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パソコン創世記


機械語に正面から取り組む

富田倫生
2009/10/23

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本連載を初めて読む人へ:先行き不透明な時代をITエンジニアとして生き抜くためには、何が必要なのでしょうか。それを学ぶ1つの手段として、わたしたちはIT業界で活躍してきた人々の偉業を知ることが有効だと考えます。本連載では、日本のパソコン業界黎明期に活躍したさまざまなヒーローを取り上げています。普段は触れる機会の少ない日本のIT業界の歴史を知り、より誇りを持って仕事に取り組む一助としていただければ幸いです。(編集部)

本連載は『パソコン創世記』の著者である富田倫生氏の許可を得て公開しています。「青空文庫」版のテキストファイル(2003年1月16日最終更新)が底本です。「青空文庫収録ファイルの取り扱い規準」に則り、表記の一部を@ITの校正ルールに沿って直しています。例)全角英数字⇒半角英数字、コンピューター⇒コンピュータ など

 タケシは『マイコン基礎講座』をノートを取り、書き込みを加えながら読み進んでいった。

 タケシにとって幸福だったことは、この本が『マイコン基礎講座』とは題しながら、かなりハードウェアに関して突っ込んだ内容だったことだろう。著者の小黒正樹はあとがきで「いままでマイコン入門用と銘打った本は数多く出ているのですが、たいていが広く浅くマイコンを紹介しているだけで、本当にマイコンを理解できるというものは少ないと思います」と語り、この本をまとめるにあたっては、「とかく嫌われがちな機械語に正面から取り組むことに留意した」と書いている。

 もしもタケシに、理科的な素養がなければ、おそらくはこうした歯ごたえのある本は、途中で投げ出していたのかもしれない。だが逆にそこまで突っ込んであることで、タケシは興味を引きつけられた。

 高校の自主講座でフォートランを習ったときは、何やら語学の勉強をしているような気分になった。こうした言葉で文法に従ってプログラムを書けば、コンピュータが働いてくれるという。しかし高級言語の使い方を身につけたところで、コンピュータそれ自体は相変わらずのブラックボックスである。

 ところがハードウェアにも大胆に切り込み、ハードと密接に関係した機械語を学ぶことで、タケシの中でコンピュータはしだいにブラックボックスではなくなっていった。ハードウェアとソフトウェアの境目、どこまでの機能がハードによって実現されており、どこからがソフトによっているかが見えてきた。「なるほど、これなら動くだろう」と実感できた。

 もちろん、エレクトロニクスにもコンピュータにも素人同然のタケシがどうにかこうにか『マイコン基礎講座』を読み進むことができたのは、著者の能力と細かな心配り、そして何よりもTK-80がコンピュータとして見れば超貧弱なマシンであったことにつきよう。

 この本を読み終えたとき、タケシはごくちっぽけなものながら頭の中にコンピュータの地図を描き終えていた。この地図をたよりに、遠くまで行きたくなった。

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