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企業ストーリー 〜ITエンジニアから経営者へ

第3回 出資が得られる事業計画書と損益計算書

語り手 鈴井広己(仮名)
聞き手 渡辺知樹(ランディングポイント ジャパン)
2009/2/12

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エンジニアから経営者への転身を果たした鈴井広己氏(仮名)が、起業エピソードを語る。聞き手・解説は、自身も企業の代表を務める渡辺知樹氏。

 起業を目指すエンジニアや、人に使われない生き方に興味があるビジネスパーソンに対し、実際に起業し経営に携わった人の経験やノウハウをお伝えする本連載。3回目は、会社を設立した鈴井氏から、出資者とやりとりした経験を聴取した。起業に際し、どうすれば現実的な計画が立てられるか、出資者である第三者に自分の計画を信用してもらえるか。具体的で確実性の高い計画の立て方とその表現方法が今回のテーマである。

 出資者とはいわゆる投資家のことである。彼らは手持ちの資金を運用して効率よく殖やすという目的で動いている。お金を殖やすなら銀行預金や国債など債券の購入、株式投資、先物投資、不動産投資などやり方はいろいろある。預金なら元金は保証されるものの、ご存じのように超低金利時代なので手持ち資金はほとんど殖えない。ところが、新しい会社に出資した場合は、その会社が利益を出せば配当が得られ、将来上場して株式を公開すれば、出資者に額面の価格で割り当てられていたその会社の株が市場で高値で取引される可能性があり、大きな利益を得ることも期待できる。

 ただし新規ビジネスが成功する確率はそれほど高いわけではないので、出資した会社が結果を出せずに倒産することも少なからず起こり得る。そうなれば提供した資金は無駄になるので、リスクを極力避け、大きなリターンを得るため、出資者は出資を検討する案件に対し、相当細かく調べたり確認することになる。その際の判断材料になるのが事業計画書(ビジネスプラン)だ。投資家からの出資を得るという実利的な成否の鍵を握る重要な文書といえるだろう。

 事業計画書には、起業家の考えや思いを出資者にアピールするという目的があるが、そもそもこの文書自体がビジネスの設計図であり、この設計図に沿って今後事業を展開していくことになる。逆に考えれば、経営やベンチャービジネスに対して十分な知識や経験のある人間を納得させられるだけのビジネスプランが描ければ、その事業の成功の可能性は高いということにもなろう。

 起業で成功を収め、現在は投資家となっている人の本を何冊か読むと、持ち込まれるビジネスプランの多くは非現実的であったり、自分に都合のいい前提で計画が組まれているとある。事業を軌道に乗せるに至るまでの1つ1つのステップやアクションが、冷徹なまでに具体的に組まれていることが出資者からは要求されるということだ。

 自分に十分な手持ち資金がある、あるいは少人数で起業し、それほど初期費用は掛からないため出資者が必要ないという人であっても、ここで鈴井氏が学んだ物の見方や考え方を知っておくのは、事業を成功に導くために決してマイナスにならない。

◇◇◇

■他人に出資してもらうには

鈴井氏 わたしは出資を得るためにさまざまな方とお話をしました。出資者に会ったときに必ず聞かれるのは、「どのような会社にしたいか」という問いでした。自分で会社をつくる人には、「とにかくお金が欲しい」「自由な環境で自分の理念に沿って仕事をしたい」「規模を追求して大きな会社にしたい」「少数精鋭の小さな会社がいい」などさまざまな考え方があると思います。それぞれの目的に合った出資者を得るべきでしょう。自分の方向性と出資者の考えが一致するかが重要です。そのためには、自分の5年後、10年後をイメージする必要があります。

 わざわざ会社をつくるのですから、「自分が何をしたいか」については深掘りして考え抜かなくてはなりません。わたしの場合は、「自分が一番楽しかった仕事は何か」を考え直してみました。その結論は、「エンジニアとして新たな技術を仲間たちと協力して開発し、それをビジネスに結び付けてお客さまにも喜んでいただき、自分も報酬以上の満足を得る」ことでした。そんなビジネス環境を実現するために、局面によっては会社の成長より理念を選ぶべきであろうとさえ考えました。

 逆説的ですが、わたしは利益率が高い仕事というのは将来性の低い撤退市場にあると考えています。そのような市場では、巨額の投資が必要がないので利益率が高いのです。高い利益率が見込めるので短期的にはいいように見えますが、長期的にはエンジニアの技量が伸びずに自社より高度で進んだサービスを提供できる同業者にあっさり凌駕される危険性があるように思います。ですから、営利主義に走りすぎないように調整できる柔軟な会社運営がしたいと考えました。そうでないと会社として長期で黒字を出し続けるのは難しいと思ったからです。長期的なスパンで成長が見込めるビジネスを続けることで、社員たちに業界標準より高い収入を実現していけると思っています。

 会社の理念として、私が考えたのは次の3点でした。

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