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コラム:自分戦略を考えるヒント(10)
転職で重視される「キャリアビジョン」の創り方

〜将来のビジョンは500字で書いてみよう!〜

堀内浩二
2004/4/15

こんにちは、堀内です。2004年3月にリニューアルした@IT自分戦略研究所の中で、転職者に好評をいただいている「@ITジョブエージェント」。わたしも、ビジョンのある転職を応援するために「転職プランセルフチェック」の開発に協力しました。早速「@ITジョブエージェント」を使って自分のキャリアを考えてみた青木隆さん(仮名・31歳)から、こんな質問が……。

余裕のあるときにキャリアビジョンを考える

青木 先日公開した「あなたの『転職活動』は間違っている!」という記事はドキッとするタイトルでしたね。

堀内 タイトルは編集局で付けてくれるのですが、サイトリニューアルのタイミングに「@IT自分戦略研究所らしい」転職活動を提案しようということで、ちょっと刺激的なタイトルになりました。

青木 記事中の「直近で転職を考えていない方も、空欄を埋めてみることでシナリオ作りに役立つと思います」という部分を読んで、さっそく「転職プランセルフチェック」に挑戦してみました。

堀内 青木さんはいまスグの転職を考えているわけではないのですか。

青木 いまの職場でさまざまな知識を学んでいますので、スグに転職エージェントに相談するつもりはありません。ただ、「いい案件があればヤブサカではないぞ」とは思っています。心理的に余裕を持てる状態のときに、その先のキャリアプランを考えておくのもいいかなと思いまして。

堀内 なるほど。なかなかできそうでできないことだと思いますよ。で、自分の転職プランを整理できましたか。

青木 ステップ3の「将来のビジョンを持つ」を埋めるのが難しいです。あまりにも漠然としていて、何をどう書いたらよいか……。

まずは「仕事のビジョン」を決める

堀内 そうですね、この欄は個性が出るところです。自由に書いてもらえるように文章欄になっています。わたしは「転職アドバイスメール」で読者の相談に乗るときにはこの欄を真っ先に見ます。相談メールは長文でも、この欄は2〜3行という人もいます。皆さん、「空欄を埋める」ことに苦労しているようです。「考えはあるんだけどうまく文章にまとめられない」というところでしょうか。では、書き始めたときに「何が難しかったのか」を思い出してください。

青木 まず、「どこにフォーカスした」そして「どのくらい先の」ビジョンを描けばいいのかが分かりませんでした。わたしは来年結婚するので、「家庭を大事にする」といったことも書こうかなと思ったのですが、「一見仕事とは無関係(?)」といえそうですし……。

堀内 「将来のビジョンを持つ」欄に書くのは、仕事のビジョンなのか生活のビジョンなのか……ということですね。書いてはいけないというルールは特にありません。基本的に自由ですが、字数は決まっているので、まずは仕事のビジョンに焦点を当てたほうがいいと思います。自分の仕事選びにかかわるような大事なことは、その下の「転職に関する課題」にメモできます。

青木 次に、「どれくらい先の」ビジョンまで考えるべきなのですか。仕事に絞ったとしても、先のことを考え出すとどんどん思考が拡散してしまって……。

堀内 それも自由です。「〜べき」という決まりはありません。期間については断定的なことはいえませんので、(あくまでも参考として聞いてほしいのですが)いろいろな人と話していると、5年くらい先をイメージするのがやりやすいのではないかなという気がします。

青木 5年か……。意外と近い未来なのですね。

500字でビジョンをまとめる理由

堀内 もちろん、何歳までに独立したいとか、40代で大きな仕事がしたいとか、何らかの目標を“仮決め”している方はそれでいいと思います。ただ、青木さんのように「チャンスがあれば転職してもいいかな」というような“やや待ち”状態の場合、いざ目の前にチャンスが訪れると、そのチャンスだけに目がいってしまいがちになります。

 そこで、少し高い地点から考えるために、5年後に到達したいイメージを描き、それを実現するステップとして、「目の前のチャンスに3年間コミットできるのか?」を考えてはどうでしょうか。3年間というのは区切りのいい数字です。腰を据えて何らかのスキルを身に付ける期間として、妥当ではないでしょうか。

青木 なるほど。その説明を聞いて、何となく書けそうです。最後に、どうして500字でまとめる必要があるのですか。「○○なエンジニアを目指す!」と書けば一言で済みます。500字というのは、どうも中途半端ではありませんか?

堀内 いえ、500字でまとめることには、理由があります。例えば、日本語で500字の文章を説明したらどのくらい時間がかかるか知ってますか。丁寧に話せば2分くらいかかるのです。

青木 5年間のビジョンを2分で語るのは難しくないですか?

堀内 まあ、話す側にしてみればそうですけどね。試しに、500字の文章を読み上げたものを録音して、聞いてみてください。興味のない話を2分間じっと聞くのは長く感じるものです。

 この欄は自分のためにビジョンを記しておく場所でもありますが、転職エージェントとのコミュニケーションにも活用できます。恐らく採用面接でも使う情報ですから、とても実用性の高い欄です。例えば、「キャリアビジョンがあると転職に有利か」という記事を紹介していますので目を通してみてください。キャリアビジョンを持っているかいないかで、どれだけ転職活動に影響を与えるのかがよく分かります。

 採用面接で自分の将来ビジョンを説明できる時間は、せいぜい3分程度ではないでしょうか。そこで、自分の思いのエッセンスを上手に表現できれば、さらに突っ込んだ会話に発展するかもしれません。

テーマ分けすればうまく整理できる

青木 ふむ。ということは、スピーチ原稿のように情報を圧縮しておけばいいということですね……。

堀内 そのとおりですが最初からスラスラと、500字にまとめるのは難しいでしょうね。ある程度「構造化」してみたらどうですか?

青木 構造化?いまはオブジェクト指向の時代ですよ(笑)。

堀内 いやいや、そっちの話ではありません(笑)。「転職プランセルフチェック」の図を見ると、「伸ばす転職」(やりたい)と「活かす転職」(できる)の2軸がありますよね。

青木 縦軸が「新しいことへの挑戦」で、横軸が「これまで蓄積してきた強みをさらに磨く」ということですよね。この2軸は考えやすいです。

堀内 そのとおり。ビジョンをこの2軸で分けて書いてみたらどうでしょうか。いまの自分を棚上げして「やりたい」とか「こうありたい」と思っていることと、「(いま持っているが)さらに伸ばしたい強み」などに分けてみます。それぞれ3つの個条書きにしてみてください。1つにつき80字くらいです。

 書けそうな文字量になってきましたよ。せっかくですから、この3つの文章もバランスよく考えて書いてみましょう。例えば、下の表のように技術面でのビジョン、ビジネス面でのビジョン、そして人間面でのビジョンとか、テーマごとに分けて書いてみるとまとめやすくなります(表1)。

(例)
伸ばす(やりたい)
活かす(できる)
技術面 データベース ネットワーク
ビジネス面 マネジメント力 英語力
人間面 リーダーシップ コミュニケーション力
表1 将来のビジョンを「技術面」「ビジネス面」「人間面」などに分けて書き出してみると、まとめやすくなる 

 ビジネス面とは特定の業務・業界に対するビジョンのこと。人間面とは、リーダーシップやコミュニケーションなどの話です。

青木 ここまでフレームワークがあると考えやすい。ついでに、何かサンプルなどがあるとうれしいのですが……。

堀内 上の表1では、「書き出し例」を入れましたが、それに引きずられすぎると発想が固まってしまいます。大切なのは自分の言葉で書くこと。他人に話すためには覚えていなければなりませんし、覚えていても自分の言葉でなければ、伝わるものも伝わりません。まずは書き始めてください。その後であれば、ほかの方の情報を参考にしてもいいと思います。

筆者紹介
堀内浩ニ●アーキット代表取締役。早稲田大学大学院理工学研究科(高分子化学専攻)修了。アクセンチュア(当時アンダーセンコンサルティング)にて、多様な業界の基幹業務改革プロジェクトに参画。1998年より米国カリフォルニア州パロアルトにてITベンチャーの技術評価プロジェクトに携わった後、グローバル企業のサプライチェーン改革プロジェクトにEビジネス担当アーキテクトとして参画。2000年に帰国、ソフトバンクと米国VerticalNet社との合弁事業において技術および事業開発を担当。

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