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パソコン創世記
第2部 第5章 人ひとりのコンピュータは大型の亜流にあらず
1980 もう1人の電子少年の復活

ボブ・アルブレヒトとベーシック

富田倫生
2010/5/25

前回「マイクロコンピュータから延びる道筋」へ

本連載を初めて読む人へ:先行き不透明な時代をITエンジニアとして生き抜くためには、何が必要なのでしょうか。それを学ぶ1つの手段として、わたしたちはIT業界で活躍してきた人々の偉業を知ることが有効だと考えます。本連載では、日本のパソコン業界黎明期に活躍したさまざまなヒーローを取り上げています。普段は触れる機会の少ない日本のIT業界の歴史を知り、より誇りを持って仕事に取り組む一助としていただければ幸いです。(編集部)

本連載は『パソコン創世記』の著者である富田倫生氏の許可を得て公開しています。「青空文庫」版のテキストファイル(2003年1月16日最終更新)が底本です。「青空文庫収録ファイルの取り扱い規準」に則り、表記の一部を@ITの校正ルールに沿って直しています。例)全角英数字⇒半角英数字、コンピューター⇒コンピュータ など

『ドクター・ドブズ・ジャーナル』
ベーシックの手作りを呼びかける

 1962年春、コントロールデータ社に籍を置いてソフトウェアに携わっていたボブ・アルブレヒトに、一風変わった依頼が舞い込んできた。

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 コロラド州デンバーのジョージ・ワシントン・ハイスクールで、数学クラブの生徒を対象にコンピュータに関する講演をしてほしいという。

 生徒たちを前に講演を終えたあと、「実際にプログラミングを学んでみたいか」とたずねると、32人の聴衆の全員が手を挙げた。生徒たちの瞳の熱に力づけられたアルブレヒトは会社に話をつけて、学生たちのために、夜、コンピュータ教室を催すことにした。乾いた砂地に水を注いだように彼らはプログラミング言語を身につけた。コントロールデータの160Aを使いこなしていく生徒たちの生き生きとした様子に、アルブレヒトは強く励まされた。

 ギリシャの酒とダンスと音楽とを愛し、人の根にある物の善と可能性を信頼し、官僚主義と形式主義を嫌悪するアルブレヒトは、コンピュータが人をより生き生きと振る舞わせる酵素の役割を演じることを確信しはじめた。

 若者たちにコンピュータとの出会いの場を提供することに可能性を見いだしたアルブレヒトは、ハイスクールを訪ねる巡回科学教室を企画した。この催しは彼のコンピュータ教室に、より多くの生徒たちを引き付けた。全米コンピュータ会議(NCC)で巡回教室の公開実演を行って注目を浴びたアルブレヒトは、会社を説得して全米各地で教室を開こうと考えた。この提案を認められ、コントロールデータの本社のあるミネソタに移って布教活動に本腰を入れることになったアルブレヒトは、異動した先の本社で新しく開発されたばかりの言語に出合った。

 1963年から64年にかけて、ダートマス大学で開発されたベーシックは、タイムシェアリングによってユーザー1人ひとりがコンピュータと向かい合い、マシンと対話しながらプログラムを組むことを狙っていた。

 コンピュータの布教を本格的に展開しようとしていたアルブレヒトは、この言語が技術の大衆化にとって強力な武器となるだろうと考えた。

 その後離婚と退職をきっかけにサンフランシスコに移り住んだアルブレヒトは、大気中にカウンターカルチャーのにおいの充満したカリフォルニアで、コンピュータの布教活動を続けたいと考えた。自主講座運動に加わり、のちに『ホール・アース・カタログ』を刊行するポートラ協会のコンピュータ教育部門の発足にかかわる中から、アルブレヒトはマシンのパワーを人々に解放しようとする仲間たちと出会っていった。

 コンピュータ関係の書籍を発行するダイマックス社という出版社を起こした彼は、ベーシックの教則本を作り、マシンに関する本を刊行するという条件でDECからPDP-8と端末を借り入れた。このマシンを車に積み込んで、アルブレヒトは西海岸で巡回科学教室を再開した。ダイマックスは、ハッカーたちのたまり場として機能しはじめた。コンピュータを核にしてさまざまな人が出会い、マシンを支配の道具とする者の手から解放して1人ひとりの人間の可能性を伸ばす知の翼とするためのアイディアが、るつぼと化したダイマックスからつぎつぎと生まれていった。

前回「マイクロコンピュータから延びる道筋」へ

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