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特集:ITエンジニア独立入門

第4回 独立後の悩み「職人か、経営者か」


中越智哉(ナレッジエックス)
2009/7/30

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銀行に融資を申し込む

 このようなことがあったものの、幸いにもそれですぐに会社が傾く、というまでには至りませんでした。

 しかしながら、この先、同じような事態が起こらないという保証はありません。今年に入っても景況感の悪化は続いていますし、別の業者さんで、2月に入って4月からの新入社員研修の規模の縮小があったなどという話もあります。そう思うと、急に資金繰りが心配になってきました。創業してからそのときまで、自己資金だけを元手に無借金でやってきたのですが、本当に追い詰められた状況になってからでは遅いと思い、銀行から融資を受けてみることにしました。

 折しも、その当時弊社が本店を置いていた東京都・大田区(*1)で「緊急経営強化資金」といって、融資にかかる利子を一定期間、大田区が肩代わりしてくれるという施策が発表されていました。どうせ借りるのであれば、このタイミングしかないと、わたしはインキュベーションマネージャと相談しながら、手続きの準備を始めたのですが、そこには思わぬ難題が待ち受けていました。

(*1)現在弊社は品川区に移転

 まず、苦労したのは融資を申し込む金融機関の選定です。一般論として、零細企業が融資を受けるならば、大手行ではあまり相手にされないので信用金庫や信用組合が良い、といわれています。上記の施策の申し込みのために大田区の担当窓口で事前に相談した際にも、同じことをいわれたので、まずは信用金庫で申し込み先を選定することにしました。

 どの信用金庫・信用組合のどの支店にするか、というのが問題になるわけですが、これも一般論でいえば自社オフィスから近い所に支店を持っている信金・信組が良いといわれています。また、このときは弊社だけでなく、弊社と同じ創業支援施設に入居しているほかの企業も融資を検討していたため、インキュベーションマネージャには「ここの信金は審査が厳しい」といった情報が集まっていましたので、それも参考にしながら選定することができました。

 しかし弊社にとっては困ったことがありました。その当時入居していた施設は、入居年限が決まっていたため、翌年の春には退去し、別の場所に移転しなければいけなかったのです。なので、そのことを承諾してもらったうえで申し込みをする必要がありました。移転先については、まだそのときはっきりとは決めていなかったので、取りあえず社長の自宅近くなら対応しやすいだろうと、自分の自宅近くの信金に行ってみましたが、ほとんど門前払い状態でした。思えばこの信金には会社を設立するときにも出資金の払い込みで申し込みに行ったのですがやはり門前払いされたことがありました。どうもこの信金には縁がなかったようです。

 インキュベーションマネージャに相談したところ、支店の少ないところなら店舗当たりの担当地域が広いのでいいのではないか、という助言をもらい、そういった信金を選んでいってみたところ、あっさりOKが出ました。この信金は神奈川県に本店があり、神奈川県内にはたくさん支店を持っているのですが、大田区には数店舗しか支店がないのです。

 融資を申し込む金融機関も決まり、保証をしてくれる信用保証協会へも手続きをし、あとは大田区の「緊急経営強化資金」のあっせん状をもらうだけでしたが、このあっせん状をもらうのが大変でした。

 申し込み開始初日の午後に窓口に行ったのですが、とんでもなく長蛇の列になっていました。窓口の数も普段より増やしていたようなのですが、全然追いつかないという感じでした。大田区は町工場の町ともいわれ、中小企業が多いために、融資を希望する企業もそれだけ多かったのでしょう。その日は並んでも順番が回ってきそうになかったので、あきらめて別の日に出直すことにしました。出直した日は朝一番で窓口に行ったのですが、それでもすでにかなりの行列で、順番が回ってくるか心配でしたが、何とか昼過ぎに手続きをしてもらうことができました。わたしの後ろに並んでいた人たちの中には、お昼の時点で「今日のうちには順番が回ってこないと思います」といわれ整理券をもらって帰されてしまった人たちもいました。整理券の番号は受付開始数日の時点で1000番を優に超えていましたので、大田区には相当な数の申し込みが殺到していたようです。

 そんなちょっとした苦労はありましたが、無事に融資を受けることができました。手を付けないに越したことはないのですが、もしものときや事業の拡大などで必要になったときには活用したいと思っています。

そして、4年目のいま

 いろいろな出来事がありましたが、弊社は今年の3月で創業4年目に入りました。節目のこの時期に弊社は有限会社から株式会社への社名変更とオフィスの移転を実施し、新たな気分で4年目をスタートしました。

 前回の記事、そして今回も、なんだか失敗談ばかりをご紹介してしまったような気がいたしますが、もし次にこういった記事を書く機会があったときには、もっと成功体験をお話しできるように、これからも精進していきたいと思っております。小さな会社の小さな事業ですが、どうか長い目で見守っていただければ幸いです。

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