第4回 転職、温故知新。不況期はトレンドを見極める時期
岡本哲男(テクノブレーン IT人財担当 部長)
2009/9/29
■製造拠点は海外へ
今回の不況には、不況になるまでのスピードが早かったことと、全世界同時に不況に陥ったことの2つの特徴があります。この原因には、経済のグローバル化が挙げられるでしょう。
グローバル化の波は、IT業界にも波及しています。インドや中国が低コストのITエンジニアを提供することで、システム開発の拠点がそれらの新興国にシフトしてしまいました。この流れはもう止めようがありません。今後、IT業界の製造部門の海外シフトは本格化するでしょう。ワールドワイドで必要な人材を調達するという現象が起きており、日本のITエンジニアも世界で競争せざる得ない状態に置かれています。作業をこなすだけのITエンジニアは、厳しい状況に置かれることが間違いありません。
こうしたグローバル化の流れの中で、日本のITエンジニアに求められるのは、業務知識やプロジェクトマネジメント能力だと思われます。日本の業務を良く知っていて、プロジェクトを取りまとめることができ、それを海外の開発拠点に投げる英語力があるような人材が生き残るでしょう。
■不況はビジネスモデルやテクノロジが生まれる時期
では、この不況をどう乗り越えればいいのでしょう。過去3回の不況を振り返ってみると、不況は新しいテクノロジが生まれる時期でもあります。
不動産バブル崩壊後には、ITが生まれました。HTMLのスキルでさえもてはやされた時代でした。
ITバブル崩壊後は、ITが企業の基幹システムに本格的に導入されていきました。それに伴い、インフラとしてDBサーバ、アプリケーションサーバ、Webサーバの三階層の構造になったアプリケーション層とインフラ層のITエンジニアが求められた時代でした。また、24時間止まらないクリティカルな仕組みを作るインフラ技術が求められてきました。
今回の不況で企業再編が進んだ結果、IT投資は復活する兆しを見せています。企業再編に伴うシステム統合と、次の成長局面で勝つためのシステム投資が行われようとしています。例えば、楽天やアマゾンなどの勝っているWebサービス企業は、積極的にシステム投資を始めています。
最近は、クラウドといったキーワードが騒がれていますが、この不況の間にどんな技術が流行ってくるのかをキャッチアップすることが大切です。IT投資が回復局面に向かう中で、新しいテクノロジを身に付けておけば、ITエンジニアとしての価値を上げることができるのです。
■不況という時代こそ、トレンドを見極める時期
この不況という時代に何をして過ごすかで、自分の将来像が変わってきます。この時期に高い評価を得られるITエンジニアになることが理想です。そのためには、テクノロジベースなのか、プロジェクトマネジメント(PM)ベースなのかを明確にして自分のキャリアを積み上げていく必要があります。
身の回りのできる先輩を見習うのも良いでしょう。また、PM系を狙うのであれば、いまいる会社でそれが可能かどうか見極める必要があります。自分の目指すキャリアを作れないと判断した場合は、転職の準備をすべきです。
ただし、安易に会社を辞めてはいけません。こんな時期だからこそ、信頼のおけるキャリアコンサルタントとじっくり話をして、自分のキャリアモデルを描いてみましょう。自分のいまの力を見定めて、次世代の技術を見極め、これからの人生をデザインしましょう。この不況は、ITエンジニアとしての将来をじっくりと考える良いきっかけだと意識すべきなのです。
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