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第6回 小江戸らぐ(後編):「弱いところ」をさらけ出せ

よしおかひろたか
2008/12/25

エンジニアの開催する勉強会が増えている。本連載では、かつてシリコンバレーで「勉強会の文化」に身を置き、自らも長年にわたって勉強会を開催し続けている「生涯一プログラマ」のよしおかひろたか氏が、勉強会に参加し、開催するためのマインドとノウハウを紹介する。

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 前回に引き続き、Linuxユーザーズグループ「小江戸らぐ」を主宰している羽鳥健太郎さんとの対談の模様をお伝えする。

 「当たり前のことをしているだけ」と語る羽鳥さん。その先にある「軽やかな運営のコツ」を探る。

バザールモデルの運営

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日時:2009年1月31日(土)
場所:ベルサール九段 参加費:無料

よしおか 例えばOSC(オープンソースカンファレンス)で出店を出すときも、小江戸らぐの人たちは積極的に手を挙げて、自分で仕事を作って、出店をやっていますよね。あれはどういうことなんですかね。だって、羽鳥さんがAさんは何やって、Bさんは何やって、Cさん何やって、なんて指示をしているわけじゃないよね。みんな勝手にやっている。その日は9時に集まりましょうとか、わたしは午前中行けないから、昼ぐらいから行くわ、とか、そんな感じですよね。

羽鳥 うん。そうですね。みんな勝手にやってる。

よしおか そこには何の命令系統もないわけで、いわゆるバザールモデル的な運営ですよね。

羽鳥 そうそう。だから、さっきいった「できることをやる」という部分に帰結しちゃうんじゃないかなと思いますね。

よしおか 理屈の上では「できることをやる」っていうのはよく分かるんだけど、皆さん、どうしてそれをできるのかが分からない。

羽鳥 できることっていうのは、できることの中に、やりたいことが含まれているっていう感じなのかなあ。

よしおか バザールモデルの本質は「できることをやる」。各自が独立して、自立してやるっていうことじゃないですか。そこには何の制約もない。自らの意思でやるという意味でのボランティア。そういうボランティア精神っていうものを、日本という地域で子どものころから身に付けるというのは難しいですよね。経験の場もあまりないし。

左:よしおかひろたか 右:羽鳥健太郎さん

指示待ち人間には(コミュニティを楽しむのは)難しい?

よしおか 小江戸らぐに集う老若男女は、ボランティア精神を軽やかに体現している。普通、会社だったら、偉い人が「はい、A君はこれをやりましょう」といってくれる。今度の売り上げを達成するためには、このプロジェクトではこういうミッションでこういうことをやりましょう、とブレイクダウンして、じゃあ君はこれっていう分担をする。

 典型的なバザールモデルだと、そんなことはない。小江戸らぐのスタイルは、まさにバザール的。誰かが命令するわけじゃないですよね。羽鳥さんは、好きだから勝手に飲み屋の予約をする。みんなも、発表したり、OSCで店を出したり。一見、簡単なように見えて、大変なことですよ。指示待ちの人から見れば。

羽鳥 指示待ちの人から見ればね。

よしおか 指示待ちの人にとっては、そういうコミュニティ活動は心地いいんでしょうか。自分が何をやっていいか分からないから、かえって不安なのかもしれない。

羽鳥 そういう面はあるかもしれないですね。多分、後から新しく入ってきた人は、みんながそういうふうにしているから、「そういうふうにするものなんだな」って思っているのかも。僕たちは、そういうスタイルが普通で、当たり前だと思っている。

よしおか うまくいっているグループというのは、何か特別なことを意識してやっているわけじゃない。自分たちが当たり前と思ってやっていることが、結果として環境に適合して、残っていくわけです。続かないパターンというのは、自分たちが当たり前だと思っているやり方でやるんだけど、環境に適合できずに空中分解するわけです。

羽鳥 無理してるからね。

よしおか 組織って、「こういうふうにあるべきだ」というところがある。運営っていうのはこうあるべきだ、とかね。会則があって会費があって、会長がいて書記がいて会計係がいて、とか。でも、そういうのを紙1枚作って、なんとなく満足しちゃう部分があると思うんです。これは総会で決議しようとか、過半数を持ってとか。それでも別にいいんだけど、それはこういうゆるいコミュニティ活動には重すぎますよね。

羽鳥 そうそう。「埼玉西Linux研究会」が、まさにそういうふうにしようとしていたんです。それが肌に合わなかった。会社と同じようなことをしなくてもいいじゃないか、と思ったんですね。それだったら反対のことをやりたい。何にも決めない。できることをやる。

よしおか 結果としてどちらが環境に適合したか、ということですね。

「裸」を見せる

 
 
小江戸らぐ 羽鳥健太郎さん

よしおか 羽鳥さんは、自分たちの「ゆるい運営」を当たり前のことだと思っている。だから、それをわざわざ言葉にはしない。わたしはそこを引き出したい。それが言葉として明示されれば、コピーが可能になる。いまコミュニティを運営している人や、これから始めようと思っている人にとって、そのノウハウやマインドがコピー可能になれば便利ですよね。

羽鳥 なるほど。……僕は、コミュニティの場ではなるべく裸を見せるようにしています。できないことをやらないとはいわないですけど、「これはできるから、これは僕がやる」といいます。自分の「強いところ」と「弱いところ」を積極的に見せているんですね。皆さん、そういうところを見て、安心してくれるんじゃないかな。犬と同じですよ。誰かがおなかを見せると、ほかの犬もおなかを見せてくれるじゃないですか。そんな感じで、おなかを見せ合いっこして、「じゃあ僕、これはできるから、これはやろう」ってみんながいい始める。そういうことなのかな。でもこれは、地域LUG(リナックス・ユーザーズグループ)だからこそできることかもしれません。

よしおか でも、そもそもコミュニティって、物理的に近くにいなくちゃオフ会ができないですよね。RubyやPerlの人たちも、地域ごとのRuby会議だとか、渋谷だとか、地域性が発生している。

羽鳥 特定の技術分野のコミュニティだと、集まる人間が少なくなりますよね。その点、特定の分野に縛られない地域LUGは有利だと思います。おっしゃるとおり、オフラインで集まる以上、一定のエリアに限られちゃう。特定のソフトウェアや特定のディストリビューションなどで区切ると、さらに人数が絞られちゃいます。僕たちは、そこで絞り込みをしないから継続できているのかなと思う。

よしおか 「カーネル読書会」は相当ニッチだけど続いているんですよ。ニッチなテーマを求めている人というのは、「多くはないけど絶対にいる」ということを、この10年間で学びましたね。小江戸らぐは「何でもありで間口が広いから続く」ということではないんじゃないかなあ。もっと違うポイントがあるような気がする。

羽鳥 小江戸らぐは、みんなが次のステップに行くための、エントリーレベルのコミュニティだと思っています。「サザエさん」の世界のような場にしたい。いつまでもカツオくんは小学5年生というように。ただ、毎回のテーマは変わっていく。「○○の巻」は、それぞれの時代背景で変わっていきます。でも取り組み方はずっと同じ。そこから、もっと極めようとして「kernel.org」に行く人がいたり、Debianの勉強会をやりたいっていう人がいたり……。だから、間口は広くしています。何かやりたいという人をバックアップしましょう、というスタンスを続けているんです。それは変わらないですね。僕たちは「ニッチ」という考え方をしません。むしろ、「リナックスって何?」という人たちにアピールしたい。その具体的な方法が、インストールパーティーだったり、夏と冬にあるコミケへの参加だったりします。

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