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新人しんじ君、IT業界へ

新人しんじ君、IT業界へ

第4回 すぐ直すから、報告しなくてもいいよね?

ナレッジエックス 中越智哉
2007/6/6

この春に大学を卒業し、ある中堅SI企業に就職した中山しんじ君。初めての経験にとまどいつつ、周囲のサポートを受けながら、社会人としてもITエンジニアとしても成長していきます。皆さんもしんじ君と一緒に歩んでみませんか。

 中堅システム開発企業に新卒で入社したばかりのしんじ君。学生と社会人の常識の違いに戸惑いながらも、日々新しいことを学んでいるようです(第1回「『分からないんで教えてください』はいけないの?」、第2回「初めてのお客さま訪問で遅刻しちゃった!」、第3回「お客さまへのメール、こんな感じじゃダメですか?」)。


  エピソード4 会社への報告は、こんなに重要

しんじ君、修正中のモジュールの扱いに迷う

 しんじ君の会社、アットイットシステム社では、新入社員は直属の上司に電子メールで日報を送るルールになっています。しんじ君の場合は、所属するプロジェクトのマネージャの麻根さんに送り、メンターの面田さんにCcで知らせています。

 そんなある日のこと、そろそろ帰ろうと思ったしんじ君は、いつものように日報を作成していました。その日行った作業内容を書いていきます。

 しんじ君は1週間ほど前から、ある機能の実装を任されていました。今日は作業がはかどったしんじ君。報告する内容も必然的に多くなります。ですが途中まで書いて、しんじ君はちょっと迷っています。

しんじ君 今日は報告する内容が多いなぁ。ちょっと細かく書きすぎてるかも。

 作業がおおむねはかどったとはいうものの、夕方を過ぎてから着手したあるモジュールについては修正途中でした。ですが、しんじ君はうっかりそのソースコードをバージョン管理システムにコミットしてしまいました()。

ITシステム開発では、バージョン管理ツールというソフトウェアを使って、分担して開発しているモジュールを一括管理することがよくあります。ここでいうコミットとは、自分の手元で作成したり修正したりした内容を、バージョン管理ツールの管理下に登録する作業のことを指しています。

しんじ君 あのモジュール、まだ直っていないんだけど、やっぱり報告した方がいいかな? 明日の朝イチで直せば大丈夫だと思うんだけど……。

 迷ったしんじ君ですが、そのモジュールの状況は特に日報に書かずに、次の日の朝一番で修正して対応することに決めました。

 その夜のことです。家で夕食を済ませ、くつろいでいるしんじ君の携帯電話に、会社から電話がかかってきました。退社後に会社から電話が来るのは初めてなので、しんじ君はちょっと緊張して電話を取りました。


しんじ君 は、はい、中山です。
麻根主任 もしもし、麻根ですが。終業後に悪いね。
しんじ君 あ、いえ。何かあったのですか?
麻根主任 うん、実はほかのプロジェクトなんだけど、ちょっとトラブルになっていてね。お客さまのところでテストをしないといけないんだけど、人が足りないらしいんだ。
しんじ君 そうなんですか、それで、私がそれをお手伝いするということですか?
麻根主任 察しがいいね、そうなんだ。だから申し訳ないんだけど、いまの作業は中断していいから、明日はそのプロジェクトのお客さまのところに直行してほしいんだ。
しんじ君 はい、分かりました。で、そのお客さまの場所はどちらですか?
麻根主任 うん、場所は……。

 そんなわけで、明日は別のお客さまの会社へ直行することになったしんじ君。急な展開に少々動揺してしまい、先ほど書いた日報のことはすっかり忘れてしまいました。

しんじ君 そういえば研修のときに、「連絡は確実に伝達される手段を選ぶ」って習ったなぁ。こういうときは、メールだと見ていない可能性があるから、麻根主任は電話で連絡してくれたんだ。

テスト、テスト、テスト

 翌日、しんじ君は指示されたお客さまの会社へ向かい、1日中ひたすらテストを行うことになりました。

 しんじ君はプロジェクトの当事者ではない分、多少気持ちの面では楽でしたが、やはりお客さまのそばでテストをするという状況は、かなりの緊張を強いられるものです。

 このテストのために招集されたメンバーの中には、若尾さんをはじめ何人かの新入社員も含まれていました。考えてみると、同期と同じプロジェクトの仕事をするのは初めてです。

しんじ君 若尾さんも呼ばれてたんだ。
若尾さん うん、しんじ君も来てたんだね。一緒に仕事するのって初めてじゃない?
しんじ君 そうだよね。でも僕テストってあんまり得意じゃないんだよね。
若尾さん そう? 私はテスト結構好きだけどな。作ったシステムを動かしてみるのって、ワクワクしない?
しんじ君 そういうものかなぁ〜。なんか、僕はバグが見つかるのが怖くて。
若尾さん 大丈夫よ、直すのはテストした本人じゃないんだし。
しんじ君 いや、そういう問題じゃないと思うんだけど……。

 そうこうしながらも、招集メンバーはひたすらテストを行いました。そして夕方を過ぎたあたりでほぼひと通りのテストが終わり、不具合も相当数発見されました。ですが不具合の全容がほぼ判明したことで、何とか納期までに対応できるめどが立ったようでした。

プロジェクト
マネージャ
しんじ君、今日はありがとう。あとはこっちで不具合の対応をするよ。残りのテストはいまいるメンバーだけでもカバーできそうだから、今日はもう帰っていいよ。
しんじ君 はい。お先に失礼します……。

 テストのために招集されたメンバーは、何とかその日のうちに帰れることになりました。プロジェクトのメンバーは引き続き不具合対応の作業を行っています。しんじ君は何となく後ろ髪を引かれるような思いでしたが、いまのしんじ君のスキルでは、初めて見たコードをいきなり直すのは難しいのです。

しんじ君 ふう、何とか僕も役に立てたみたいでよかった……。うちの会社にも、大変なプロジェクトがあるんだなぁ。

 日が暮れてもまだ緊張感の充満しているオフィスを後にして、しんじ君はほっと一息つきました。そして同時に、大変なことを思い出したのです。

 

今回のインデックス
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