第5回 「私も分かんないんだよね」っていわれても!
ナレッジエックス 中越智哉
2007/6/21
この春に大学を卒業し、ある中堅SI企業に就職した中山しんじ君。初めての経験にとまどいつつ、周囲のサポートを受けながら、社会人としてもITエンジニアとしても成長していきます。皆さんもしんじ君と一緒に歩んでみませんか。 |
しんじ君がアットイットシステム社に入社してから2カ月以上がたち、現場に配属されて最初に参画した開発プロジェクトも、先週末、無事に納品を迎えました。
しんじ君は途中からの参画でしたが、初めてのプロジェクトで、いくつかの失敗をしながらもここまで来られたことに達成感を覚えていました。そのほかのメンバーも、ほっとひと息という雰囲気です。
しんじ君のこれまでの失敗と学びは…… 新人しんじ君、IT業界へ 第1回 「分からないんで教えてください」はいけないの? 第2回 初めてのお客さま訪問で遅刻しちゃった! 第3回 お客さまへのメール、こんな感じじゃダメですか? 第4回 すぐ直すから、報告しなくてもいいよね? |
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■新しいプロジェクトのメンバーは2人?
多くの場合、開発プロジェクトは案件が終了するといったん解散となり、メンバーはまた別のプロジェクトに参画することになります。
しんじ君も麻根主任に、次のプロジェクトについて聞かされているようですよ。
麻根主任 | しんじ君、ちょっといいかな。 |
しんじ君 | はい、何でしょうか。 |
麻根主任 | 前のプロジェクトではご苦労さまだったね。よくやってくれて助かったよ。 |
しんじ君 | あ、ありがとうございます。ご迷惑をお掛けすることも多かったですが……。 |
麻根主任 | まぁ、あのくらいのミスは新人ならよくあることだから、いい経験と思ってこれからも頑張りなさい。 |
しんじ君 | はい。それで……お話は何でしょうか。 |
麻根主任 | ああそうだった、それで本題なんだが。 |
しんじ君 | はい。 |
麻根主任 | 次のプロジェクトなんだけど、鮫島君としんじ君の2人でやってほしいんだ。 |
しんじ君 | 2人ですか。2人のうちの1人が新入社員の私で大丈夫ですか。 |
麻根主任 | 大丈夫、そんなに大きい規模の案件じゃないから、2人でも十分できるよ。マネージャは私がやるから、一応プロジェクト全体では3人だけど、実質的な作業は2人で担当してもらうよ。 |
しんじ君 | はい。頑張ります。 |
しんじ君は少々不安でしたが、麻根主任が大丈夫というからには、自分でも対応できる内容なのかもしれないと思い直しました。さらに、前のプロジェクトで一緒だった鮫島さんがいることにも頼もしさを感じます。
しんじ君 | 鮫島さんはちょっと苦手なタイプだけど、仕事はすごくきっちりしているから、その面では安心だなぁ。 |
■頼りの鮫島さん、意外なひと言
そして翌日、さっそくしんじ君に仕事が与えられました。張り切って取り掛かったものの、まだまだ経験の少ないしんじ君、分からないことだらけです。手の付けられそうなところから作業を始めましたが、お昼近くにはどうにも作業が進まなくなってしまいました。
しんじ君 | う〜ん。もうこれ以上はどうすればいいのか分からないや。といって、このまま悩んでいても時間が過ぎるばかりだし……。2人のプロジェクトで1人の作業が止まったら影響が大きいし、鮫島さんに聞いてみよう。 |
しんじ君は鮫島さんの席へ行き、質問してみました。
しんじ君 | 鮫島さん。いま、よろしいですか。 |
鮫島さん | ああ、大丈夫だけど、どうかした? |
しんじ君 | はい、いまやっている作業のこの部分なんですけど、書いてあることがさっぱり分からなくて……。 |
鮫島さん | どれどれ、あ〜、これね……。 |
しんじ君 | (心の中で)さすが鮫島さん、全部分かってるんだなあ。 |
鮫島さん | ……これさあ。 |
しんじ君 | はい。 |
鮫島さん | 私も分かんないんだよね、こういう構成とかライブラリとかフレームワークとか、どれも使ったことないし。 |
しんじ君 | えっ、鮫島さんでも分からないんですか! |
困ったしんじ君、必死に調べながら何とか作業を進めようとしましたが、やはりほとんどはかどらないまま、昼休みの時間になってしまいました。
エレベーターで偶然一緒になった若尾さんと昼食に行ったしんじ君は、このことを話してみました。
しんじ君 | ……というわけなんだ。 |
若尾さん | へぇ〜、そうなんだ。でも、本当に鮫島さんってその内容について知らなかったのかな? |
しんじ君 | え、どういうこと? |
若尾さん | だって、しんじ君より何年も先輩でしょう、鮫島さんって。それなのに知らないなんてことあると思う? 2人しかいないプロジェクトで、鮫島さんが分からなかったら、ほかに聞ける人がいないじゃない。 |
しんじ君 | まあ、そうだけど……。 |
若尾さん | しんじ君は期待されてるから、鮫島さんは知ってるけどわざと教えないのかも。麻根主任が鮫島さんにそう指示していたりして。 |
しんじ君 | そうなのかなあ? |
若尾さん | きっと、しんじ君は谷底に突き落とされたライオンの子どもなんだよ。 |
しんじ君 | ライオンの子ども? |
若尾さん | ほら、ライオンは自分の子どもを谷底に突き落として試練を与えるっていうじゃない。 |
しんじ君 | ……う〜ん。それが本当なら、光栄なことではあるけど。 |
今回のインデックス |
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