@IT自分戦略研究所ブックシェルフ(99)
「社内の出世」を重視しない女性たち
@IT自分戦略研究所 書評チーム
2009/4/3
■組織軸で考える男性、自分軸で考える女性
女性社員のトリセツ[取扱説明書]――なぜ上司の気遣いは通じないのか? 前川孝雄(著) ダイヤモンド社 2008年9月 ISBN-10:4478006318 ISBN-13:978-4344016231 1575円(税込み) |
女性社員のマネジメントがうまくできない男性上司のための、女性社員「取扱説明書」。リクルートで数百人の若手を育てた著者が、「もがき悩みながら蓄積してきた」(『女性社員のトリセツ』、p.6)内容。女性社員を「堅実キャリアさん」「天職ドリームさん」「公私セパレートさん」「結婚ロマンスさん」の4タイプに分類し、男性上司との間に日々発生するすれ違いの原因と対処法を探る。
すれ違いの大きな要因は、男性上司が「組織軸」で物事を考えるのに対し、女性社員は「自分軸」で考えること。筆者は以下のように分析する。組織として業績をあげることを仕事にしている男性上司は、「組織軸」で考える。「結婚」「出産」という不確定要素を抱えている女性は、「30代半ばまで」「子どもができるまで」という男性にはない「締め切り意識」を持っている。このことが仕事への積極性を生むが、同時に「自分軸」という組織にはなじまない考え方を生む。
「組織軸」でなく「自分軸」で考える女性社員は、社内での出世を望むとは限らない。女性社員の多様な選択肢を男性上司が理解できないことも、すれ違いの要因の1つだ。バリバリ働き続けたいと思う人もいれば、子育て中はペースダウンして働きたいという人も、出産を機に自宅でできる仕事に切り替えたいと考えている人もいる。「女性たちは、男性が想像だにできないほどのさまざまな選択肢を視野に入れながら、将来を模索しているのです。しかし、企業側が示すのは、愚直に出世を目指す『女性管理職』という、たったひとつのロールモデルだけ。いわば、“男性管理職の女性版”にしか過ぎません」(同書、p.239)
著者は、かつて女性部下に「的外れな気遣い」をして失敗し、「このときはじめて『自分の価値観だけで女性をはかることはできない』(中略)と悟った」(同書、p.79〜80)という。「『自分は女性部下を完璧には理解できない』ことを自覚するよう肝に銘じました。そうすると、おのずと言動が変わってきます」(同書、p.82)
男性上司が女性社員とのすれ違いをなくす第一歩は、まず思い込みを捨て、自分と女性社員との違いを意識することなのだ。
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