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パソコン創世記
第2部 第6章 魂の兄弟、日電版アルト開発計画に集う
1983 PC-100の早すぎた誕生と死

一太郎とATOKの成功

富田倫生
2010/8/26

前回「ジャストシステムの長男、jX-WORD太郎」へ

本連載を初めて読む人へ:先行き不透明な時代をITエンジニアとして生き抜くためには、何が必要なのでしょうか。それを学ぶ1つの手段として、わたしたちはIT業界で活躍してきた人々の偉業を知ることが有効だと考えます。本連載では、日本のパソコン業界黎明期に活躍したさまざまなヒーローを取り上げています。普段は触れる機会の少ない日本のIT業界の歴史を知り、より誇りを持って仕事に取り組む一助としていただければ幸いです。(編集部)

本連載は『パソコン創世記』の著者である富田倫生氏の許可を得て公開しています。「青空文庫」版のテキストファイル(2003年1月16日最終更新)が底本です。「青空文庫収録ファイルの取り扱い規準」に則り、表記の一部を@ITの校正ルールに沿って直しています。例)全角英数字⇒半角英数字、コンピューター⇒コンピュータ など

 ソフトウェア卸のソフトバンクがこの時期、各社の製品を平等に扱う中立主義から、これぞと狙いを定めた製品への重点化に方針を変更しようとしていたことは、jX-WORD太郎にとって追い風として機能した。

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 アプリケーションの中心がゲームからビジネスへと移行していく中で、現場の担当者が高価な業務用ソフトを売るために必要な商品知識をあらゆる製品に関して持つことは、不可能だろうとソフトバンクは考えた。今後ビジネスの規模をよりいっそう拡大していく上では、複数の同系統のアプリケーションの中から最良と思われるものを選び、販売力を集中させるべきだと方針を転換した同社は、jX-WORD太郎をターゲットの1つとして選んだ。

 発売直後からのjX-WORD太郎の目覚ましい伸びに励まされながら、ジャストシステムは太郎の開発直後から取りかかっていた製品の改良作業に追われた。

 浮川たちはjX-WORD太郎の仮名漢字変換モジュールだけを切り離し、表計算やデータベースなどの他のMS-DOSアプリケーションを利用する際も、この変換モジュールを使える形をとりたいと考えた。日本語ワードプロセッサのメーカーにとって、製品の優劣を分けるがゆえに全力で機能の向上に努める変換モジュールを、他社のアプリケーションで利用できるようにすることには抵抗感もあった。だがすべてのアプリケーションで、ワードプロセッサで使っているのと同じ辞書が利用でき、同じ操作方法で日本語が入力できるとなれば、ユーザーの使い勝手が著しく向上することは間違いがなかった。

 JS-WORDをきっかけとしてジャストシステムと提携したアスキーは、KTISをマルチプランをはじめとする同社のアプリケーションに組み込んで、変換モジュールを共通化することのメリットをすでに実証していた。当初からOSに漢字システムを組み込むことを理想としていた浮川は、アスキーとの提携解消後、この路線をさらにもう一歩推し進めた。

 jX-WORD太郎の開発完了直後から4カ月計画で進められた改良の作業を、ジャストシステムは結局6カ月で終えた。

 1985(昭和60)年8月にPC-9801用として発表された〈一太郎〉と名付けられた製品が、ATOKと名前を付け替えられた変換モジュールを他のアプリケーションでも利用できる構造を採用していた点は、高い評価を受けた。

 〈日本語ワードプロセッサ〉を改良して、1983(昭和58)年12月、管理工学研究所が〈松〉として発表した製品は、長めの文章を一気に変換してしまう拡張文節変換方式と、従来の水準を大きく上回る動作速度によって、反響を呼んだ。ディスクベーシックによって書かれた松は12万8000円という高い価格設定にもかかわらず、ワードプロセッサの本命の座を一気につかみ、結果的にMS-DOSの普及にブレーキをかけた。だが5万8000円の定価で、MS-DOSの流れに乗って登場した一太郎は、一気に松を追い落とした。

 アプリケーションへのバンドルによって、PC-9801を静かにMS-DOSマシンに転換させるという浜田の戦略の歯車は、一太郎の成功以降、目覚ましく回りはじめた。

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