第1回 頼りなく見られる自分に別れを告げる
鹿野晴夫・大塚千春(アイ・シー・イー)
2008/9/9
CompTIA日本支局が提供する「ビジネス・コミュニケーション・スキル診断」(BCSA)のスキル定義に基づき、ビジネスコミュニケーション力簡易診断テストを掲載する。「今日からできるスキルアップ術」で、ビジネスコミュニケーション力のスキルアップを図ってほしい。 |
「ITエンジニアにもコミュニケーション力は必要だ」。そういわれたのは昔のこと。最近では、「ITエンジニアにこそ、高いコミュニケーション力が求められる」といわれる。
プロジェクトの進行には、無数のコミュニケーションが必要だ。マネージャとメンバー、メンバー同士、他部署、顧客、外注先・協力会社の担当者との関係など。問題を抱えるプロジェクトは、コミュニケーションに問題があるといっても過言ではない。
■ビジネスコミュニケーション力は、性格に左右されない
コミュニケーション力不足を感じながら、放置している人が多い。その理由は、コミュニケーション力が「性格」に左右されると考えられているからではないだろうか? 「性格は簡単に直せない。だから、コミュニケーション力を伸ばすより、ITエンジニアとしての専門性を高めた方がよい」という意見だ。
もちろん、専門性は大いに高めていただきたい。しかし、コミュニケーションがうまく取れずに、その専門性を発揮できないのはもったいない。
コミュニケーションは、野球のキャッチボールにたとえられることが多い。情報のキャッチボールが、ビジネスにおけるコミュニケーションだからだ。性格は関係ない。コミュニケーションに必要なスキルを磨けば、誰でも上手になれる。
■ビジネスの相手として頼りになると思わせる
ビジネスコミュニケーション力を伸ばす第一歩は、相手にビジネスの相手として「頼りになる」と思わせること。別のいい方をすれば、「あなたの話を聞きたい」「あなたと話をしたい」と相手に思わせるスキルを磨くことである。
コミュニケーション力不足で問題が発生した事例を見てみよう。
事例 |
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Aさんは、作業を外注するためにあるミーティングを設定した。ミーティングに現れた外注先のBさんはベテランだそうである。しかし、実際のBさんの印象は正直いって頼りない。表情が暗く、Aさんと目を合わせようとしないのだ。質問に対する答えもあいまいだ。「こういうタイプの人には、ビシッというに限る」。そう考えたAさんは、作業内容を説明した後、「1カ月後の納期を必ず守ってください」といって、ミーティングを終えた。その後、納期の1週間前に、Bさんへ確認のメールを送った。Bさんからの返事には、納品が遅れるとは書いてなかった。しかし、期日になっても納品はなかった。Aさんは激怒し、Bさんの上司を会社に呼び付けた。 Bさんの上司は、Aさんに謝罪した後、Bさんに事情を聞いた。以下が、Bさんのいい分である。
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この事例でのBさんの問題点は何だろう? 最初のミーティングで「無理だ」と強く主張すべきだったのだろうか? 一番の問題点は、「頼りない」印象をAさんに与えてしまったことである。頼りない印象で「無理だ」と伝えたとしても相手は納得しない。「無理なのは頼りないBさんに原因がある」と相手は考えるからだ。
Bさんが、「頼りになる」印象をAさんに与えることができていれば、事態は変わっていたはずだ。頼りになる相手がいうことなら、Aさんは耳を傾けただろう。仮に、最初のミーティングで合意が得られなかったとしても、後日あらためて調整することで、妥協案を引き出せた可能性が高い。少なくとも、Aさんが激怒することは避けられたはず。
では、相手に「頼りになる」印象を与えるにはどうしたらよいのだろうか? 解答を考える前に、簡易版ビジネスコミュニケーション力診断にチャレンジしてみよう。
なお、読者の皆さんもお気付きだと思うが、Aさんのコミュニケーションの取り方にも問題がある。第一印象だけでBさんの人となりを判断し、Bさんの合意を得ないままミーティングを終了した。その後も必要なフォローを行っていない。結果として、納期が守られないという事態を招いている。こうした問題の解決方法は、今後の連載で紹介する。
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