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第1回 DeNAの技術者は失敗を恐れない


井上敬浩(慶應義塾大学大学院)
2010/04/20

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マネージャとしてDeNAを支える能登信晴さん

井上:「マネジメントとは、自分の環境を作る仕事だ」を興味深く読ませていただきました。マネージャになった経緯をお聞かせください。

能登:自ら積極的に「マネージャになりたい」と志願したわけではありません。少人数で始まったDeNAが成長する途中、マネジメントをする人が必要になってきたからです。あるとき、社内のサービスで大きなトラブルが発生し、トラブル解決のためにコードを書いている時間がまったくなくなってしまいました。このとき、マネージャ業務をやりながらコードを書くのが困難であることを痛感させられました。そこで、マネージャという役割に一度どっぷり浸かってみようと決意したのです。

能登信晴さん
システム統括本部 技術戦略部
能登信晴さん

井上:もともと、マネージャに興味はあったのですか?

能登:はい、自分の環境は自分で作ることができた方がいいですし、メンバーとの深い話し合いが面白いと思っていました。DeNAのエンジニアたちは、技術力やその人物自身の背景がとても面白いので、話を掘り下げていけばいくほど、どんどん興味がわいてくるのです。しかも、わたしは前職が研究職だったため、周囲のさまざまな研究を幅広く見てきました。だから、技術の話はだいたい理解できます。メンバーの能力や適性を理解して彼らに最適な環境を作ること、次に挑戦する課題を設定することは、思っていたよりも向いていたようです。

DeNAエンジニアを取り巻く環境、教育

井上:なるほど。それでは社内のエンジニアの環境や教育について教えてください。まずは環境面についてお願いします。

能登:DeNAでは、ITエンジニアが使用するマシン環境には出し惜しみをしません。研修終了後、ITエンジニアは自分の好きなマシンを申請できます。Macを使用しても構いません。個々のエンジニアにとって、最高の環境を提供できればよいと考えています。ディスプレイも24インチのものを2台提供できるように準備を進めているところです。もちろん、いきなり100万円もするサーバーを申請されても困りますが(笑)。あと、我々はモバイルサービスを展開していますので、各人に1つ、携帯電話かスマートフォンを提供し、毎年買い替えられるようにしています。日々どんなサービスが展開されているのかを調べ、試すのも重要な仕事ですので。

井上:社内教育についてもお聞かせください。

能登:わたしたちのモットーは「『誰がいったか』より『何をいったか』」。すばらしい発言はどこからであっても拾い上げ、サービスに生かしていきます。逆に、何も発言しないITエンジニアは好まれません。意見や不満は遠慮なく発言し、同時にそれをどうやったら解決できるのか真剣に考えてもらいます。また、仕事に関してですが、その人が達成可能なぎりぎりの高いレベルの結果を求めます。そうして、皆に絶えず成長を続けてもらっています。ベンチャーは人が命。人の成長が会社の成長に直結しています。同じことをしていては個人も会社も成長が止まってしまいます。

井上:仕事として「結果」は非常に重要ですが、プロセスはどのように評価しているのですか?

能登:まずは毎週の進ちょく報告で取り組みを確認します。また、DeNAでは設計レビューやコードレビューを頻繁に行います。忙しい会社ですと、とりあえずサービスが動けば良い、といってレビューはおろそかになってしまいがちですが、DeNAでは決して手を抜きません。サービスはリリース後が最も重要です。保守性・可読性の高いコードでないと、改善・対処に時間がかかり、ユーザーの気持ちをつかむサービスにすることが難しくなります。あとは、日常的に個人の能力をきめ細かく把握し、次のレベルへどうやって進んでもらうかを常に意識しています。

新卒採用でポテンシャル重視をする理由

井上:採用担当として、どのような方針で採用を進めているのでしょうか? 新卒採用に限定してお願いします。

能登:DeNAはポテンシャル重視の採用を一貫しています。かつ、求める人材のレベルを絶対に下げません。DeNAでは、面接時のスキルや学歴をあまり問題にしません。求めるのは「自走できる人」。プログラミングでなくても、何かの物事に自ら取り組んで乗り越えて来た人は、優れた成果を出す可能性があると考えています。あとは、新しい技術やサービスをどんどん吸収していく「貪欲さ」。「自分がサービスを作って世界を変えるんだ!」という「情熱」も重要です。IT分野を専攻していなかった学生をポテンシャル採用している理由の1つに、大塚の活躍があります。入社時点でITをよく知らない、だけれども自ら問題を発見できる。そういう意識の高い学生が、面白くて優れたサービスを築き上げた実績があります。わたしたちはこうした「可能性」を大切にしたいと考えています。

井上:今年の採用方針についてお聞かせください。

能登:事業成績を見てもらえば分かるように、わたしたちはいま、ソーシャルゲーム市場を拡大しています。当然、世界も視野に入れています。そのため、もっとITエンジニアを増やしたいと考えています。しかし、前述しましたが、決して人材の質は下げません。以上の方針で、採用活動を行っています。

井上:人数が増えてくることによって、企業として意思決定が遅くなったり、部署間の連携にひずみが生じたりする懸念はありませんか?

能登:人が増えても個々がDeNAマインドを持った優秀な集団でありたいと思っています。皆、「ユーザーを幸せにするサービス」という同じ方向を向いていますので、部署間で互いに不利益になるような、あるいは利己的な行動に走ることはありません。意思決定遅延の問題もチームを細分化して、個々に裁量を与えることによって回避できると思っていますので、ご質問のような懸念がほとんどありません。

能登さんが次に切り開く未来

井上:能登さんが次に果たしたい目標は何ですか。このままマネージャを続けられるおつもりですか。

能登:当面は、マネージャとして活動していきます。ITエンジニアが増えれば、会社としてできることの幅が増えるはずですし、マネージャの人数も増やしていく必要があります。個人的には、「マネージャはプレイングマネージャである」ことが重要だと思います。コードを書く人が自然とマネージャも兼ねられるようなノウハウが作れればいいな、と思っています。

井上:「当面の目標」ですか。その先には、どんな野望を抱いているのでしょうか。

能登:わたしは「マネージャはゴールではなく、通過点である」と考えています。わたしは30代後半に足を踏み入れていますが、まだまだ技術に飢えていますし、サービス作りにも興味があります。実はわたし、これまで自分が企画して成功させたサービスってないんです。だからいつかは自分が作ったサービスを大ヒットさせたいです。そして、たくさんの人に影響を与えたいですね。

能登さんのインタビューを終えて

 「マネージャがゴールではない」という言葉はとても印象的でした。自分でサービスを作っていきたいという気持ちが何歳になっても失われないITエンジニアは、本当に魅力的な存在であることを、改めて再確認しました。同じく印象的だったのがDeNAの“人”へのこだわり。採用も、環境も、教育も、どれをとっても一切の妥協がありません。DeNAで働くエンジニアが全員優秀でアツい方々であることを再確認しました。

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記者プロフィール
井上敬浩(いのうえたかひろ)

 慶應義塾大学大学院理工学研究科で数理科学を専攻。研究内容はアルゴリズム・最適化。

 情報学は学んでこなかったが、学部4年時のITベンチャー企業でのアルバイトをきっかけに、ITの面白さにどっぷりと浸かるように。

 一通りのプログラミング言語を浅く広く学んできたが、まだまだ勉強不足を感じている今日このごろ。得意分野は、データマイニングや最適化アルゴリズムの実装。

 スピード感があって個人の裁量が大きいITベンチャー企業が大好き。

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