第4回 すぐ直すから、報告しなくてもいいよね?
ナレッジエックス 中越智哉
2007/6/6
■しんじ君、大変なことを思い出す
しんじ君 | ああーっ! 昨日作りかけだったモジュール! |
そうです。今日の朝対応するつもりで日報に書かなかったモジュールの修正が、テストの作業のためにまったく手付かずになっています。しんじ君はいてもたってもいられず、その足で会社に戻ってみましたが……。
鮫島さん | しんじ君、あのモジュール! 動かなくなってたぞ! あれが動かないとほかのモジュールもほとんど動かないじゃないか! |
しんじ君 | は、はい、すみません……。 |
鮫島さん | まぁ、こっちで直しておいたけどね。気を付けてよ。 |
しんじ君 | はい……。 |
しんじ君の修正したモジュールは、しんじ君はまったく気付いていなかったのですが、実はいろいろなコードから利用されている影響範囲の大きいものでした。モジュールそのものは小さなコードだったため、鮫島さんにとってはそれほど難しい修正ではなかったことが不幸中の幸いだったようです。
■重要度を自分で判断してはいけない
とはいえ、しんじ君はちょっと落胆気味で席に戻りました。そこへちょうど面田さんが通りかかります。
面田さん | しんじ君、今日は大変だったね。お疲れさま。 |
しんじ君 | あ、はい、ありがとうございます。でも……。 |
面田さん | また失敗しちゃったかな? |
しんじ君 | え、どうして分かるんですか? |
面田さん | 鮫島さんの声が聞こえてたからね。あと、私は日報を見てるから。 |
しんじ君 | ……。やはり日報にこのことを書いておけばよかったんでしょうか……。 |
面田さん | そうだね。しんじ君は、そのモジュールの変更はあまり重要ではないと思っていたんだよね。 |
しんじ君 | はい……。コードの量もあまり多くないので、そう思っていました。 |
面田さん | なるほど。重要ではないと思っていた事項が、実際には重要だったんだね。 |
しんじ君 | そうです、それなのに自分で判断してしまいました……。 |
面田さん | そうだね、プロジェクトメンバーの立場から見るとそれほど重要ではない事項が、プロジェクト全体を管理する立場から見ると、とても重要だったりすることもあるんだよ。 |
しんじ君 | はい。 |
面田さん | だから報告事項の重要度を、勝手に判断してしまうのは危険なんだ。 |
しんじ君 | 分かりました、これからは自分で簡単に決めてしまわないで、きちんと報告するようにします! |
これまでは何となく、習慣として日報を提出しているようなところがあったしんじ君。面田さんの説明に納得し、日報の重要性を理解できたため、今日からはきちんとした内容で書くことができそうです。
「すぐに直すから報告しなくていいやと思ったんだけど、結局できなくて迷惑をかけちゃった。修正途中だってことを日報に書いていれば、麻根さんか面田さんが気付いてくれたのに……。
今日からは自分で何となく決めてしまわずに、報告すべきことをきちんと報告して、みんなに状況を分かってもらうようにしよう」。しんじ君は張り切って日報を作り始めるのでした。
「えーと、今日の作業は、まず……」
今回のインデックス |
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筆者プロフィール |
中越智哉●北海道出身。北海道大学大学院電子情報工学専攻修士課程修了。在学中はJavaとLinuxに熱中。卒業後、Javaの仕事にあこがれ、1999年にテンアートニに入社。Java の受託開発案件や教育事業、コンサルティングなどを幅広く担当した後、2006年2月に同社を退社。同年3月にナレッジエックスを設立。 JavaをはじめとするIT開発技術の教育に奔走する。趣味は自転車と草野球、そして毎日欠かさない耳かき。 |
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