第4回 新人あら太君、パートナーさんへの指示は難しい！
ナレッジエックス 中越智哉
2008/8/6
■鳩名さんの進ちょくは？
翌日の朝から、あら太君の指示で、鳩名さんはテストを開始しました。一方のあら太君は、しんじ君の指示で、設計ドキュメントの修正を始めました。
あっという間に時間が過ぎ、終業時刻が近づいてきました。しんじ君はあら太君に、鳩名さんの様子を確かめるように指示を出しました。
| しんじ君 | あら太君、鳩名さんの作業はどうなってるのかな？ |
| あら太君 | あ、確認してませんでした。聞いてきます！ |
あら太君は鳩名さんのテストの結果を確認しに行きました。
| あら太君 | 鳩名さん、ちょっとよろしいですか。 |
| 鳩名さん | はい、何でしょうか。 |
| あら太君 | テストの様子はどうでしょう？ |
| 鳩名さん | はい。3分の1くらいはテストが通ったのですが、残りの3分の2はテストが実施できない状態でした。 |
| あら太君 | そうですか。分かりました。 |
あら太君はこの結果をしんじ君に報告しました。
| あら太君 | ……ということだそうです。 |
| しんじ君 | そうか。でも、テストの項目数はそれほど多くはないよね。1回のテスト実施に、そんなに時間がかかるものかなあ？ |
| あら太君 | 確かに……そうですよね。 |
| しんじ君 | あら太君、鳩名さんに、テストを実施し終わったらどうするか、指示したかい？ |
| あら太君 | あ、いえ、別に……。 |
| しんじ君 | なるほど。とすると、鳩名さんはテストの後、別の作業に移っているかもしれないね。 |
| あら太君 | そうなんですか。 |
| しんじ君 | 鳩名さんにはほかのプロジェクトからも作業をお願いしているらしいから、そっちの作業と並行してやっているかもしれないな。まあ、作業の区切りで報告してくれないのも問題だけど、彼も新人だしね。 |
■自分が誰かに指示をするときは、全体の進め方を伝えよう
あら太君は、鳩名さんに数回に分けてテストを依頼し、不具合のある個所が判明したものから対応に取り掛かるつもりでした。
自分が依頼した分のテストが終わったら、鳩名さんが報告してくれるものと思い込んでいたのです。そして安心して、設計ドキュメントの修正に没頭していました。
| あら太君 | そうか、今日の分のテストを依頼しただけで安心しちゃってました。先輩、どうしたらいいんでしょうか。 |
| しんじ君 | テストがひと通り実施できたら、NG個所を修正して、再テストを実施することになるよね。 |
| あら太君 | はい。 |
| しんじ君 | NG個所の修正は、あら太君がするんだよね。 |
| あら太君 | はい、そうです。 |
| しんじ君 | じゃあ、そういうふうに鳩名さんに依頼してくるといいよ。 |
| あら太君 | はい。……全体の進め方とか、1つの作業が終わったらどうしてほしいかを、きちんと伝えないといけないですね。依頼した分のテストが終わったら、不具合個所を含めて報告してもらい、私は次のテストの依頼をする。私が不具合を修正し終わったら、鳩名さんに報告し、再テストをしてもらう。そんなふうに進めたいと思います。鳩名さんにお願いしてきますね！ |
あら太君はしんじ君のアドバイスを得て、鳩名さんに再度、作業依頼を行いました。
| あら太君 | ……と、こういう感じで進めたいのですが。 |
| 鳩名さん | そうでしたか、すいません。もう1つのプロジェクトの方は、定期的に進ちょくを確認しに来られるので、坂上さんもそうなのかと思っていました。テストがひと通り終わったので、そちらの作業を並行して行っていたんです。 |
| あら太君 | いえ、こちらの指示があいまいだったのもいけないので。ではそういうことでお願いします。 |
| 鳩名さん | はい。 |
翌日からあら太君と鳩名さんは、頻繁に報告をし合いながら作業を進め、無事にテスト工程の作業を完了させることができました。
何とか遅れを取り返そうと、しんじ君とあら太君はその夜と翌日の1日いっぱい、ひたすら作業に没頭しました。その甲斐もあって、ぎりぎりで納期に間に合わせることができました。
| あら太君 | 先輩のアドバイスのおかげで、仕事の進め方が少し分かった気がします！ ありがとうございます。 |
| しんじ君 | いやいや、あら太君も、設計書の修正と実装の修正を並行してうまくこなせていたよね。良くできたね。 |
| あら太君 | いえ、そんな。あ、そうだ先輩、会社の近くに新しい居酒屋がオープンしたの知ってます？ |
| しんじ君 | え、そうなんだ？ |
| あら太君 | 先輩の帰るルートとは反対なんですが、いま開店記念キャンペーンでドリンクが半額なんですよ。 |
| しんじ君 | へえ〜、それはすごい。 |
| あら太君 | ですよね？ この後、一緒に行きませんか。 |
| しんじ君 | よし、そうしよう！ |
2人は意気揚々と、新規開店の居酒屋へ向かったのでした。
 |
| 今回のインデックス |
| パートナーさんがやってきた。あら太君、ちゃんと指示できる？ |
| あら太君、パートナー鳩名さんの進ちょくを確認。すると…… |
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| 筆者プロフィール |
| 中越智哉●北海道出身。北海道大学大学院電子情報工学専攻修士課程修了。在学中はJavaとLinuxに熱中。卒業後、Javaの仕事にあこがれ、1999年にテンアートニ（現・サイオステクノロジー）に入社。Java の受託開発案件や教育事業、コンサルティングなどを幅広く担当した後、2006年2月に同社を退社。同年3月にナレッジエックスを設立。 JavaをはじめとするIT開発技術の教育に奔走する。趣味は自転車と草野球、そして毎日欠かさない耳かき。 |
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