第5回 新人あら太君、初めての勉強会を主催する
ナレッジエックス 中越智哉
2008/9/18
新人エンジニアだったしんじ君もついに2年目。初めての後輩を迎えて緊張気味のしんじ君ですが、何とメンターに指名されることに! 2年目エンジニアとして、新人のメンターとして、さらに成長するしんじ君を見守ってくださいね。 |
都内の中堅システム開発企業、アットイットシステム社の2年目エンジニア、しんじ君。新人エンジニアのあら太君のメンターを務めています。あら太君はしんじ君や周囲のアドバイスを受けてどんどん成長し、メンターであるしんじ君も日に日に頼もしさを増しています。
しんじ君とあら太君の成長の様子は…… 2年目エンジニア しんじ君のOJT日記 第1回 新人あら太君、お客さま訪問に遅刻する? 第2回 新人あら太君、先輩が残業していると帰りづらい! 第3回 新人あら太君、質問したいのに先輩は忙しそう…… 第4回 新人あら太君、パートナーさんへの指示は難しい! |
■あら太君、しんじ君を居酒屋に誘う
前回(第4回「新人あら太君、パートナーさんへの指示は難しい!」)、しんじ君の適切なアドバイスによって、パートナーさんとの協力作業をうまく行うことができたあら太君。せめてものお返しにと、しんじ君を、開店記念キャンペーンでドリンクが半額の居酒屋へ誘ったのですが……。
あら太君 | 先輩、ここです! |
しんじ君 | へぇ、開店したばかりだけあって、きれいな店だね。 |
あら太君 | じゃあ、さっそく入りましょう。 |
と2人が店に入ろうとしたところ、
新倉君 | 坂上君! |
あら太君を呼ぶ声がしました。あら太君の同期の新入社員(新倉君、新宅君、新野さん)たちです。ちょうど帰り道だったようです。
新倉君 | 坂上君、いま帰りかい? |
あら太君 | あ、みんな、ちょうどよかった。この店、開店記念でドリンク半額なんだよ。みんなも一緒にどう? 中山先輩もいるよ! |
そんなわけで、急きょ、しんじ君と新入社員4人の飲み会が始まりました。
あら太君 | いや〜、今日も中山先輩に助けられちゃって。ホント、先輩は頼りになりますよ! |
しんじ君 | いや、そんなことないよ。あら太君がよく頑張ってるんだよ。 |
新宅君 | 坂上君、いいなあ。中山さんって、去年の新人では一番の成長株だって、社内でもっぱらの評判ですよ。 |
しんじ君 | え? そうなの……、誰がそんなこといってるのかなあ? |
新野さん | 私のメンターが若井さんなんですけど、「しんじ君は、ライオンの子のように何度もがけから突き落とされて、でも自力ではい上がってきたのよ」って、よくいってました! |
しんじ君 | 若井さん、相変わらず大げさにいってるなぁ……。いや、僕だって周りの先輩に助けられながら、なんとか少しできるようになってきただけなんだよ。 |
あら太君 | 先輩こそ、相変わらず謙虚ですね〜。あ、ビールがもうないですよ。おかわり頼みましょう! |
しんじ君 | うん、半額だから、今日はどんどん飲もう! |
■開店記念キャンペーン、のはずが……。あら太君、青くなる
こんな調子で、飲み会は大いに盛り上がり、あっという間に終電に近い時間になりました。
あら太君 | そろそろいい時間ですね。お会計してもらって帰りましょうか。すいません、お会計をお願いします! |
店員 | はい、3万9375円になります。 |
あら太君 | ……ん? あれ? 結構かかってるなぁ……。すいません、今日ってドリンク半額になるんですよね? 僕、こないだチラシもらったんですけど。 |
店員 | あ〜、それ、すいません昨日までだったんですよ。日付のところを見ていただければ……。 |
あら太君 | あ〜! 本当だ! どうしよう、みんなにも半額っていっちゃったのに……。 |
しんじ君 | あれ、あら太君、青い顔してどうしたの? 飲み過ぎて具合でも悪くなったかい? |
あら太君 | いえ、違うんです先輩、実は、ドリンク半額は昨日までだったんですよ。 |
しんじ君 | え? そ、そうなの? 半額だと思って、みんな結構飲んじゃったけど……。 |
あら太君の様子に気付いて、ほかの新入社員たちもレジの近くにやってきました。
新倉君 | え、ドリンク半額じゃなかったの? 僕、そんなに手持ちがないんだけど……。 |
新宅君 | 私も……。 |
そして、あら太君を含めた新人全員が、なぜかしんじ君の方をじっと見つめています。
しんじ君 | え? 僕? あ、ああ、そうか今日は僕以外全員新人かあ。じゃあ、今日は僕が少し多めに出しておくから。みんなは残りを頭割りで払ってくれればいいよ……。 |
新人全員 | ありがとうございます! |
ということで、なんとかその場は収まりました。帰り道、しんじ君は、予想以上に寂しくなってしまった自分の財布の中身を見つめながらつぶやきました。
しんじ君 | 僕だって、まだ2年目なんだから、新人とそんなに給料の額は変わらないんだけどなあ……。 |
■あら太君、しんじ君へのお礼に「あること」を企画する
翌日、あら太君はしんじ君に昨夜のことを謝りました。
あら太君 | 先輩、昨日は本当にすいませんでした。本当だったら、私が足りない分を全部払わないといけなかったのに……。 |
しんじ君 | ああ、いや、いいんだよ。給料日も近いし、ちょっとくらい出費が多くてもなんとかなるからさ。 |
あら太君 | すいません。じゃあ、次の給料日にその分をお返しします。 |
しんじ君 | いや、別にそこまでしてくれなくていいよ、大丈夫だからさ……。 |
あら太君 | でもそれじゃ申し訳ないので……。 |
そんなやりとりが交わされているところに、面田さんが通りかかりました。去年、しんじ君のメンターだった先輩社員です。
面田さん | しんじ君、朝から払うとか返すとか、お金の話なんかして、どうしたんだい? |
しんじ君 | あ、面田さん。いや、別に大したことじゃないんですが……。 |
あら太君としんじ君は、面田さんに事のいきさつを話しました。
面田さん | そうか。それは災難だったね。でも、しんじ君はお金のことは別に気にしていないんだね。 |
しんじ君 | はい。 |
面田さん | でもあら太君はそれでは気が済まないんだね。 |
あら太君 | はい、申し訳なくて……。 |
面田さん | じゃあ、どうだろう。あら太君がしんじ君の仕事の役に立つ何かをして、それでお返しをするっていうのは? |
あら太君 | えっ? それは、できたらいいとは思いますが……。いったい、どんなことをすればいいんでしょう? |
面田さん | そうだなあ、例えば、しんじ君が業務で知りたいと思っている知識を教えてあげるっていうのは? |
あら太君 | でも、新人の私に、先輩に教えられることなんて……。 |
面田さん | そうかな。しんじ君がまだ知らない新しい分野の知識だったら、あら太君が勉強すれば教えてあげられるんじゃないかな。そうすれば、しんじ君は短い時間で勉強できて、仕事の役に立つだろう? |
しんじ君 | でも、せっかくそこまでするなら、私だけに教えるのじゃもったいないですね。 |
面田さん | そう、つまり……。 |
しんじ君 | なるほど、あら太君が、そういう社内勉強会を主催するってことですね? |
面田さん | そういうこと。それで、ほかの新人たちも呼んであげれば、新人たちに対するあら太君の汚名返上の機会にもなるよね。 |
あら太君 | 分かりました、ぜひやらせてください! 中山先輩って、いまどんなことが知りたいですか? |
面田さん | そうだなあ、最近、Rubyっていうプログラミング言語のことをいろいろ耳にするんだ。興味はあるんだけどあまり調べる機会がなくて。そういうのが勉強できたらいいなあ。 |
あら太君 | はい、じゃあRubyをテーマに社内勉強会を企画します! |
面田さん | おっ、その気になってきたね。じゃあせっかくだから、私からも麻根主任にこのことをお願いしておくよ。 |
しばらくして、あら太君は麻根主任に呼ばれました。
あら太君 | 麻根主任、お呼びでしょうか。 |
麻根主任 | ああ、さっき面田くんに聞いたんだが、社内勉強会をやりたいんだって? |
あら太君 | はい。面田先輩が勧めてくださって。 |
麻根主任 | いい心掛けだな。 |
あら太君 | いえ、元はといえば、私が日付を見間違えたせいで……。 |
麻根主任 | ん? 日付が何だって? |
あら太君 | あ、いえ、何でもありません。 |
麻根主任 | そうか。本来なら勉強会の準備は業務以外の時間で行うのがウチの会社の慣例なんだが、あら太君はこの間のプロジェクトも一段落しているし、特別に業務時間中に準備することを許可するよ。頑張りなさい。 |
あら太君 | はい、ありがとうございます! |
さあ、勉強会の準備だ! |
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