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国際競争時代に突入するITエンジニアに生き残り策はあるか?
日本人ITエンジニアはいなくなる?

第20回 日本人は異端? 海外で活躍できる条件とは

小平達也
2006/12/27

ITエンジニアの競争相手が海の向こうからやってくる。インド、中国、それに続くアジア各国。そこに住むエンジニアたちが日本人エンジニアの競争相手だ。彼らとの競争において、日本人エンジニアはどのような道を進めばいいのか。日本だけでなく、東アジア全体の人材ビジネスに携わる筆者に、エンジニアを取り巻く国際情勢を語ってもらった

連載3年目を迎えて

 先日、ある企業でITエンジニアをしている知人からメールをもらった。

 「実はこのたび、自分の仕事がインドへアウトソースされてしまうことになりました。今月で解雇・退職です。まさか自分がこのような体験をするとは思っていませんでした……」

 実話である。「いざなぎ越え」といわれ、成長を続ける日本経済であるが、特に業績の良い企業ほど、北米や新興国といった海外市場における売り上げ増により、その企業の存在感が増している。ただし個別の社員が企業の好業績の恩恵をどこまで受けられているかという点については別問題のようだ。かつては「社員の貢献→企業の業績向上→社員への還元(給与、ポジション)」という、企業とそこで働く個人を連結する成功サイクルがあったが、これからはこの成功サイクルに入る層(企業の中核的業務を担う人材)とそのほかの層(外注などで代替が可能となる人材)がより明白になってくるだろう。

 この変化に対応していくためには、個人の高付加価値化を推し進めていく必要がある。そのようなテーマで2003年11月より本連載を続けてきたが、今回で連載3年目、20回を迎えることができた。われわれのように変化の激しい業界に身を置いていると日々のニュースなど、個別の情報はすぐ陳腐化してしまうものである。しかし本連載ではできる限り、読者の皆さんにキャリアの方向性を模索・再確認する「きっかけづくり」を提供したいと思っている。引き続きお付き合いいただければ幸いである。

2つの軸でベトナムを見る

大学の図書館で学ぶベトナムの学生

 さて、冒頭にあったようなアウトソースに関して、ソフトウェアのオフショア開発について日本から見てみよう。中国は最大の委託先であり、2005年に332億円(『2005年コンピュータソフトウェア分野における海外取引および外国人就労等に関する実態調査』JISA、JEITA、JPSA)という実績があるが、昨今、ベトナムにもIT業界の注目が集まっている。APEC首脳会議が開催された先月、筆者はベトナムを訪問していた。企業のトップによる視察はもちろん、すでに個別の案件ベースでも商談が進行しており、常駐している日本人のITエンジニアも増えている。

 これから出張、常駐などでベトナムビジネスに触れる機会のある読者もいると思うが、ベトナムビジネスを理解する際には、次の2つの軸でとらえると理解しやすいであろう。まず1つは、南北でそれぞれ異なる地政学的な「地域軸」。そしてもう1つは、今年ベトナムはWTO加盟が承認されたが、このWTO加盟承認の前と後という「時間軸」だ。

南北の「地域軸」でとらえる
  ベトナムは日本と同じく南北縦長に広がる国である。北方の拠点となる首都のハノイに進出する日系企業は「中国ビジネス」の一環としてベトナムビジネスをとらえている。陸路で中国に接する北部では「ベトナムで作った部品を中国で組み立て」ということができるからである。中国ビジネスとの連結度合いが高いので、駐在する日本人社員も「以前は中国に駐在していていまはベトナム」という方も多い。

 一方、南方の代表的都市であるホーチミンはベトナムを代表する経済都市である。ホーチミンはASEAN諸国の中心的な場所に位置している。ここからハノイに行くよりもタイなどASEAN諸国の各都市の方が近いという地政学的特徴から、進出している企業もASEAN全体でのビジネス最適化を考えているケースが多い。ホーチミンを東南アジア全体のビジネスの拠点にしようと準備している某米系IT企業もある。

 以上のように南北それぞれで特徴があるが、進出している外資系企業は「人口8000万人」のベトナム市場だけでなく、中国・東南アジア諸国を見据えたうえで戦略的布陣をしているということだろう。

WTO加盟承認前・後、という「時間軸」でとらえる
  上記のような南北地域軸に加え、WTO加盟の前後でもビジネス上、人材戦略上大きな変化が起こっている。中国の場合を例に取ろう。2001年にWTO加盟を果たしたが、その前は日系企業などの外資系企業は生産拠点として中国をとらえており、人事上の課題も「いかにワーカーなど、タスク処理型の人材を管理するか」であった。一方で、WTO加盟承認後は中国を市場としてとらえ、人事課題もマーケット型(自律型)人材活用やマネジメント教育、評価、幹部登用というものになってきている。現在のベトナムはまさに、人材戦略も「タスク処理型人材の管理」から「マーケット型人材の獲得と活用」に軸足を移しつつあるのだ。

 2つの軸でベトナムをとらえ、自身の事業がどこに位置するかをビジネスの前提として把握していると、今後の実務においても取り組みやすいだろう。

 アジア全体と同様、ベトナムにおけるITエンジニアの教育に関してインドのIT教育機関の存在感も目立ってきている。このような中、筆者は人材サービスを通じて企業のグローバル展開を支援するという立場から、ベトナム人ITエンジニアに対する面接や企業での活用に関する個別ヒアリングなどを行っている。ベトナム人ITエンジニアの特徴について一言でいうと「日本人との親和性が非常に高い」ということだろう。

 ベトナム戦争が終わってまだ30年だが、国民の65%が35歳以下という若者の国であり、大学も80校程度と、技術的にはこれから打ち立てていく国だろう。だが、ベトナム人ITエンジニアを活用している企業からはその人柄、姿勢などに対する評価は高い。日本人が苦手な「自己主張」はベトナム人も同様に苦手であるなど、日本人に近いものがあり多くの日本人が共感している部分である。

   

今回のインデックス
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 日本人ITエンジニアはいなくなる?(20) (2ページ)

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