第9回 「自分なりのポリシー」が素晴らしい仕事を生む
樋口研究室
飯田佳子
2010/6/24
優れた仕事は明確なポリシーから生まれる。自分なりのポリシーを持つ人の行動を参考にしつつ、「ポリシーを立てる」ときに使えるビューチェンジを学ぼう。 |
あなたは、自分の行動の指針となるような「ポリシー」を持っているだろうか。素晴らしい仕事をするためには、ポリシーが欠かせない。
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明確なポリシーに沿った行動は、他人から見ると「わがまま」「頑固」「自分勝手」に映るかもしれないが、それでもポリシーを持って行動をするのは重要なことである。
■ 「自分勝手」な部下
今回はあるプロジェクトマネージャ(PM)の事例を紹介しよう。彼のチームには、Aさんというメンバーがいた。Aさんは非常に個性が強い人物で、PMいわく「自分勝手」らしい。
Aさんは、いつも顧客の前で自社やチームの秘密をばらしてしまうそうだ。事前の打ち合わせで「顧客には絶対にいうな」とPMが念を押したことでも、Aさんは思ったことをすべて口に出していってしまう。PMはAさんの「軽率」な態度が気になっていた。
また、Aさんは作業を始めたらほかのことがまったく見えなくなる、という点もPMには悩みごとだった。デバッグや障害対応を始めたとたん、ほかのすべての約束(会議の時間やレポートの締め切り)を完全に忘れてしまうという。PMは、Aさんの「忘却」が、ほかのメンバーに迷惑を掛けているのではと心配していた。
さらにもう1つ。Aさんは、土曜も日曜も出社して、平日の準備をしているという。忙しいなら分かるが、忙しくないときも同じらしい。休日の出勤手当を請求するということはさすがにないものの、PMはAさんの管理責任を問われたら困るので、「無駄」な出勤はやめてほしいと感じていた。
PMは、Aさんのことを「自分勝手なやつ」だと感じ、なんとかAさんの行動を修正したいと考えていた。
■ 実は仕事ができるAさん
この話を聞いた筆者は、「Aさんに対して、きっちり会社や組織の決まりを教えてはどうか」とアドバイスした。
しかしPMは「それは難しい」と困り顔だった。Aさんは、ほかのメンバーにはない、高いレベルの仕事をこなすからだという。
Aさんは、非常に高いプログラミングスキルを持っていた。数多くのプログラミング言語をマスターし、そら(暗記)でコーディングしても、ほとんどコンパイルエラーが出ないのだ。
また、Aさんは自己投資に熱心だった。業務が終わった後は、社外コミュニティが主催する勉強会に足しげく通っている。
「トラブル時に冷静」というのもAさんの優れた部分だという。客先で障害が起こったとき、みんなが騒ぐ中、Aさんは慌てることなく黙々と仕事をこなす。
こうした長所があるせいか、PMはAさんに対し、前述のような「直してほしいこと」をいえないでいた。
■ 逆から見れば……
相手の行動が「自分勝手」に見えるとすれば、それは自分の中に「こうあるべきだ」というイメージがあるからだ。だが、逆から見れば、優れた行動に見えるかもしれない。
- 「軽率」な発言をする
- 「忘却」するほど集中する
- 「無駄」に出社する
ということは、逆から見れば、
- 「素直」過ぎて軽率になってしまう
- 忘却するほど「熱心」である
- 「注意深く」準備に力を入れている
ともいえる。
Aさんの行動は興味深い、と筆者は感じた。
話を聞く限り、Aさんは「博学」で「前向き」、かつ「冷静」な人物のようだ。Aさんは、本当はどんな人なのだろう。会って話がしてみたいと筆者は考えた。
そこで筆者は、樋口研究室が主催するセミナーのクーポン券をPMに渡した。
「このクーポン券をAさんに渡してくれませんか。気が向いたら樋口研究室のセミナーに来てほしい、とお伝えください」
実際にAさんと対面 |
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