いてみたいと思います。

エンジニアリングとは、科学・技術を活用した実践的問題解決

 わたしがエンジニアリングすなわち工学的なアプローチでの問題解決に魅力を感じたのは、研究室で化学を学んでいた大学生時代です。当時の理解(いまも変わっていませんが)では、工学的アプローチには2つの特徴がありました。1つ目は科学・技術の力を使いこなすこと。2つ目は、現実志向ということ。

 特に2つ目が気に入りました。学問的なアプローチでは、原理原則を解き明かすことを重視します。それはそれで重要なのですが、とにかく結果(例えば、できるだけ性能の高い素材)を出さなければならないケースもあります。そんなときは、原理原則が分からなくても、仮説を立て、実験で検証し、実際に最も性能を出す組み合わせを見つけていきます。

 先に妥当解を出し、後から原理原則を抽出する。工学の面白さは、そのような実践的な考え方にあると思っていました。

ITエンジニアとは、「テクノロジを活用して『何とかする』人」

 化学自体よりも問題解決のプロセスに興味を持ったことが、コンサルティング会社を志望した動機の1つとなりました。当時は景気も良かったので運良く潜り込め、最初の配属は会計システムの開発プロジェクトに。

 プログラミング、設計、チームを率いる、などの機会を通じ、工学的な問題解決のアプローチは「使える」と信じるようになりました。問題解決というと聞こえがいいですが、要するにテクノロジを武器として「何とかする」ことが仕事の中心であり、大変でしたが「エンジニアマインド」は満たされた期間でした。

ITエンジニアとして学んだものの大きさ

 かなりテクノロジ至上主義だったのですが、責任が大きくなるにつれ、テクノロジでは解決できない問題も出てきます。その際にはテクノロジにこだわらない発想で、「手段を問わず『何とかする』」ことも求められます。

 ここに至って、「マネジメント」に興味がわいてきました。英語で“manage”するといえば、まさに「何とかやり繰りする」という意味です。大学で培った工学的アプローチ(「何とかする」方法論)がシステム開発に生かせたのですから、マネジメントというものに対しても、生かせるものがあるのではないか。そう考えていました。

 ここでちょっとできすぎた偶然。当時届いた大学の同窓誌に、経営コンサルタントの大前研一氏の寄稿(インタビューだったかもしれません)が載っていたのです。氏は博士号まで取ったエンジニアですが、学士時代は自分と同じ学科にいらしたことをそこで初めて知りました。その記事で氏は、自分の思考法の基礎はエンジニアリングにあり、その源は大学時代にあると書かれていました。

 そんな偶然にも後押しされて、システム構築の道からは外れてしまいました。ITエンジニアだったといえる期間も短いのですが、自分なりに問題解決のアプローチを試せた貴重な経験であり、学生時代の経験と併せて「エンジニアマインド」を大事にしたいと思っています。

ITエンジニアを楽しむには?

 当日のパネルディスカッションのお題目は「エンジニアを楽しむための3つの提案」。詳細は現在詰めている最中なのですが、ちょっと先走って3つのキーワードを皆さんにご紹介したいと思います。

 1つ目のキーワードは「目標」。先に取り上げた@IT自分戦略研究所とJOB@ITの読者調査によると、30%近くの読者が「今後のキャリアプランが描けない」ことに危機感を持っています。では現在各方面の第一線で活躍しているパネリスト(実は全員、元ITエンジニア)は、若いころ「目標」を持っていたのでしょうか。

 2つ目は「変化」。「技術サイクル短期化/所有スキル陳腐化」に対する危機感を持つITエンジニアは4割を超えています。では、先輩たちは技術の進歩やスキルの陳腐化にどう向き合ってきたのでしょうか。

 最後は「心得」。いい仕事をしている人は、いい心得を持っています。「わが信条」であれ、ちょっとしたLifehackであれ、パネリストの皆さんから「仕事の心得」を聞き出したいと考えています。

筆者紹介
堀内浩ニ●アーキット代表取締役。早稲田大学大学院理工学研究科(高分子化学専攻)修了。アクセンチュア(当時アンダーセンコンサルティング)にて、多様な業界の基幹業務改革プロジェクトに参画。1998年より米国カリフォルニア州パロアルトにてITベンチャーの技術評価プロジェクトに携わった後、グローバル企業のサプライチェーン改革プロジェクトにEビジネス担当アーキテクトとして参画。2000年に帰国、ソフトバンクと米国VerticalNet社との合弁事業において技術および事業開発を担当。


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