第1回 成果を出せる人は、まず自分から変わる
樋口研究室
飯田佳子
2008/10/17
過酷な環境にさらされながら、常にコンピュータ並みの正確さを要求されるITエンジニアたち。メンタルヘルスをうまくコントロールするには? 樋口研究室の「ITコーチ」たちが、現場でいますぐ使えるメンタルヘルス改善のワザを教えます。 |
私の職業はSE(システムエンジニア)です。樋口研究室でITコーチングの勉強をし、自社内ではメンター(相談役)も務めています。だから社内で「飯田コーチ」と呼ばれることがあります。
たくさんのITエンジニアの相談を受けていると、「成功したい」と思っている人の中にも、結果を出せる人と出せない人がいると感じます。思いは同じなのに、いったい何が違うのでしょうか。
今回は、結果を出せる人、思いを達成できる人の心の動きや行動力について考えてみたいと思います。
■成果を出したAさん、出せないBさん
先日、AさんとBさん、2人のITエンジニアがやってきました。2人ともそろそろ中堅社員なので、自分で仕事の目標を決めて実践しなさい、そう上司からいわれています。でも2人は、指示された作業しかしたことがありません。突然、目標を決めろといわれても戸惑うばかり。どうしたらいいのか、私に相談しにきたのです。
Aさんは、新しい仕事にチャレンジしたいと思っています。でも何をすればいいのか分かりません。Bさんは、仕事の生産性を上げたいと思っています。でも何をしたらいいのか分かりません。どちらも「現状を打開したい」という気持ちは一緒です。
私は、しばらくAさんとBさんにアドバイスを続けました。その結果、Aさんは成果が出たと思います。でもBさんはなかなか成果が出ません。なぜなのでしょうか。
■新しいことにチャレンジしたいAさん
まずAさんの様子を見てみましょう。
Aさんの仕事は、ほぼ手順の決まっているシステム運用です。Aさんには、とにかく最新の技術を知りたいという強い思いがありました。でも仕事の現場は、最新技術とはほとんど関連しません。
私はAさんに、独学で技術の勉強ができるかどうかを尋ねてみました。Aさんは、仕事に手間がかかって時間が取れないといいます。トラブルが起こると、Aさんはチーム内のほかのITエンジニアをサポートしないといけないそうです。もう少し自分で考えて動いてくれたらいいのに。Aさんはチームのみんなに対して、そんなふうに思っています。
何か、Aさんの代わりをしてくれるものはないかなと私は思いました。意見を聞いてみると、Aさんは、自分の経験をマニュアルにまとめておくといいと思っていました。でもAさんは、本当にそのマニュアルがチームの役に立つのだろうか、みんなは使ってくれるだろうかという不安も持っていました。
そのとき私は、マニュアルをチームのみんなで作るのはどうだろうと思いました。みんなで作れば共有の資産になり、使われるかもしれないと思ったのです。そこでAさんに、週に1回、チームでトラブル分析会議をしながらマニュアルを作ったらどうかとアドバイスしました。これにはAさんも納得してくれました。
その後Aさんは分析会議をスタートし、その議事録を基にマニュアルを作りました。チームのみんなからは、マニュアルに従えばトラブルを短い時間で解決できるという意見が多かったそうです。
しばらくすると、Aさんへのサポート依頼数が減ってきました。Aさんのスケジュールにもゆとりができ、新しいことに取り組む余地が出てきたようでした。
■新しいことが見つかった
余裕ができたAさんは、今度は最新技術をチームで勉強できないかと考えるようになりました。そこで私は、社内で勉強会がないか調べ、候補となるものをAさんに勧めてみました。Aさんは仕事を調整しながら、勉強会で発表もするようになりました。
こういったAさんの活動を見ていた上司から、マニュアルを品質向上サークルの場で発表してほしいという提案がありました。Aさんはこれも引き受けました。
分析会議、マニュアル作成、勉強会、発表、品質向上。Aさんにとっては、システム運用の仕事とは違う、新しい出来事ばかり。Aさんは、希望どおりの新しいことが見つかったと喜んでいます。
成果を出したAさん。一方、「生産性を上げたい」Bさんは…… |
@IT自分戦略研究所の関連記事
ITエンジニアを襲う「新しいうつ」の正体とは?
連載:ITアーキテクトが見た、現場のメンタルヘルス
連載:ITエンジニアにも重要な心の健康
まじめな人ほどかかりやすい心の病
「ITエンジニア不健康伝説」は本当か
@IT自分戦略研究所は2014年2月、@ITのフォーラムになりました。
現在ご覧いただいている記事は、既掲載記事をアーカイブ化したものです。新着記事は、 新しくなったトップページよりご覧ください。
これからも、@IT自分戦略研究所をよろしくお願いいたします。