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パソナテック シリコンバレーツアーレポート

前編 シリコンバレーは、世界中の優秀な人材を求めている

岑康貴
2008/7/22

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シリコンバレー発祥の地へ

 
 
HPのスタートの地となったガレージ

 続いての企業視察は、シリコンバレーの成立のきっかけになったといわれているヒューレット・パッカード(HP)。まずはその創業の地となった、創業者の1人であるデビッド・パッカード氏の自宅とガレージを見学した。

 このガレージはシリコンバレー発祥の地として史跡に指定されており(参考:HP、そしてシリコンバレー発祥の地、米国の「史跡」に指定)、一時期、別の人間の手に渡ったものの、現在は同社が保有している。偉大な歴史の第一歩がガレージとは、まさにアメリカンドリーム――と思いがちだが、現在はこのガレージ周辺は高級住宅街となってしまっており、ツアーに参加したエンジニアたちも「ドリーム」という情緒を感じるのは少し難しかったようだ。

 その後、同社のエグゼクティブ・ブリーフィング・センター(EBC)へ。時間はちょうどお昼時。ツアー一行はEBC内にあるカフェテリアでランチを取った。広々として日当たりの良い空間であったことは、写真からも感じられるだろう。

HP EBC内にあるカフェテリア

 ランチの後は、同社の創業からの歴史がまとめられたムービー『Origin』を鑑賞。創業者のビル・ヒューレット氏とパッカード氏による同社の最初の製品「200A」(オーディオ発振器)がディズニーに採用されたことや、「ポケットサイズ」にこだわって作られた電卓「HP-35」のエピソードなど、同社の発展の歴史がまとめられていた。

先端技術研究所「HP Labs」

 その後、ツアーはパロ・アルト市に戻り、同社の先端技術研究所である「HP Labs」を視察。残念ながら内部は撮影禁止だったため、写真は外観のみとなる。

HP Labs外観。もともとはHP本社オフィスだった建物である

 HP Labsは実際の製品開発・販売の部門とはまったくの別組織。年間で4000億円弱の研究費を投入して研究を行っているという。主に研究をしているのは、同社の製品ロードマップ上に「存在しない」領域を担当。「未来を作る」ことを目的としており、600人の研究者が働いている。パロ・アルト市の研究所には300人の研究者が在籍しており、そのほかにイギリス、ロシア、イスラエル、インド、中国、日本に拠点を持つ。

 2008年3月より研究所の方向性を転換し、研究の数を減らした。下記の3つのテーマにフォーカスをしているという。

  • High-impact research:大きなインパクトを持つ研究に集中。顧客の持つ最大の課題を解決することを目的とする。具体的には、下記の5項目となる

    1. 情報爆発:増加し続ける情報をどのように貯蔵し、分析し、意思決定者に届けるか


    2. ダイナミック・クラウドサービス:インターネットが自動的に一般消費者にサービスを提供するような環境づくり


    3. コンテンツの変換:アナログコンテンツからデジタルコンテンツへの変換。種類の違うネットワークをどのようにつなげるか


    4. インテリジェント・インフラストラクチャ:高速コンピューティングとセキュリティ


    5. サステナビリティ:持続可能性。グリーンIT、低炭素製品の開発など

  • Open innovation:研究の手法。各研究者は「そこまで賢くない」ので、協調して研究を行う

    1. 大学の博士課程の研究者、約100人と提携


    2. ベンチャーキャピタルと協力


    3. Webで一般公開し、世界中からフィードバックを得る

  • Technology transfer:研究が終わった後、どう市場に送り出すか。事業部門との提携など

最高の頭脳を集めるために

 HP Labsでの研究から実現した製品は数多く、インクジェットプリンタやレーザープリンタの技術、卓上電卓、ディスクのチップ、Halo(バーチャル会議システム)などがあるという。

 在籍している研究者はほぼ全員が博士号取得者。世界中の博士課程の学生を、インターンを経て採用することが多いという。HP社内での異動というケースは少ないそうだ。評価に関しては、「論文」と「特許」が大きな目安になっている。

 研究者のワークスタイルは、ここでも「自由」という回答。何を作り出しているのかが最も重要だからだ。「非常に奇妙な時間帯にメールが来たりする」という。ただし、まったく協調がないわけではなく、さまざまな分野の研究者がオフィス内で頻繁にミーティングを行っている。HP Labsには、「働くのに最高の環境をつくるよう努めている。そうしなければ、世界中から最高の頭脳を集めることはできない」という考えがある。

 HP Labsの説明後、研究所内を見て回る機会があったが、各研究者の1人1人のスペースは非常に広く、かなり背の高いパーティションで区切られていた。これも集中して研究する最高の環境ということなのだろう。大量の数式が書かれたホワイトボートがパーティションの外から見えたが、その内容は筆者にはまったく理解できなかった。

 なお、この研究所はもともと、同社の本社オフィスだった建物。2人の創業者の執務室は現在もそのままの形で保存されている。同社のコンセプトの1つである「オープンドア」(常にドアを開いたままにして、社長室であろうとも従業員が自由に出入りし、議論を交わすことができるようにするという考え方)の証拠として、執務室のドアが開いた状態でカーペットが日焼けしている様子が確認できた。

 前編では、2つのIT企業のオフィスやラボ、そのビジョンやワークスタイルについてレポートした。8月7日に公開予定の後編では、グーグル本社などの有名企業に勤める現地邦人エンジニアたちや、シリコンバレーでコンサルティング会社を経営する渡辺千賀氏によるトークセッションの模様をレポートし、「シリコンバレーで働くエンジニアの姿」に肉薄する。

 

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