第5回 部下が本当に嫌がることは、しかられることではなく「無関心」
ピースマインド
カウンセラー 石川賀奈美
2010/10/13
■誰もが「ストローク」を求めている
交流分析では、「人はストロークを得るために生きている」と考えられています。プラスのストロークが得られない状況が続くと、代用としてマイナスのストロークを求める行動を取り始めます。
エンジニアライフ コラムニスト募集中! |
あなたも@ITでコラムを書いてみないか 自分のスキル・キャリアの棚卸し、勉強会のレポート、 プロとしてのアドバイス……書くことは無限にある! コードもコラムも書けるエンジニアになりたい挑戦者からの応募、絶賛受付中 |
つまり、人間にとっては「ストロークがない状況」が最もつらいことだといえます。ストロークがない状況とはすなわち「関心を持たれない状況」です。チームメンバーは放っておかれることを最も嫌がります。つまり、マネージャは、メンバーに日々ストロークを投げ掛ける必要があるのです。
プラスにせよ、マイナスにせよ、マネージャがメンバーにストロークを投げ掛けるには、どうすればよいでしょうか。まず、関心を持って日々メンバーのことをよく見ていなければ、ストロークは投げ掛けられないでしょう。忙しいマネージャにとってなかなか大変なことですが、業務達成のための指導や育成、メンタル面の変化の早期発見など、「見ること」が役に立つ場面はたくさんあると思います。
■ストロークを投げ掛けるときのポイント
ここで、ストロークを人に投げ掛けるとき、気を付けておきたい4つのポイントを紹介しましょう。
- タイミング
- 相手にとっての意味を考える
- 表現を工夫する
- 自分もストロークを受け入れる
●1.タイミング
きちんと面談の形で話すにせよ、すれ違いざまにちょっと声を掛けるにせよ、タイミングによって効果はかなり違ってきます。
- 相手が必要としているときに声を掛ける
- しかるときは、その出来事があった直後の方がよい
※とっさに言葉を掛けるには、普段から相手と積極的につながろうとする“構え”を持つこと
●2.相手にとっての意味を考える
「タイミング」とも関連しますが、「いま、このことを伝えたら相手はどう受け取るだろうか?」という問い掛けはとても大切です。特に、その時点では相手がマイナスに受け取る可能性が高いけれど、後の成長のために伝えておく必要がある場合(例えば、業務に関する注意など)は、伝えた後にフォローすることも念頭に入れておく必要があります。
ここで、第2回「オープンマインド――チームがまとまらないときの処方箋」で取り上げた「ジョハリの窓」が参考になるでしょう。
「自分がいま伝えようとしていることは、相手にとってどの窓に相当することなのか?」――本人が気付いていない点を指摘する場合、相手の怒りを買ってしまう場合があるかもしれませんので、注意が必要です。
●3.表現を工夫する
「相手にとっての意味を考える」と関連して、どんな表現を使うかを日ごろから気を付けておく必要があります。
- 人格を否定する表現は使わない
- 思い込みや断定的な表現はしない
- できるだけ事実に基づいた表現を使う
●4.自分もストロークを受け入れる
メンバーから「○○リーダーって、〜〜ですね」といわれることがあると思います。「結構、Sですよね」「いつもしっかり見ていますよね」などといわれた日には、むっとしたり「えっ」と驚いたりすることがあるかもしれません。そんなときは、「そうかもなあ?」くらいに、まずは受け止めることです。お互いに印象をいい合えるチームは風通しが良い証拠ではないでしょうか。
■チームは「人そのもの」。人への関心を持つことがとても大事
チームは単なる「入れもの」ではなく、人そのものです。だからこそ、人をマネージするには人への関心を持つことがとても大切なのです。下記のプロセスを踏んで、自分のストロークを知りましょう。
- 人が自分について何気なくいうことを書き出してみる
- さらにそれがプラスかマイナスか分類する
- しばらくそのリストを眺める
- 何か自分の成長に役立つことが含まれていないだろうか、と考えてみる
まずは、プラスのストロークからたくさん投げてみてください。人へのプラスの言葉はいう側も少しいい気分になれます。そのうえで、時には辛口(マイナス)のストロークも使いましょう。ぴりっとしたチームになれれば効率も上がることでしょう。
■参考文献
-
杉田峰康(著)『肝心なときにいつも失敗する人たち』PHP研究所、2000年。
-
野口吉昭(編)/HRインスティテュート(著)『コミュニケーションのノウハウ・ドゥハウ』PHP研究所、2005年。
- マーシャル・ゴールドスミス&マーク・ライター(著)/斎藤聖美(訳)『コーチングの神様が教える「できる人」の法則』日本経済新聞出版社、2007年。
筆者プロフィール | ||
|
@IT自分戦略研究所は2014年2月、@ITのフォーラムになりました。
現在ご覧いただいている記事は、既掲載記事をアーカイブ化したものです。新着記事は、 新しくなったトップページよりご覧ください。
これからも、@IT自分戦略研究所をよろしくお願いいたします。