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IT業界の冒険者たち

第42回 インターネットの風雲児

脇英世
2009/7/17

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本連載を初めて読む人へ:先行き不透明な時代をITエンジニアとして生き抜くためには、何が必要なのでしょうか。それを学ぶ1つの手段として、わたしたちはIT業界で活躍してきた人々の偉業を知ることが有効だと考えます。本連載では、IT業界を切り開いた117人の先駆者たちの姿を紹介します。普段は触れる機会の少ないIT業界の歴史を知り、より誇りを持って仕事に取り組む一助としていただければ幸いです。(編集部)

本連載は、2002年 ソフトバンク パブリッシング(現ソフトバンク クリエイティブ)刊行の書籍『IT業界の冒険者たち』を、著者である脇英世氏の許可を得て転載しており、内容は当時のものです。

ハルゼイ・マイナー(Halsey Minor)――
元CNET CEO

 深夜、テレビで米国のコンピュータのソフトウェアやハードウェアに関する番組を見たことはないだろうか。多分それはCNETが作った、「CNETセントラル」というテレビ番組である。技術的にも詳しくて大変面白い。日本のテレビ番組のように司会者が「パソコンはまったく分からなくて……」というせりふを繰り返すこともない。克明な情報を流すCNETセントラルは、パソコンマニアにはたまらない番組である。米国のCNETは、好評のCNETセントラルのほかに、テクレポート、ザ・ウェブ、ザ・ニュー・エッジ、TV.COMの4つのテレビ番組を流している。ただし空中波ではなくケーブルテレビで配信されている(連載当時)。

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 また、インターネット上でCNETの持っているサイトは11個あって、どれも有名である。

 読者はいくつご存じだろうか。英語の方で頻繁にアクセスしていれば相当のパソコン通である。もっともそれはわたしがそう思うので、誰が決めたわけでもない。SNAP! ONLINEはインターネットの巨人AOL(アメリカ・オンライン)に挑戦している。少し時期的に遅すぎたのではないかとCNETの出資者には評判が悪い。同じことがCOMPUTERS.COMについてもいわれている。そうでなくともCNETは赤字が大きいのである。

 CNETは情報が早く大変便利だ。わたしも毎日英語版を見ている。ただし、出資者にマイクロソフトの創立者であるポール・アレンの会社、さらにインテルが名を連ねているので、マイクロソフト関係、インテル関係のニュースの公正さについては、一応用心するようにしている。

 もっともCNETは初期にはインテル関係のニュースを報道するときには、繰り返しインテルの資本が入っていることを表明していた。インテルの資本は入っていても、報道は中立だというのである。マイクロソフトの独占禁止法訴訟に関する報道の場合も、読むときは必ず中立であるかどうかを一呼吸おいて考える。少しおかしいと思うこともあるが、比較的中立なようだ。

 CNETを率いるのがハルゼイ・マイナーである。ハルゼイ・マイナーは以下のように語っている。

 「CNETのビジョンは伝統的なテレビ放送をインターネットと結び付けてコンピュータとその関連技術の情報を最も面白く分かりやすく提供しようとするものです。テレビ放送とインターネットのハイブリッドアプリケーションがこのビジョンを実現するのにとても適しています」

 さて、ハルゼイ・マイナーとはどんな人物だろうか。

 ハルゼイ・マイナーはバージニア州のシャーロッツビルで生まれ育った。ある本によれば、ハルゼイ・マイナーの父は農地を扱う不動産業で成功しており、母は馬の調教と売買をしていたとある。またハルゼイ・マイナーは恵まれた環境で育ち、コンピュータに夢中になったのは10歳のころヒースキットのシステムを自分で注文したのが始まりだったとある。

 この記述は少し奇妙だと思うのだ。本人自身はCMP NETのインタビューで次のように述べている。

 「わたしはヒースキットを注文しようとして、カタログを取り寄せた。しかし大変高価だったので、父はわたしが見る前に捨てた」

 ヒースキットはアマチュア無線用の自作キットから出発しており、ヒースキットの組み立てキットは米軍の放出物資をもとに作られた伝統があるので、一般にそんなに高価なものではない。確かに1979年にゼニスがヒースキットを買収してからは、次第にコンピュータの組み立てキットに傾斜したが、それでも恵まれた環境の家庭で買えないものではない。だから、少し変な気がするのだ。

 ハルゼイ・マイナーは文科系出身ではあるが、実は子どものころからコンピュータには関心を抱いていたということの裏付けのためにヒースキットを持ち出しているらしい。CNETは比較的技術志向の会社であり、ハルゼイ・マイナーも文科系出身であることを気にしているようだ。この点、同じサンフランシスコにあって、同じメディア産業でも、WIREDでは技術オタクが避けられ文科系であることを誇りにできるのが面白い。

 1983年、ハルゼイ・マイナーはウッドベリーフォーレストのウッドベリーフォーレストスクールを卒業して、それからバージニア大学で人類学を専攻した。大学時代はスカッシュに熱中した。主に美術と美術史をテーマにラテン語、アラビア語などをかじったという。

*)ホールシー・マイナーでなくハルゼイ・マイナーと訳した理由について、ひと言述べておきたい。ハルゼイ・マイナーの父親のいとこは、第二次大戦中に南太平洋でハルゼイ空母機動部隊を指揮した人として有名な、ビル・ハルゼイ提督である。この人の名前を、日本では通常ハルゼイ提督と訳しているので、ここでも慣用に従った。

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