プロカウンセラーに学ぶチームビルディング

プロカウンセラーに学ぶチームビルディング

第5回 部下が本当に嫌がることは、しかられることではなく「無関心」

ピースマインド
カウンセラー 石川賀奈美
2010/10/13

前のページ1 2

誰もが「ストローク」を求めている

 交流分析では、「人はストロークを得るために生きている」と考えられています。プラスのストロークが得られない状況が続くと、代用としてマイナスのストロークを求める行動を取り始めます。

エンジニアライフ
コラムニスト募集中!
あなたも@ITでコラムを書いてみないか

自分のスキル・キャリアの棚卸し、勉強会のレポート、 プロとしてのアドバイス……書くことは無限にある!

コードもコラムも書けるエンジニアになりたい挑戦者からの応募、絶賛受付中

 つまり、人間にとっては「ストロークがない状況」が最もつらいことだといえます。ストロークがない状況とはすなわち「関心を持たれない状況」です。チームメンバーは放っておかれることを最も嫌がります。つまり、マネージャは、メンバーに日々ストロークを投げ掛ける必要があるのです。

 プラスにせよ、マイナスにせよ、マネージャがメンバーにストロークを投げ掛けるには、どうすればよいでしょうか。まず、関心を持って日々メンバーのことをよく見ていなければ、ストロークは投げ掛けられないでしょう。忙しいマネージャにとってなかなか大変なことですが、業務達成のための指導や育成、メンタル面の変化の早期発見など、「見ること」が役に立つ場面はたくさんあると思います。

ストロークを投げ掛けるときのポイント

 ここで、ストロークを人に投げ掛けるとき、気を付けておきたい4つのポイントを紹介しましょう。

  1. タイミング

  2. 相手にとっての意味を考える

  3. 表現を工夫する

  4. 自分もストロークを受け入れる

1.タイミング

 きちんと面談の形で話すにせよ、すれ違いざまにちょっと声を掛けるにせよ、タイミングによって効果はかなり違ってきます。

  • 相手が必要としているときに声を掛ける

  • しかるときは、その出来事があった直後の方がよい

※とっさに言葉を掛けるには、普段から相手と積極的につながろうとする“構え”を持つこと

2.相手にとっての意味を考える

 「タイミング」とも関連しますが、「いま、このことを伝えたら相手はどう受け取るだろうか?」という問い掛けはとても大切です。特に、その時点では相手がマイナスに受け取る可能性が高いけれど、後の成長のために伝えておく必要がある場合(例えば、業務に関する注意など)は、伝えた後にフォローすることも念頭に入れておく必要があります。

 ここで、第2回「オープンマインド――チームがまとまらないときの処方箋」で取り上げた「ジョハリの窓」が参考になるでしょう。

 「自分がいま伝えようとしていることは、相手にとってどの窓に相当することなのか?」――本人が気付いていない点を指摘する場合、相手の怒りを買ってしまう場合があるかもしれませんので、注意が必要です。

3.表現を工夫する

 「相手にとっての意味を考える」と関連して、どんな表現を使うかを日ごろから気を付けておく必要があります。

  • 人格を否定する表現は使わない

  • 思い込みや断定的な表現はしない

  • できるだけ事実に基づいた表現を使う

4.自分もストロークを受け入れる

 メンバーから「○○リーダーって、〜〜ですね」といわれることがあると思います。「結構、Sですよね」「いつもしっかり見ていますよね」などといわれた日には、むっとしたり「えっ」と驚いたりすることがあるかもしれません。そんなときは、「そうかもなあ?」くらいに、まずは受け止めることです。お互いに印象をいい合えるチームは風通しが良い証拠ではないでしょうか。

チームは「人そのもの」。人への関心を持つことがとても大事

 チームは単なる「入れもの」ではなく、人そのものです。だからこそ、人をマネージするには人への関心を持つことがとても大切なのです。下記のプロセスを踏んで、自分のストロークを知りましょう。

  1. 人が自分について何気なくいうことを書き出してみる

  2. さらにそれがプラスかマイナスか分類する

  3. しばらくそのリストを眺める

  4. 何か自分の成長に役立つことが含まれていないだろうか、と考えてみる

 まずは、プラスのストロークからたくさん投げてみてください。人へのプラスの言葉はいう側も少しいい気分になれます。そのうえで、時には辛口(マイナス)のストロークも使いましょう。ぴりっとしたチームになれれば効率も上がることでしょう。

参考文献

  • 杉田峰康(著)『肝心なときにいつも失敗する人たち』PHP研究所、2000年。

  • 野口吉昭(編)/HRインスティテュート(著)『コミュニケーションのノウハウ・ドゥハウ』PHP研究所、2005年。

  • マーシャル・ゴールドスミス&マーク・ライター(著)/斎藤聖美(訳)『コーチングの神様が教える「できる人」の法則』日本経済新聞出版社、2007年。

筆者プロフィール
profile  ピースマインド 石川賀奈美
 臨床心理士、産業カウンセラー。米国フォーカシング・インスティチュート認定フォーカシング・トレーナー。現在、ピースマインドで成人を対象に幅広い相談に応じるとともに、定期的に企業に赴き、社員のカウンセリングを行う。高齢者虐待防止に関連し、在宅介護者のカウンセリングにもかかわっている。著書に『SEのためのうつ回避マニュアル 壊れていくSE』(翔泳社刊、分担執筆)がある。「出口のないトンネルはない。しばし、一緒に光を目指して歩いていきましょう」

前のページ1 2

自分戦略研究所、フォーラム化のお知らせ

@IT自分戦略研究所は2014年2月、@ITのフォーラムになりました。

現在ご覧いただいている記事は、既掲載記事をアーカイブ化したものです。新着記事は、 新しくなったトップページよりご覧ください。

これからも、@IT自分戦略研究所をよろしくお願いいたします。