第4回 プログラミングに魂売ります!
アデコ 高野和幸
2008/9/10
■プログラミング大好き。マネージャ業務がストレスに
佐久間さん(仮名)は33歳。派遣社員としてキャリアをスタートし、さらなる開発スキルの向上を目指して中堅のシステム開発会社に転職してから6年が過ぎようとしていました。
周囲の佐久間さんへの評価は、とにかく「3度の飯よりプログラミング」。上司が注意しなければ、そのまま会社に住み込んでしまいそうな勢いで業務に取り組み、プログラミングにのめり込む生活を楽しんでいました。
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好きこそ物の上手なれ。プログラマとしてのスキルは卓越したレベルに到達しており、クライアント企業からの信頼も厚く、後輩たちも技術的に行き詰まるとアドバイスを求めに来るなど、社内でも一目置かれる存在でした。
ところがある日、佐久間さんの運命を変える出来事が起こったのです。きっかけは社長のひと言。「そろそろマネジメントを経験してもいい時期だな」
佐久間さんの会社では、プロジェクトの上流工程から経験できる機会は少なく、プロジェクトリーダーやマネージャになりたい場合は規模の大きい企業に転職する社員が多かったそうです。社長としてはその貴重な機会を佐久間さんのために使おうと考えて、声を掛けてくれたのでした。
マネジメントのポジションになれば、給料も上がるとのこと。佐久間さんはその申し出にちょっとした違和感を覚えながらも、プログラミングだけではそのうち限界が来る、そろそろ後進の指導や管理業務を経験しておくべきだという周囲のアドバイスもあり、感謝して受け入れることにしたのです。
しかし、リーダーとしてマネジメント業務に携わるようになってから、佐久間さんの仕事への熱意は一変してしまいます。それまでは一緒に働くメンバーの作業が遅れても、自ら手を動かしてそれをフォローすればいいと、目の前の工程にだけ集中していられました。それが、スタッフ1人1人の動きをすべて把握しておかなくてはいけなくなりました。嫌な印象を与えないように気を使いながら、作業の進ちょく具合を探らなくてはいけないのが苦痛だったのです。
そして何よりもつらかったのが、夜遅くまで作業をしていることに関して部下からクレームが出たこと。佐久間さん自身は何時まででもプログラミングに没頭していたいのに、それによってメンバーが帰りづらくなっているとの指摘で、後ろ髪を引かれる思いで会社を出なくてはいけなくなりました。
どれだけ仕事が長びいてもまったく感じることがなかったストレスを強く意識するようになり、ITエンジニアになって初めて、会社に行きたくないと思うようになってしまったのです。
■プログラミングに魂売ります!
みるみる元気をなくしていく姿を見かねたお友達の勧めで私のところに足を運んでくれたとき、佐久間さんは「給料もアップしたし、残業時間も少なくなって、同僚からはとてもうらやましがられています。けれども楽しいと思えない仕事をこれからも続けていくのかと思うと、時計を元に戻したい気持ちさえあります」と話してくれました。
給与面や将来のキャリアパスへの不安は変わらず残っており、そのまま以前の状態に戻るのは得策ではないことを確認した後、私は佐久間さんにこんな提案をしました。
「インターネットサービスを提供している企業の中には、いわゆるスーパープログラマを、システム開発会社のマネージャ並みに評価してくれるところがあります。いまの佐久間さんではまだまだスキルを磨いていく必要があり、絶えず勉強し続ける意欲が求められますが、その覚悟はありますか?」
佐久間さんは間髪を入れず、こう答えました。
「以前の私だったら、もしかするとそこまで本気にはなれなかったかもしれません。でも、充実した仕事こそ、ほかのどんなことにも勝る生きがいだと分かったいまなら、プログラミングに魂を売るつもりでやります!」
魂を売る、という言葉が出てきたことには2人とも吹き出してしまいましたが、佐久間さんの覚悟を見て取った私は、難易度の高い企業にも積極的にチャレンジすることを勧めました。そして応募の際には必ず、その決心の固さを企業にしっかりとアピールするようにしました。
面接では、まだまだスキル不足との評価を受けて残念な結果になることもありましたが、そのあふれる熱意を受け止めてもらえることも多く、最終的には業界でも一目置かれるプログラマが多く在籍する企業から内定を得ることができました。
入社後の佐久間さんの成長は驚くほど早く、いまではセミナー講師などを務めるなど、マネジメントとは別の形で後進の育成にも力を注いでいます。
■仕事のどんな場面に、喜びを感じますか
「やりがいのある仕事」「充実感のある仕事」をしたいと考えるのは当たり前。そのように思われるかもしれません。
しかし、今回紹介した森原さんと佐久間さんのように、恵まれた環境との二者択一を迫られたときには、簡単には決断できないのが現実でしょう。
大切なことは、日ごろ自分が仕事のどんな場面で喜びや幸せを感じるのかを意識しておくこと。そして、1つを選んだらほかのものは捨てなくてはいけないという固定観念をなくすことです。
自分の充実の「ツボ」がどこにあるのか。ぜひ見つけてみてください!
今回のインデックス |
顧客からのクレームが前向きな転職理由に。森原さんの選択 |
「3度の飯よりプログラミング」。佐久間さんの選択 |
筆者プロフィール |
アデコ 人材紹介サービス部 コンサルタント 高野和幸 1974年埼玉県生まれ。大学卒業後、テレビゲーム雑誌、パソコン雑誌の編集・ライターを経て、2001年アデコに入社。スーパーバイザーとして、通信キャリアや大手航空会社のユーザー系システム開発企業にて派遣スタッフの管理を担当し、厚い信頼を得る。現在はキャリアコンサルタントとして、IT関連職種を中心に転職希望者のサポートを行っている。日本産業カウンセラー協会認定 産業カウンセラーおよびキャリアコンサルタント資格取得。 |
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