@IT自分戦略研究所ブックシェルフ(88)
逆境下のリーダーシップ
@IT自分戦略研究所 書評チーム
2009/2/5
■逆境のいま必要なのは? ……戦略の本質
戦略の本質 野中郁次郎、戸部良一、鎌田伸一、寺本義也、杉之尾宜生、村井友秀(著) 日本経済新聞社 2008年7月 ISBN-10:4532194628 ISBN-13:978-4532194628 945円(税込み) |
「戦略」という単語は便利だ。経営戦略、マーケティング戦略、戦略的思考、そして自分戦略。戦略を付けることで知的な印象が増す。実のところ戦略とは何か?
本書は、『失敗の本質――日本軍の組織論的研究』の執筆陣がその続編的な位置付けとして著したものだ。戦略の本質が最も顕在化するケースとして、圧倒的に不利な状況で逆転した戦争を取り上げる。
- 毛沢東の反「包囲討伐」戦:国民政府軍に粘り勝った紅軍
- バトル・オブ・ブリテン:ドイツにイギリス侵攻をあきらめさせた守りの戦い
- スターリングラード攻防戦:ヒトラーの失策にソ連の逆包囲作戦
- 朝鮮戦争:マッカーサーの電撃的仁川上陸作戦
- 第四次中東戦争:限定戦争戦略という考え方
- ベトナム戦争:巨人はなぜ逆転をなしえなかったか
これらケーススタディとしての戦争を時系列に分析し、逆転あるいは失敗の原因をあぶりだすのが前半。戦史好きでなくても、これらの戦争を率いたリーダーの行動と決断には引かれるに違いない。後半では戦略の本質を10の命題にまとめている。
戦略には「大戦略」「軍事戦略」「作戦戦略」「戦術」「技術」の5つのレベルがあるが、この5つのレベルの整合性が保たれていなければならない。戦略とは「単なる計画の策定のみならず、実行を含むトータル・プロセス」(『戦略の本質』p.452)なのだ。戦略を実現するに当たって必要なのがリーダー。例えば、毛沢東やチャーチル、サダト。著者は「賢慮型リーダー」と呼んでいる。賢慮型リーダーには次の5つの能力が求められるという。もちろん、ビジネスリーダーにとっても必要な能力だ。
- 他者とコンテクストを共有して共通感覚を醸成する能力
- コンテクストの特質を察知する能力
- コンテクストを言語・概念で再構成する能力
- 概念を公共善(判断基準)に向かってあらゆる手段を巧みに使って実現する能力
- 賢慮を育成する能力
(鯨)
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