第7回 社内勉強会で組織を活性化せよ
よしおかひろたか
2009/1/29
■勉強会のスモールスタート
社内勉強会はどのように開催すればよいか。
- テーマの選定、発表者の選定
- 日時の決定、スケジュールの調整
- 場所の決定
- アナウンス、告知、参加登録
- 当日の開催
- 懇親会、飲み会
- 報告、資料の蓄積、公開
などのプロセスそのものは、通常の勉強会とほとんど変わらない。
業務時間内とするのか時間外とするのかは考慮すべき点である。テーマや業務との兼ね合いで、会社の了解が取れるのなら、業務時間内という選択肢は悪くない。しかし、最初は 他部門からの参加がしやすいように 、業務時間外で開催するのがよいだろう。
場所は会社の会議室が無難であろう。コストも特に発生しない。事業所が複数あって、参加者の勤務地が異なっている場合には、場所の決定が若干複雑になる。この場合、主催者の都合を優先すればいい。
アナウンス・告知・参加登録なども大げさに考えず、メールなどで参加希望者を募る程度でよい。もちろん社内Wikiなどに専用ページを立てることが簡単にできるのであれば、そのような仕組みを利用してもよい。どちらにせよ、開催コストをなるべくかけないで、気楽に始めるのが長続きのコツである。
当日の開催は、全員が知り合いならば、通常の会議と同様に定刻開始で構わない。だが、初対面の人が1人でも参加する場合は、全員で自己紹介をしたい。せっかく勉強会に参加してくれた縁を大切にしよう。
懇親会・飲み会などは、他部門の人と知り合いになれるので、可能であれば行いたい。勉強会の反省会も兼ねるとよいだろう。
最後に簡単で構わないので、勉強会そのものの報告を行おう。特に上司には口頭でもいいので、勉強会の顛末を報告し、良き理解者になってもらおう。社内にはWikiやSNSなどで活動報告、発表資料の公開などを行う。社内に理解者やファンを増やすことは勉強会の活動において確実にプラスになる。簡単でもいいので怠らないようにしたい。
難しく考えないで、とにかくやってみる。どんな勉強会でも一緒である。
■オープンイノベーションとしての社内勉強会
知人との会話で、「大手企業は縦割りで、他事業部のことを知っているようで実はよく知らない」というのが実情、ということを教えてもらった。現場同士の交流は同期やプロジェクトで一緒にならない限り、ありそうでないらしい。社内勉強会は、単なる飲み会に毛が生えた程度のものであったとしても、現場レベルでの技術交流、知識の流通などの分かりやすいメリットのみならず、組織の活性化、ナレッジの共有など、さまざまなメリットがある。
他事業部での隠れたタレントや利用されていない技術、ちょっとしたノウハウなどを再発見できるかもしれない。事業部ごとの縦割りによって行われていた無駄な車輪の再発明(編注:すでに確立した技術や解決法を無視して、同様のものを再び1から作ってしまうこと)が防止できるかもしれない。
技術開発を自部門だけで行うのではなく、広く社内のリソースを利用するべき――という理想は広く求められているが、実際なかなかそう理想的には行われていない。自社内ですべてのイノベーションを研究開発するという古典的なクローズドイノベーションから、社外のイノベーションを意識して利用するオープンイノベーションへとパラダイム変換したのと同様、他部門との交流活性化エンジンとして社内勉強会を利用するという視点も上司への説得材料として使える。
車輪の再発明を減らすことによるコスト削減効果。他部門で開発された技術を再利用することによる機会損失の減少。新規開発立ち上げスピードの向上。メリットはいくらでも説明できる。
■不適切な社内勉強会
この記事を読んで、「なかなか面白いな。ぜひ社内勉強会をやってみよう」と思ったあなた。不適切な社内勉強会は行わないように。
不適切な社内勉強会とは、具体的には次のようなものを指す。
- 自分の手を動かさないで、部下に勉強会を企画、運営させる
- いきなり壮大なお題目の勉強会にする
- 業務そっちのけで勉強会の開催を目指す
勉強会は自主的に開催するからこそさまざまな気付きがある。自主的に、好きだからやる、というのが大前提である。上司からの仕事として勉強会の企画運営を任されたとしたら、それはこの連載で取り上げている勉強会ではなく、通常業務の一環である。業務の一環であるのなら、通常の仕事の枠組みの中で評価されるべきものである。
自分の手を動かして、自主的な勉強会を開催してみよう。それはあなたにとって何がしかの発見が必ずある。経験するだけの価値がある。
実現可能性も考えよう。できる範囲から始めよう。経験値を積み、他部門との協力が得られるようになったら、ギアをチェンジすればよい。いきなり壮大な勉強会を開催しようとするとリスクが大きくなる。スモールスタートが重要である。
業務あっての勉強会である。本業に支障があるようでは本末転倒である。周りの理解も得られない。本業をちゃんと行ったうえでの勉強会。無理は禁物である。できるところから始めるのが大切というのは、何事も同じである。
社内の勉強会ファンを地道に増やしていく。その経験は業務にもプラスに働く。勉強会で一緒になった仲間と、いつの日か実際の仕事で一緒になる、ということを考えただけでも愉快ではないか。社内ネットワークは仕事をスムーズにするための潤滑油だ。と同時に、それはあなたにとっての財産にもなるだろう。
■まとめ
社内勉強会を開催する意義、方法などを紹介した。社内勉強会を開催することによって、社内人脈が豊かになるなど、さまざまなメリットが考えられる。社内勉強会を開催してみよう。
そして、その経験談をぜひ、教えてほしい。あなたの社内勉強会の経験は、他社で社内勉強会を開催しようと考えている人にとって貴重なノウハウとなる。経験を公開することによって、さらに社内勉強会をレベルアップすることができるようになる。
筆者プロフィール |
吉岡弘隆(よしおかひろたか) 2000年6月、ミラクル・リナックスの創業に参加。1995年から1998年にかけて、米国OracleにてOracle RDBMSの開発を行う。1998年にNetscapeのソースコード公開(Mozilla)に衝撃を受け、オープンソースの世界に飛び込み、ついには会社も立ち上げてしまう。2008年6月、取締役CTOを退任し、一プログラマとなった。 所属 ミラクル・リナックス株式会社 日本OSS推進フォーラム ステアリングコミッティ委員 U-20プログラミング・コンテスト委員 セキュリティ&プログラミングキャンプ、プログラミングコース主査 独立行政法人情報処理推進機構、技術ワーキンググループ主査 OSDL Board of Directorsを歴任 カーネル読書会主宰 Webサイト ブログ:ユメのチカラ 日記:未来のいつか/hyoshiokの日記 |
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