自分戦略研究所 | 自分戦略研究室 | キャリア実現研究室 | スキル創造研究室 | コミュニティ活動支援室 | エンジニアライフ | ITトレメ | 転職サーチ | 派遣Plus |

日本のITエンジニアはここがいい! ここがダメ!

日本のITエンジニアはここがいい! ここがダメ!

インド人ITエンジニアが見た日本

長谷川玲奈(@IT自分戦略研究所)
2006/9/16

日本で働く外国のITエンジニアは、どのような思いで日本にやってきたのか。日本のITエンジニアをどう見ているのか。あるインド人ITエンジニアに聞いてみた。その言葉の中に、日本のITエンジニアがグローバルで生き残っていくヒントがあるのかもしれない。

 中国やインドをはじめとする国々へのオフショア開発の存在感は年々増してきている。今後グローバルな競争が激化すると予想される中、日本のITエンジニアが競争力を伸ばしていくにはどうしたらいいのだろうか。

 インド最大のIT企業であるタタ コンサルタンシー サービシズの日本法人、タタ コンサルタンシー サービシズ ジャパンにインタビューし、日本で働くインド人ITエンジニアの思いと、グローバル化する世界での日本人ITエンジニアの生きる道を探った。

日本向けプロジェクトに従事

 インド出身のITエンジニア、タタ コンサルタンシー サービシズ ジャパン コンサルタント エンジニアリング&インダストリアル・サービシズのアニル・クマル・ナイル(Anil Kumar Nair)氏は、「インドで一番進んでいる業界はIT業界で、有名で優れた会社は最近IT系のところが多い」と語る。大学のときからITの仕事に興味とあこがれがあり、自然にIT業界を就職先として考えていたという。

タタ コンサルタンシー サービシズ ジャパン コンサルタント エンジニアリング&インダストリアル・サービシズのアニル・クマル・ナイル氏

 インドでは英語が準公用語であり、理数系の基礎教育が充実しているといわれるが、ナイル氏も幼稚園から英語を学んでいた。中学校からは、物理、歴史などの各教科を英語で学ぶ私立学校に通ったそうだ。

 大学では電子工学を専攻。並行して週末にはトレーニングスクールに通い、C、C++、Javaなどのプログラム言語、プロジェクトマネジメントを学んだ。このようなスクールが数多く存在し、「学生の間では、通うのが1つのトレンドになっています。ITに興味があり、就職を考えている人は絶対行きます」とのことだ。1998年、念願どおりシステム開発会社に入社した。

 ナイル氏が日本に来るきっかけをつくったのはこの会社だ。社内の一部は日本の顧客向けのビジネスを展開しており、ナイル氏の最初の仕事は、日本向けのプロジェクトだった。

 もちろん研修には日本語や日本のビジネスマナーなどが含まれる。はしの使い方、日本の商談の様子などをビデオで見たという。「日本の商談は静かでまじめな雰囲気なんだなと思いました。米国などではもっと気楽な感じですよね」

 開発はインドのチームで行い、日本のチームは顧客との折衝、設計、テスティング、QAを担当する。ナイル氏は実際の開発も行いながらインドと日本を行き来し、インドのITエンジニアとは英語で、日本のITエンジニアとは日本語でやりとりする日々を過ごした。

 最初は難しかった日本語も、だんだん面白くなった。いまから2年前には、日本語能力試験の2級も取得したという。

日本の大学院で学ぶ

 そんなナイル氏が日本に生活の拠点を定めたのは2003年のことだ。「日本が好きになり、日本で学びたくて」、勤めていた会社を辞めて来日。新潟県にある国際大学大学院 国際経営学研究科の2年間のMBAプログラムで、経済学やマーケティングなどを学んだ。日本で学び、将来も日本とインドの間に立つような仕事を続けていきたいと考えたうえでの選択だった。

 2005年6月に大学院を卒業後、タタ コンサルタンシー サービシズ ジャパンに入社した。ナイル氏の「IT分野で日本とインドの間に立つ仕事がしたい、プロジェクトマネジメントをやりたい」という希望をかなえられる企業といえる。

 国際大学には「キャリア・カウンセリング・サービス」という制度があり、学生はデータベースに履歴書などの書類を登録しておく。求人企業はそれを閲覧し、興味のある学生に対して採用面接を申し込むことができる。ナイル氏もキャリア・カウンセリング・サービス経由でタタのアプローチを受けた。まずは電話でのインタビューがあり、その1カ月後にタタのマネージャが面接のために大学に来て、面接を受けたという。もちろん全部日本語での実施だ。「タタは、ITエンジニアの経験があってマネジメントができる人材を探していて、私もそういう仕事に興味があったのです」

 ナイル氏に日本が好きになった理由を聞いてみた。仕事の面では、「日本語ができるので、日本のお客さんとコミュニケーションが取れる。日本で働くのはそこが一番楽しいです」という。

 生活面では、「日本は世界一安全なところだから。安心して生活を楽しんでいます。それに私の印象では、親切な人が多いです。来日直後は電車の乗り換えで迷うこともありましたが、親切にいろいろ教えてもらいました。そのほかにも道を聞いたり、買い物をするときなど、助けてもらったことがたくさんあります」とのことだ。

 現在の仕事は、具体的にはプリセールスに近いものだという。「ITの言葉をビジネスの言葉に変えてお客さんに説明し、きっかけをつかまえてビジネスにつなげる仕事です」とナイル氏は表現する。「お客さんへのサポートや、プロジェクトをうまくまわすためのサポートも含みます」

 仕事のやりがいについては、「現場のことが分かり、プログラミングからお客さんの状況まで理解することで、自分がレベルアップできることが楽しい」という。

日本人のきちょうめんさは漢字の練習から?

 ナイル氏から見た日本人ITエンジニアの長所と短所とは何だろうか。まず長所について、「日本人と働いた経験から一番にいえるのは、性格がとてもまじめで仕事もきっちりこなすところです」とナイル氏は語る。日本人ITエンジニアが最も得意だと思うものはテスティングだという。「日本のITエンジニアにテスティングしてもらうのが理想ですね。ほかの国のITエンジニアは日本人以上にはできません」。さらにナイル氏は、「日本人のきちょうめんさは、小さいころから漢字の訓練をしているためではないかと思う」との説を披露した。「最初はどうしてそこまで(綿密なテスティングが)できるのかなと思いました」と笑う。

 逆に短所としては、「時にはちゃんとした仕様書がなかったり、以前のプロジェクトをカスタマイズして短期で開発を終えなければならないものもあります。日本人ITエンジニアはそういう経験があまりなく、不得手だと思います」と指摘する。日本のITエンジニアはスペックが固まっているプロジェクトは得意だが、そうではないプロジェクトに関してはインドのITエンジニアの方が優れているという。特に、チームではなく独立したITエンジニアとして見たとき、日本のITエンジニアはスピード感がないように感じるそうだ。


今回のインデックス
 日本のITエンジニアはここがいい! ここがダメ! (1ページ)
 日本のITエンジニアはここがいい! ここがダメ! (2ページ)

@IT自分戦略研究所の関連記事
「フラット化する世界」のキャリア形成を考える
ITエンジニアよ。チャレンジ精神を抱け
日本人ITエンジニアのライバルは中国の新卒?

自分戦略研究所、フォーラム化のお知らせ

@IT自分戦略研究所は2014年2月、@ITのフォーラムになりました。

現在ご覧いただいている記事は、既掲載記事をアーカイブ化したものです。新着記事は、 新しくなったトップページよりご覧ください。

これからも、@IT自分戦略研究所をよろしくお願いいたします。