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国際競争時代に突入するITエンジニアに生き残り策はあるか?
日本人ITエンジニアはいなくなる?

第24回 中国とインド、進むIT業界の「相互乗り入れ」

小平達也
2007/8/21

ITエンジニアの競争相手が海の向こうからやってくる。インド、中国、それに続くアジア各国。そこに住むエンジニアたちが日本人エンジニアの競争相手だ。彼らとの競争において、日本人エンジニアはどのような道を進めばいいのか。日本だけでなく、東アジア全体の人材ビジネスに携わる筆者に、エンジニアを取り巻く国際情勢を語ってもらった

グローバルな人材動向をウオッチする日系企業の経営者

 先日、中国に進出している日系企業の総経理(社長)・人事部長・採用担当者向けセミナーに講師として参加した。筆者からは、中国の人材動向に併せて、中国・インド・ベトナムなどアジア諸国を比較したグローバル人材戦略の現状といった、日本本社で課題となっている人事・人材戦略について紹介した。

 読者の中には「なぜ、中国にいる駐在員向けに現地の採用状況だけではなく、インドやベトナムを含めたグローバルな人材戦略の話をするのか?」と不思議に思う人もいるかもしれない。しかし、その答えは単純だ。

 なぜならセミナーに参加した現地の経営幹部層は、自社の中国ビジネスそのものと、「グループ全体のビジネス最適化の中で、本社で進めるグローバルビジネスと自分が担当する中国ビジネスをどうやって同時に成功させるか」というグループ全体における自社の役割の2つの視点で経営を考えているからだ。

 中国に限らないことだが、かつては海外ビジネスというと、ある国に長期滞在しているその国のエキスパートがいて、そのエリアについて深い経験と人脈を誇っていたものである。しかし、現在は単一の国や地域でビジネスが完結することはない。「グローバルリソースの最適化」と「サプライ・チェーン・マネジメント体制の構築」が増加しつつあるので、駐在員も「ある国や地域のエキスパート」というだけではビジネスが成り立たなくなっている。

 このような背景があるので、日本以上に変化の激しい経営環境に身を置く日系企業の現地経営幹部層の方は、経営の「タコつぼ化」(いま自分のいるポジションだけを見て、外に目を向けようとしないこと)に陥らないよう、必死に中国以外のビジネスの理解と把握につとめているのだ。このようなスタンスはITとグローバリゼーションが進化している現在、海外に駐在している経営層だけでなく、日本人ITエンジニアにも当然求められるものだろう。

依然、成長を続けるインドと中国

 現在、アジア各国は積極的にIT産業の振興に注力している。韓国はブロードバンド普及世界一であり、フィリピンも英語を活用した欧米向けコールセンターのほか、半導体の生産拠点でも世界有数といわれている。また、シンガポールは政府主導で世界トップクラスのIT国家となっており、多国籍企業のアジア展開の拠点となっている。

 このように各国で官民挙げてIT産業を自国の発展の柱にしようとしているが、特に存在感を出しているのはやはり中国とインドだろう。中国はソフトウェア産業規模が112億ドル、うち国内向けが76億ドルと「内需主導」である(2005年 中国情報産業部)。中国はここ数年間、10%近い経済成長を続け、現在国内に11のソフトウェアパークを持ち、1万社以上のソフト開発会社、90万人のIT産業従事者がいるといわれているが、それでもなお、成長への意欲は強い。筆者は以前、中国政府の某高官からこのような話を聞いたことがある。

 「一流の国、企業はルールを作る。二流はソフトウェアを作る。三流は組み立てだけをする。その意味で中国はまだまだこれからだ。あらゆる連携を通じ、知識を蓄え、中国が早く一流になれるようにベストを尽くしていかなければならない」

 政府の指導者クラスの人間が、このように成長意欲とともに、危機意識を持っていること自体が中国の「強み」といえるだろう。実際に中国は、ソフトウェア産業規模では216億ドルと中国の倍あるインドに対してアプローチを開始している。すでに中国政府とインド大手IT企業であるTCSとの合弁も実現している。この会社は本拠地を北京に置き、2010年には5000人体制を目指すという。


今回のインデックス
変化する海外ビジネスと成長意欲の高いインドと中国
 連携を強める新興国とどう向き合うか

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