@IT自分戦略研究所ブックシェルフ(80)
難しいベストより、できるベターを
人財メディア事業部 小林教至(愛煙家)
2009/1/14
■嫌煙家の「分煙」警告
禁煙にすればするほど 煙たくなるニッポン 山本直治(著) 扶桑社 2008年11月 ISBN-10:4594058221 ISBN-13:978-4594058227 756円(税込み) |
自民党税調がたばこ増税を見送りにしてほっとしたのもつかの間、JR東日本がついに一部を除き首都圏の226駅を2009年4月全面禁煙にすると発表した。20年以上たばこを吸い続ける身としては、貴重なオアシスがまた1つ消えたという思いだ。
たばこ問題はITエンジニアからも関心が高い。@IT会議室のトピック「タバコは本当に『悪』なのか!?」は返答数が歴代トップだ。昨今の過剰なまでの嫌煙ブーム(?)には愛煙家ばかりか、嫌煙家も違和感を覚えているようだ。
本書の著者は嫌煙家だが、いまはやりの分煙は次の理由から“危ない”と警告を発する。
- 喫煙を一方で締め出せば、他方で迷惑が広がる (JR東日本はこの例。駅周辺での路上喫煙が広がる可能性大)
- 屋内分煙では、受動喫煙のリスクは防げない (飲食店などで席が分かれているだけでは完全分煙にはならない)
- 完全分煙のための設備投資は、飲食店などサービス業の収益を圧迫する (設備の初期投資ばかりか、坪売上効率が下がる)
- このままたばこ市場が縮小した場合、関連事業者・たばこ農家の生活や税収はどうなる? (関連事業者と農家で約2.5万人が従事。税収は約2.2兆円で酒税の約1.5倍)
分煙が危ないならば、どうするか?
著者は嫌煙・喫煙の両者が共存するための工夫として、設備依存のハード分煙に頼らないソフト分煙を提案する。「難しいベストより、できるベターを」というコンセプトだ。喫煙者に一定の理解を示す非喫煙者の著者の主張には、喫煙者にもうなずける点が多い。
受動喫煙の健康被害に関するデータには賛否両論があるという。客観的な数値を論拠にたばこ問題を議論しても嫌煙・愛煙の立場で双方の主張は平行線をたどりがちだ。唯一絶対の事実は“たばこを嫌いな人がいる”ということ。人が嫌がる行為をいかに迷惑を掛けずに行うか、という社会生活上当たり前の心遣いが必要だと本書から学んだ。
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