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IT業界の開拓者たち

第57回 SPAMメールの帝王

脇英世
2009/5/7

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本連載を初めて読む人へ:先行き不透明な時代をITエンジニアとして生き抜くためには、何が必要なのでしょうか。それを学ぶ1つの手段として、わたしたちはIT業界で活躍してきた人々の偉業を知ることが有効だと考えます。本連載では、IT業界を切り開いた117人の先駆者たちの姿を紹介します。普段は触れる機会の少ないIT業界の歴史を知り、より誇りを持って仕事に取り組む一助としていただければ幸いです。(編集部)

本連載は、2002年 ソフトバンク パブリッシング(現ソフトバンク クリエイティブ)刊行の書籍『IT業界の開拓者たち』を、著者である脇英世氏の許可を得て転載しており、内容は当時のものです。

サンフォード・ウォーレス(Sanford Wallace)――
元サイバー・プロモーションズ会長

 サンフォード・ウォーレスは悪名高き男である。あだ名をスパムフォード・ウォーレス(SPAMford Wallace)といい、SPAMメールの帝王と呼ばれたこともある。この人物について語る前に、SPAMメールとは何かということを述べておこう。

 SPAMメールは、ジャンクメールもしくは迷惑商用電子メール(UCE:Unsolicited Commercial E-mail)ともいう。Unsolicited Commercial E-mailとは「頼みもしない商用電子メール」という意味だが、ここでは「迷惑商用電子メール」と訳した。頼みもしないのに勝手に送り付けられる、電子メールを悪用した広告のことである。

 それでは、なぜSPAMメールというのだろうか。SPAMとは、米ホーメル食品の登録商標である。SPAMはハムを缶詰にした製品のこと。米国では代表的な食品だ。日本のスーパーマーケットでも購入できる。わたしもスーパーでSPAMの缶詰を見て「ああ、これか」と思った。過去の実績が示すとおり、戦場では便利だが、あまり食欲を刺激する食品ではないかもしれない。

 SPAMが迷惑商用電子メールの代名詞となった経緯については諸説あるが、正確には英国のテレビコメディ番組である「モンティパイソン」の一場面に由来する。

 食堂にバイキングたちがいる。そこにある夫妻が入ってきて、食事を注文しようとする。ウエートレスはメニューの項目を説明する際にSPAMを交ぜていう。そこへバイキングたちが「SPAM、SPAM、SPAM」とはやし立てる。これを繰り返すうちにSPAM、SPAM、SPAM……とSPAMだらけになってしまう。

 このシーンを解釈するのは難しい。もともとモンティパイソンはナンセンスギャグの固まりで、論理的に解釈するものではない。SPAMが繰り返されると、ほかの会話が聞こえなくなってしまうのと同様に、ジャンクメールが殺到すると、通常のメールが届かなくなってしまう。そのため、ジャンクメールがSPAMメールと呼ばれるようになったというのが、ホーメル食品の解釈である。同社は次のようにコメントしている。

 「UCEを表現するために、このスラング用語を使用することに異議を唱えるものではないが、この用語に関連して製品イメージを使用することには異議を唱える」

 このことから、正式な法律用語では、SPAMメールでなく、UCE(Unsolicited Commercial E-mail)、またはUBE(Unsolicited Bulk E-mail)という用語を使用している。

 サンフォード・ウォーレスは1969年生まれであるが、それ以外の詳しい生い立ちは分からない。数ある裁判の記録も全部読んでみたが、出生の場所や、学歴について正式なことは明らかにならなかった。本人がいろいろなところで語っていることをつなぎ合わせるしかないのである。

 サンフォード・ウォーレスは風変わりな子どもであったという。両親は、自閉症ではないかと考えて、精神科医に連れていって相談した。すると、サンフォード・ウォーレスは自閉症ではなく、極めて知能指数の高い子どもであるという結果が出たそうだ。学力も優秀で8歳のとき、SAT(大学進学適性試験)の数学の試験で800点を取ったと本人は語っている。つまり、自分は天才や神童であったといいたいのであろう。現在も、カリスマといわれたいらしい。

 単科大学に入学したサンフォード・ウォーレスは、ありきたりの立身出世の道は歩むまいと決意した。わが道を行くことに決めたのである。わが道を行くとは、単科大学の宿題は一切やらず、その代わりにビジネスとコンピュータのことだけを考えることにしたのである。実際には、コンピュータ学校に行って、コンピュータの初歩を学んだ。

 当時、サンフォード・ウォーレスはドミノピザでアルバイトを始めた。ドミノピザではピザの宅配をやり、しこたま稼いだという。あまりにうまくいったので、サンフォード・ウォーレスは考えた。ピザの宅配がこれほどもうかるのであれば、レストランだって宅配をやればもうかるに違いない。そこで、ニュージャージーでレストランの宅配サービスを始め、さらにパンケーキの宅配サービスに従事した。

 レストランの仕事をより成功させるために、サンフォード・ウォーレスは、さらに考えた。そして、宅配サービスを利用すると思われる場所へ、毎日のスペシャル料理のメニューをファクスするプログラムを書けばよいのではないかと思い当たった。米国の電話料金は安価で、ファックス料金は安いうえに、用紙代は顧客持ちであるから、これは安上がりであった。結果的にレストランは大成功を収めた。レストランが成功すると、サンフォード・ウォーレスはレストランを売却し、ジャンクファックスを扱うビジネスへと移った。

本連載は、2002年 ソフトバンク パブリッシング(現ソフトバンク クリエイティブ)刊行の書籍『IT業界の開拓者たち』を、著者である脇英世氏の許可を得て転載しており、内容は当時のものです。

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