ITアーキテクトの役割とスキルを考える!

小野沢博文(アクセンチュア テクノロジー・アーキテクチャ・グループ プリンシパル)
2007/7/30

理想のITアーキテクトとは、どのような姿だろうか。アクセンチュアのITアーキクトが、自身にとっての理想を語る。そのヒントは、全体を見渡せてコーディングもできる、そんな姿のようだ。それでは、小野沢氏に語っていただこう。

 昨年(2006年)9月に開催された@IT自分戦略研究所主催のセミナー、@IT自分戦略研究所MIX「エンジニアを楽しむオフラインミーティング」で、「私の理想とするITアーキテクト像は、システム全体を見渡せると同時に、リスクの高い部分についてはさくっとプロトタイプを作れるようなスーパー・プログラマである」という発言をしました。その後、編集者の方から「アーキテクトにもコーディング・スキルが必要なのか。そのあたりの考え方を文章にまとめてほしい」という依頼を受けました。

 それを受けて本稿では、コーディング・スキルも含めて、ITアーキテクトにどのような役割とスキルが要求されるのかを、私の経験を踏まえてお話ししたいと思います。

アーキテクトとの出会い

 ITSSのキャリアパス・モデル例によると、ITアーキテクトには、ITスペシャリスト、プロジェクト・マネジメント、ソフトウェア・デベロップメントからのパスがあります。私の場合には、メインフレームのシステムエンジニア(SE)、ソフトウェア・デベロップメント(ソフトウェア製品開発者)、ITスペシャリスト(ソフトウェア製品の技術コンサルタント)を経て、現在のITアーキテクトのキャリアに至っています。

 アーキテクトを目指そうとしたきっかけは、もう15年以上前に米DECのソフトウェア開発拠点で働いていたころ、ある製品の開発プロジェクトで、チーフ・アーキテクトと一緒に仕事をしたことです。プロジェクト・マネージャと対等な立場で、製品のアーキテクチャと技術的な課題に責任を持つアーキテクトの立ち居振る舞いが、それまで日本のメインフレーム・ベンダで働いていた私には新鮮でかっこよく映りました。

 ソフトウェア技術者として生きていくのであれば、あんなアーキテクトになりたいと思ったものです。かっこのよさだけでアーキテクトを目指したので、お手本にはなりませんが、きっかけを与えてくれたという意味で自分にとっては重要な節目だったと思っています。

技術至上主義

 そのころの私は、アーキテクチャ構築には極めて高度なスキルと集中力が要求されるため、アーキテクトにアーキテクチャ構築以外の職務を課してはならないと信じ込んでいました。人事管理、ファイナンス管理、スケジュール管理などのプロジェクト・マネジメントやプロジェクトのビジネス的な側面は、プロジェクト・マネージャが一手に引き受けるべき。アーキテクトはこうした浮世の雑事から解放されて、純粋に技術だけに集中すべき、と考えていました。DECのアーキテクトたちが実際に技術のみに責任を負っていたかどうかは、いまとなっては知る由もありませんが、アーキテクトに対する当時の私のイメージは、その程度のものでした。

 私の初期のアーキテクト像に影響を与えたもう1つの存在は、オーケストラの指揮者です。指揮者は、演奏する楽曲の主題や構造を把握したうえで、自分が指揮するオーケストラでどのようにその楽曲を表現するのかを決定します。そして、全体のテンポ、各パートの演奏方法やバランスを調整し、表現を実現していきます。

 演奏会を成功させるためには、演奏の内容や質以外にも、会場選定、スケジュール調整、宣伝、スポンサー探し、ファイナンス管理、団員やスタッフの人事管理などの重要なタスクがあるわけですが、指揮者はこうした雑事から解放されて、演奏の芸術的な面に責任を負います。このころの私は、アーキテクトも同じなのではと考えていました。アーキテクトがファイナンスの心配をするよりも、設計スキルを磨いて、優れたアーキテクチャを構築した方が、より大きなバリューを発揮できると信じていました。

アーキテクトは技術だけではない

 その後、ITアーキテクトとして実際に開発プロジェクトを経験すると、アーキテクトはアーキテクチャに責任を負うだけでは済まないと気付き始めました。

 アーキテクトは、顧客の要求を実現するためのアーキテクチャの構築に最大の責任を持つのは当然ですが、そのアーキテクチャはアーキテクトだけで勝手に決められるわけではないし、それを実現するのもアーキテクトだけではありません。また、アーキテクトがリソース配分やスケジュール管理に無頓着であれば、開発プロジェクトは大混乱に陥ってしまいます。

それでは、小野沢氏は、ITアーキテクトの役割を、どのように考えているのだろうか。その点は、次のページを参考にしてほしい。

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