第5回 「私も分かんないんだよね」っていわれても!
ナレッジエックス 中越智哉
2007/6/21
■面田さんまで! 意外なひと言
昼食から戻ったしんじ君、やはり何だかすっきりしないので、面田さんにも聞いてみることにしました。
しんじ君 | 面田さん。ちょっとよろしいですか。 |
面田さん | どうしたんだい? 新しいプロジェクトで、何か困ったことでもあったのかな。 |
しんじ君 | (いつもながら鋭いなと感心しつつ)はい。実はそうなんです。 |
しんじ君は、新しいプロジェクトでの出来事を面田さんに話し、プロジェクトの資料も見せてみました。
面田さん | なるほど。確かにこれは鮫島さんも経験したことがない内容かもしれないな……。 |
しんじ君 | やっぱり、そうなんですか。 |
面田さん | うん。と、いうより……。 |
しんじ君 | はい。 |
面田さん | これは、うちの会社で誰もやったことがない内容かもしれない……。 |
しんじ君 | え……。 |
■流れの速いIT業界では
しんじ君は戸惑いつつも、あれこれ調べながら、鮫島さんと一緒に作業を進めていきました。
いつの間にか夕方になり、夜になり、オフィスに人が少なくなってきました。そのころには何とか作業が進み始め、やるべき内容も見えてきました。
ひと区切りがつき、そろそろ帰り支度をしようかと思っていたしんじ君のところに、上野部長が通りかかります。
上野部長 | やあしんじ君、どうかね、仕事の調子は? |
しんじ君 | はい、お疲れさまです。いまは結構苦労していまして……。 |
上野部長 | つらいのかな? 新しいプロジェクトは。 |
しんじ君 | はい、かなり大変なんですが……。でも、やりがいはすごくあります。 |
上野部長 | そうか、それならよかった。実はね、君をこのプロジェクトに入れるように指示したのは私なんだ。 |
しんじ君 | えっ、そうなんですか。どうして、上野部長は私みたいな経験のない社員を選ばれたのですか。 |
上野部長 | うん、確かに麻根君もちょっと君には荷が重過ぎるのじゃないかと心配していたよ。 |
しんじ君 | (心の中で)麻根主任は、僕のことをよく知っているからなぁ。 |
上野部長 | しかし、ここは新しい技術が次々と出てくる、そういう業界だ。 |
しんじ君 | 確かに、Webサイトや雑誌なんかを見ていると、毎日のように新しい技術が出てきているように思えますね。 |
上野部長 | そう。だからITエンジニアなら誰にだって未知の分野に挑まないといけない可能性があるわけだ。 |
しんじ君 | たとえ新入社員でも……。 |
上野部長 | そのとおり。学生時代のように、習ったことしか試験に出ないというようにはいかないのが社会というものだよ。 |
しんじ君 | はい。 |
上野部長 | まあ、君はさしずめ谷底に突き落とされたライオンの子どもというところだな。 |
しんじ君 | ……はあ。 |
上野部長 | 知っているだろう、ライオンは自分の子どもを谷底に突き落として試練を与えるというじゃないか。ま、そういうことだから、頑張りなさい、ハハハ。 |
そういうと、上野部長は去っていきました。
上野部長の話を聞き、IT業界の社会人としての姿勢について理解することができたしんじ君。心の中のもやもやはすっかり消えてなくなったようです。上野部長の言葉に、自分に対する期待を感じることができたためもあるかもしれません。
「社会に出たら、誰もやったことのない仕事に挑まないといけないなんていうこともあるのか。IT業界は特に流れの速い業界だから、そういう業務を担当する可能性も高そうだなぁ。いつも新しい技術動向なんかをチェックしたり、勉強したりしないといけないっていうことか。大変だけど、やりがいもありそうだ。よーし、明日からも頑張ろう!」と、決意を新たにするしんじ君でした。
今回のインデックス |
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筆者プロフィール |
中越智哉●北海道出身。北海道大学大学院電子情報工学専攻修士課程修了。在学中はJavaとLinuxに熱中。卒業後、Javaの仕事にあこがれ、1999年にテンアートニに入社。Java の受託開発案件や教育事業、コンサルティングなどを幅広く担当した後、2006年2月に同社を退社。同年3月にナレッジエックスを設立。 JavaをはじめとするIT開発技術の教育に奔走する。趣味は自転車と草野球、そして毎日欠かさない耳かき。 |
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