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第5回 小江戸らぐ(前編):頑張らない勉強会

よしおかひろたか
2008/11/27

エンジニアの開催する勉強会が増えている。本連載では、かつてシリコンバレーで「勉強会の文化」に身を置き、自らも長年にわたって勉強会を開催し続けている「生涯一プログラマ」のよしおかひろたか氏が、勉強会に参加し、開催するためのマインドとノウハウを紹介する。

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 これまで4回にわたって、勉強会に参加することの意義、楽しさ、勉強会を主催することのメリットなどを記してきた。読者の皆さんの参考になっただろうか。

 今回は若干趣を変え、Linuxユーザーズグループ「小江戸らぐ」を主宰している羽鳥健太郎さん(通称「はとちゃん」)との対談から、「勉強会を続けるということ」と「内輪という壁を超えること」について考える。

勉強会のライフサイクル

 勉強会のライフサイクルは通常、下記のようになる。

  1. 取りあえず有志で集まり、勉強会を開催する

  2. 主催者、参加者ともに何らかのメリットを感じれば、回数を重ね、徐々に参加者も増える

  3. マンネリや分裂など、さまざまな問題にぶつかり、衰退へ【パターンA】

  4. 主催者がいろいろな工夫や苦労を重ねて開催を続ける(微妙な平衡状態)【パターンB】

  5. 特に問題もなく、淡々と回数を重ねる【パターンC】

 つつがなく勉強会開催を続けている老舗の勉強会は、2の段階から、3ないし4に陥ることなしに、あるいは何かの工夫をして5の状態に至ったといえる。部外者からはうかがいしれない、いろいろな事情があるのかもしれない。勉強会を軽やかに開催している主催者のノウハウを学びたいと思い、お話を伺った。

形式張り過ぎないように

左:よしおかひろたか 右:羽鳥健太郎さん

羽鳥 最初は小江戸らぐの概要から。小江戸らぐは2002年8月、僕がLinux Usersのメーリングリストに、こういうのを作りましたっていうメールを投げたのが最初ですね。その月の終わりから勉強会を始めたんです。いままで70回以上、毎月必ず1回はやるという形で続いています。途中で僕が1回、病気で入院していたんですが、そのときも代わりの方にやっていただいて、無事に月1回のペースは守っています。

よしおか 始められたきっかけというのは?

羽鳥 もともと埼玉には「埼玉西Linux研究会」というユーザー会があったんです。そこで活動していたんですけれど、ちょっと方針が合わなくなってしまいました。もうちょっとラフな感じというか、遊びがあっていいんじゃないか、と。それだったら、同じ埼玉の中でもいろいろな会があってもいいじゃないかと考えたのがきっかけです。「やってみれば?」という声に押されてやってみたら、いままでなんとか続けてこれた、という次第です。

よしおか その埼玉西Linux研究会って、いまはどうなってるんですか?

羽鳥 埼玉西Linux研究会は、残念ながら終息してしまいました。組織的にしっかりしようとしたんですけど、あまり乗ってくる人がいなくて。僕の解釈なんですけど、形式張り過ぎたかなあと思います。形を作りすぎたかなあと。もっとラフにやればよかったのになと思う。それを見ていたので、その反省ということで、僕らはあんまり頑張らないでやっています。

よしおか でも、月1回、ずっとやってるわけですよね。それって結構大変なんじゃないですか。段取りをしたりだとか。

羽鳥 勉強会自体は、大体ここでやるという場所が決まっているので、2週間から10日ぐらい前に「やりますよー」という連絡をする。勉強会の後に飲み会を必ずやっているので、飲み会の場所はある程度目星をつけてメーリングリストに投げる。あとは、メーリングリストで次の人につなげやすいように話をつなげてあげるくらい。それから、2〜3日前に飲み屋さんの予約を取る。それくらいですよ。

軽やかな運営

 
 
小江戸らぐ 羽鳥健太郎さん

よしおか 勉強会の形式を教えてください。

羽鳥 小江戸らぐは地域リナックスユーザー会という位置付けなので、メンバーが共通したテーマを持っていないんですね。技術レベルもばらばらだし、興味もばらばら。だから、とにかくその月に何かしたこと、困ったことを伝えて、誰かが興味を持ってくれたり、困ったことを助けてくれたり。この場合、困った人は、何が分からないのかっていうことの伝え方を学んで、助けた人は、どんな風にしたら分かってもらえるかな、と助け方を学ぶわけです。オーソリティの方が通られた道を疑似体験として勉強していく、というやり方をしています。だから、その月ごとに勉強会のテーマは当たり外れがすごくありますね。

よしおか 何人ぐらい参加されているんですかね。

羽鳥 少ないと10人ちょっと。多いと20人ぐらいかな。

よしおか 年齢構成は?

羽鳥 30代前半が中心。30代が一番多いですね。僕が(年齢が)高くて足を引っ張ってる。最近は皆さん、どんどん40代に入ってきてる。

よしおか 若い人が新しく入ってきたりするんですか?

羽鳥 小江戸らぐは、中学や高校の先生が結構いらっしゃるので、自分の教え子や卒業生を連れてきています。それから、コミケ(コミックマーケット)でこれまでの勉強会をまとめた本を出しているので、それに誘われて若い人が来ます。あとは、大学の先輩後輩の関係とか。

よしおか 小江戸らぐをずっとやっていて、良かったなというのは何ですか。当初、思いもよらなかったけど、すごく良かったことって、多分ありますよね。

羽鳥 僕は経済産業省の外郭団体に勤めているので(注1)、どうしてもそちらに顔を向けがち。ただ、僕たちは本当は経済産業省の立案した政策を実行する部隊で、本来なら利用者の方向を向いて仕事をしなくちゃいけない。ただ、いろいろあって、どうしても利用者でない方に顔を向けちゃう傾向があります。僕は月に1回、勉強会でいろいろな人の顔を見て、みんなはこういうことを考えてるんだっていうことに気付くことができる。それは仕事の面でも随分プラスになっているんですよ。

よしおか やっぱり、月1回の刺激を受けてるっていうところがメリットですかね。

羽鳥 うん。すごく刺激を受けていますね。

注1:羽鳥さんは情報処理推進機構(IPA)に勤めている

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