第1回 成果を出せる人は、まず自分から変わる
樋口研究室
飯田佳子
2008/10/17
■生産性を上げたいBさん
さて、Bさんの様子です。
Bさんは、生産性の向上を目指しています。いろいろとお話をしましたが、なかなかいい方法が見つかりません。私もずいぶんと悩みましたが、Bさんと会話していて、1つ分かったことがありました。
Bさんの仕事は、ほかの社員からは品質が高いと評判なのです。Bさんの仕事のやり方に問題はなさそうです。それでもBさんは、もっと生産性を上げたいという気持ちを持っています。
いったいどういうものが、Bさんの考える生産性向上なんだろう? 私にはそういう思いが出てきました。昇進したいの? 給料を上げたいの? 論文を書きたいの? そういうことです。そこで私はBさんに、いま一番不満に思っていることは何かを尋ねてみました。
するとBさんは、まず仕事の配分が不公平だといいます。自分の仕事は簡単すぎる、もっと難しい仕事もできる自信があるのにと。周りのみんなはスキルがないし、自分で考えることができない、そういうこともいいました。
自分はみんなより働いているのに、給料が同じであるのは納得がいかない。Bさんからは、最後にそういう言葉が出てきました。
Bさんは特に自分に不満はなく、周囲の仕事の品質が悪い、上司の指示が悪い、会社の仕組みが悪いと思っていたのです。自分ではなく、周りの環境を改善させたいという思いが、生産性向上という言葉になっていることが分かってきました。
■相手にしか向かわない改善のエネルギー
ある日のことです。Bさんと話していて、Aさんの話題が出てきました。そのときBさんがこういったのです。
「Aさんも、もっと会社や周りの環境のことを考えたらいいのになあ。周りを良くしないと、自分も悪くなるのに」
私はこれを聞いて、なるほどと思いました。
Aさんの改善エネルギーは自分に向かっています。ところが、Bさんの改善エネルギーは相手に向かっています。Aさんは自分にエネルギーをかける。Bさんは相手にエネルギーをかける。だからBさんは、Bさんご自身の改善点について考えても答えが出てこないのだと分かりました。
同じような悩みでも、本人の意識が違えば、同じアドバイスでは解決できないのです。
■まず自分から改善してみよう
原因が自分になくても、まず自分から改善していく気持ちを持っている人は、成果が出やすいと思います。同じ目標を持っていても、成果が出る人と出ない人がいますが、私にはこの差が、エネルギーのかけ方の違いから生まれるものだと感じられます。
図1 エネルギーのかけ方――最初は自分に、次にチームに |
原因が第三者にあっても、改善するのは自分だ。状況を悪化させないようにするのは自分だ。問題を延焼させないのは自分だ。再発させないのは自分だ。こういうふうに、自分に対して「工夫する」「生み出す」「手間をかける」というエネルギーを惜しまないことが、重要だと感じています。
「工夫する」「生み出す」「手間をかける」には、ある共通のキーワードがあります。それは「時間」です。
体力をつけるのにも時間がかかります。利息が増えるのにも時間がかかります。子どもを育てるのにも時間がかかります。自分を見つめるのにも時間がかかります。こういう時間を惜しむと、トラブルが起こります。
自分にかける時間を確保できるかどうか。これがキーポイントです。自分に時間をかける人が集まったチームは、成果が出やすく、達成時間も短くてすみます。
ITエンジニアの仕事は難しいものですね。だから会社に時間をかける人は多いですが、自分自身に時間をかける人は少ないし、それが自然な流れなのかもしれません。時間を生み出すのは、何か特別なパワーを発揮しないと難しいかもしれません。
あなたは、自分に時間をかけるパワーがありますか? もしなくても、焦る必要はありません。誰か相談できる人を見つけ出してください。樋口研究室オフィスに足を運んでいただいてもかまいません。
悩んだら、あなたにぴったりのサポーターを見つけて、支援を受けられるようにしましょう。自分の心の動きや行動力にぐんと変化が出ると思います。そうすれば、メンタルヘルスを維持する力もアップする。私はそう思います。
今回のインデックス |
成果を出せる人――まず自分を変えようとするAさん |
成果を出せない人――自分は変えず、周りだけ変えようとするBさん |
筆者プロフィール |
飯田佳子●樋口研究室の認定ITコーチ。会社ではプロジェクトの品質管理の仕事をしている。「システム構築には技術やプロセスも重要だが、もっと重要なのは人間の品質アップ」。そう信じて、日々、社員のパフォーマンス向上を目指している。 |
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