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パソコン創世記
第2部 第6章 魂の兄弟、日電版アルト開発計画に集う
1983 PC-100の早すぎた誕生と死

マック、リサ、日本電気版アルトの開発競争

富田倫生
2010/7/16

前回「PC-9801が投げかけた疑問符と衝撃」へ

本連載を初めて読む人へ:先行き不透明な時代をITエンジニアとして生き抜くためには、何が必要なのでしょうか。それを学ぶ1つの手段として、わたしたちはIT業界で活躍してきた人々の偉業を知ることが有効だと考えます。本連載では、日本のパソコン業界黎明期に活躍したさまざまなヒーローを取り上げています。普段は触れる機会の少ない日本のIT業界の歴史を知り、より誇りを持って仕事に取り組む一助としていただければ幸いです。(編集部)

本連載は『パソコン創世記』の著者である富田倫生氏の許可を得て公開しています。「青空文庫」版のテキストファイル(2003年1月16日最終更新)が底本です。「青空文庫収録ファイルの取り扱い規準」に則り、表記の一部を@ITの校正ルールに沿って直しています。例)全角英数字⇒半角英数字、コンピューター⇒コンピュータ など

 これまでの作業でASIC化することを決めたLSIの設計には、11月に入ってからマイクロハードの4人が総掛かりとなって突貫工事で取り組んだ。遅くとも1月までに設計を完了し、すぐに製造にかかるという予定を組んでいたが、このスケジュールではまとまって作業を引き受けてくれる半導体メーカーが見つからなかった。日本電気の半導体事業グループのC-MOS部門とバイポーラ部門に加え、富士通にも製造を依頼。さらにもっとも規模が大きくなるCRTコントローラの開発には、本格的なCAD(コンピュータを使った設計支援システム)がないと難しいことから、これだけはアメリカのLSIロジック社に製造を委託した。アムダール社製のIBM互換のメインフレームを使った、日本とは桁外れのCADシステムを利用して現地で作業を進めた松本は、11月いっぱいでゲート★数2000規模のCRTコントローラの設計を仕上げてしまった。

 ★集積回路に盛り込む回路の基本単位。集積回路ではトランジスター、ダイオード、コンデンサー、抵抗などの機能が作り込まれて回路が実現されているが、ゲートはこれらの〈部品〉がつごう何個分集められているかを示す。

 当初予定していたマスターのLSIでゲート数は足りていたものの、いざ設計にもとづいて配線を行う段になって、LSIロジックから「配線しきれないからマスターを変更してほしい」との注文がついた。だが、やり直しとなった設計作業にも、1983(昭和58)年が明けて間もなくけりが付いた。

 予定どおり3月にはASICがすべて完成するめどが立ち、ハードウェアの開発が胸突き八丁を越えた1月、アップルは2頭立てで開発を進めていたアルトの子供のうち、まずリサの発表を行った。

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 プロトタイプを見て、西が鮮烈な印象を受けたマッキントッシュ同様、リサはウィンドウやマウスを備えたまぎれもないアルトの子供だった。だが、ワードプロセッサや表計算、グラフ、データベース、お絵かき、プロジェクト管理の6つのアプリケーションを標準で持っているとはいえ、本体価格だけで9995ドル、日本での販売価格282万円のリサはあまりに高価だった。さらにリサの出荷は、悪戦苦闘していた自社開発の5インチのフロッピーディスクドライブをアルプス電気に作りなおしてもらう都合上、5月以降にずれ込む予定となっていた。

 アップル製のドライブが使いものにならなかったことのつけは、マッキントッシュの発表のスケジュールにも大きな影響を及ぼした。

 マッキントッシュのプロジェクトを率いたスティーブ・ジョブズは、リサの開発責任者を務めたジョン・カウチとどちらが早くマシンを仕上げられるかに5000ドルをかけていた。結果的には、予定していた自社のドライブをあきらめてソニーの開発した3.5インチを選ぶ決断を行ったために、マックはリサに大幅に後れをとった。

 日本電気版のアルトの子供の開発は、ことハードウェアに関しては1983(昭和58)年5月の発表予定を充分こなしうるペースで進められていた。

 だが、アルト型の操作環境を実現するソフトウェアの開発に取り組んでいたマイクロソフトは、内と外の両面からの圧力に苦しめられていた。

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