新人歓迎会、なのにトラブル? 波乱の予感……
ナレッジエックス 中越智哉
2008/3/17
2008年が始まって2カ月半。時がたつのは早いもので、もう卒業式のシーズンです。
東京の中堅システム開発会社、アットイットシステム社の新人エンジニアしんじ君も、去年のいまごろは、まだ雪深い故郷の北海道で、来るべき社会人生活への期待に胸をふくらませていました。
そんなしんじ君も、入社してもうすぐ1年。「新人」と呼ばれる期間もあと少しです。システム開発の業務にも慣れ、たまにちょっとした失敗をしながらもきちんと仕事をこなしていく姿は、もうすっかり一人前のITエンジニアです。
■しんじ君、幹事に任命される
目下のしんじ君のプロジェクトは、3月末の納品を控えて、いよいよ佳境にさしかかっていました。しんじ君も帰りの遅い日が続いています。
そんなある日のランチタイム。しんじ君は1年前の北海道を思い出しながら、ぼんやりと考え事をしていました。
しんじ君 | 分かってはいたけど、やっぱり東京は春の訪れが早いなあ。北海道なんか桜が咲くのは5月の連休ぐらいなのに、こっちじゃもう桜の開花とか、お花見とかの話題が出ているんだ……。この案件が終わったら、ゆっくりお花見にでも行きたいなあ。 |
と、頭の中が桜の花で埋め尽くされようとしていたしんじ君のそばを、上野部長が通り掛かりました。
上野部長 | やあ、しんじ君、ちょっといいかね。 |
しんじ君 | は、はい、上野部長、何でしょうか。 |
上野部長 | いや、実は業務の話じゃないんだが。 |
しんじ君 | え、そうなんですか。 |
上野部長 | うむ。来週末なんだが、しんじ君にちょっと幹事をしてほしいんだ。頼めるかね? |
しんじ君 | あ、はい、それは大丈夫です。でも何の集まりですか? いくら何でも、お花見には少し早いような気がしますが……。 |
上野部長 | ああ、いや花見ではないんだ。そうか、それをいっていなかったな。4月から来る新入社員との懇親会だよ。しんじ君も覚えているだろう。 |
しんじ君 | ああ……。懇親会でしたか。 |
上野部長 | そうだ。日程は後でメールで送っておくから、よろしく頼むよ。 |
そういい残すと、上野部長は去っていきました。
アットイットシステム社では、会社見学を兼ねて、3月末に入社直前の新入社員との懇親会をするのが恒例行事となっているのです。そして、懇親会の幹事は前の年の新入社員が担当するというのも、これまた慣例となっているのでした。
しんじ君 | そういえば僕も、去年のいまごろ、会社の中を案内とかしてもらったなあ。そのときに面田さんや鮫島さんにもお会いしたのかも。それにしても、なんかそういう役は、僕にばっかり回ってくるような気がするんだけど……。 |
しばらくして上野部長から来たメールには、懇親会の日程が記されていました。今年の懇親会の実施日は、ちょうどしんじ君のプロジェクトの納品日の翌日となっていました。
しんじ君 | 上野部長、もしかしてプロジェクトの納期を見て、僕を幹事に指名したのかな? でも、今日はもう昼休みも終わっちゃうし、店探しは明日以降にしよう。 |
幹事を引き受けたとはいえ、しんじ君も業務が忙しい時期。上司の命令であっても、業務時間中に店探しや出欠の調整などをしている時間はとても取れそうにないのです。
■懇親会当日。幹事のミッションも順調
それから数日が過ぎました。その間にしんじ君は懇親会の店を探し、出欠もおおよそ確認し、店への予約も済ませることができました。幹事のミッションは、いまのところ順調のようです。
そしてこの日、無事にプロジェクトの納品も済み、しんじ君は明日の懇親会について思いをめぐらせながら、家路に就きました。
しんじ君 | 納品も何とか済んだし、あとは明日の懇親会か。僕らの後輩になる新入社員は、どんな人たちなんだろうか……。変な人とか、気難しそうな人とかがいたら、やっぱり幹事の僕がうまくその場をとりなさないといけないのかなあ……。 |
翌日、しんじ君は朝から、納品後のプロジェクトのドキュメント整理などをしていました。緊張状態が続いていたプロジェクトが一区切りついて、しんじ君は少しのんびりした気持ちになりながらも、キーボードをカタカタとたたいています。
ふと気が付くと、もうすぐお昼休みの時間です。夕方には、懇親会に出席する新入社員たちが会社にやってくるでしょう。
■事件発生! 納品したシステムが止まった
ところが、このとき事件が起こりました。麻根主任がしんじ君を席に呼びます。
しんじ君 | 麻根主任、お呼びでしょうか。 |
麻根主任 | ああ、しんじ君、ちょっと大変なことになっているんだ。 |
しんじ君 | もしかして、昨日納品したシステムですか。 |
麻根主任 | そうなんだ。いま、経過監視で現地に行っている鮫島君から連絡があってね。どうもうまくいっていないらしくて、システムが止まっているらしい。 |
しんじ君 | そうですか、で、私も行った方がいいということですか。 |
麻根主任 | そのとおり、今回のプロジェクトでコードを一番よく見ているのはしんじ君だからな、君が行けば原因が早く分かるかもしれない。 |
しんじ君は、今回のプロジェクトではプログラミングチームのリーダーを務めていたため、ソースコードを見る機会が多かったのです。システムのコードを調べることになれば、コードの構造や関係をよく知っている人がいた方が対応がしやすいと考えられます。
しんじ君 | そうですね、何かのお役には立てるかもしれません。 |
麻根主任 | 取りあえず、午後1時に関係者が集まって対応を協議することになったから、しんじ君もそれに間に合うようにすぐ出てくれ。 |
しんじ君 | はい。 |
急げ! しんじ君。なのに、こんなときに限って……! |
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