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パソコン創世記
第2部 第6章 魂の兄弟、日電版アルト開発計画に集う
1983 PC-100の早すぎた誕生と死

ジャストシステムの誕生

富田倫生
2010/7/30

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本連載を初めて読む人へ:先行き不透明な時代をITエンジニアとして生き抜くためには、何が必要なのでしょうか。それを学ぶ1つの手段として、わたしたちはIT業界で活躍してきた人々の偉業を知ることが有効だと考えます。本連載では、日本のパソコン業界黎明期に活躍したさまざまなヒーローを取り上げています。普段は触れる機会の少ない日本のIT業界の歴史を知り、より誇りを持って仕事に取り組む一助としていただければ幸いです。(編集部)

本連載は『パソコン創世記』の著者である富田倫生氏の許可を得て公開しています。「青空文庫」版のテキストファイル(2003年1月16日最終更新)が底本です。「青空文庫収録ファイルの取り扱い規準」に則り、表記の一部を@ITの校正ルールに沿って直しています。例)全角英数字⇒半角英数字、コンピューター⇒コンピュータ など

ジャストシステム
GUIワープロに名乗りを上げる

 四国の徳島でソフトウェアを書いているというジャストシステムの浮川と名乗る女性からの電話を古川が受けたのは、GUIベースのワードプロセッサが宙に浮いていた1983(昭和58)年の早春の休日だった。

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 電話の用件は、開発を予定している酪農家用システムの言語に関するライセンスの問い合わせだったが、ジャストシステムという名前にかすかな引っかかりがあった。

 「おたくは何か、別の仕事をやってらっしゃいませんか」

 何の気なしにそう水を向けてみると、耳元の受話器で「日本語もやっているんです」と弾むような高い声が砕け散って輝いた。

 ジャストシステム社長の浮川和宣は、1949(昭和24)年5月5日、愛媛県の新居浜に生まれた。

 全共闘運動が日本全国に飛び火し、東京大学と東京教育大学が入学試験の中止に追い込まれた1969(昭和44)年、浮川は愛媛大学工学部に入学した。浮川自身は電気工学科で重電を専攻したが、この年工学部に新設された電子工学科にただ1人、瞳の色の深い大きな目の少女が入ったことは、入学式のときに気付いた。

 男がほとんどだった工学部の新入生の中で、背筋を伸ばして立つ小柄な少女を包む空気は、光の粒子を振りまいてクリスタルガラスで固めてしまったように浮川の目に映った。

 入学式から3日もたたないうちに浮川から声をかけられた橋本初子もやがて、彼の太く明るい声で、耳を心地よく洗うようになった。

 大学卒業後、橋本初子は、大型コンピュータメーカーの高千穂バロースに入社し、神奈川県相模原の研究所に配属された。

 一方浮川は、兵庫県の姫路にある東芝の子会社の西芝電機に入社した。第2次大戦後、財閥解体を狙って集中排除法が施行されるにあたり、適用を恐れた東芝は、姫路にあった拠点を分離した。残された従業員を中心に生まれた西芝電機は、船舶の電気関係を取り扱い、日本の造船業が世界のタンカーの需要を中心となって担っていた当時、この分野の世界的な企業として名を馳せていた。

 寮生活で軍資金を蓄えては休日を使って浮川が上京する日々を経て、入社2年目には結婚にこぎ着けた。初子は退職して、いったんは姫路で主婦業におさまった。だが1年もたつと仕事への欲求不満を募らせ、「このままでは頭がおかしくなる」と言い出して、東芝のオフィスコンピュータの代理店をやっている地元の会社でプログラマとして働きはじめた。

 独立への夢は、結婚当初から持っていた。

 初子の家は4代娘ばかりの家系で、代々養子をとってきた。彼女自身も養子をとって家を継ぐことを幼いころから申し渡されてきたが、長男の浮川には義理の両親の希望に沿うことはできなかった。ただし、やがては双方の両親の面倒を見ることを考えれば、サラリーマンでおさまってはいられそうもなかった。それに何よりも、浮川自身の中に挑戦を求めてやまない覇気がみなぎっていた。

 独立にあたっては、初子のソフトウェア技術者としての力を生かそうと考えた。

 1979(昭和54)年7月、徳島市中常三島町の初子の実家の応接間を事務所に、ジャストシステムを起こした。

 社長が浮川、初子が専務の2人だけのスタートだった。

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