いまお薦めのスキルはこれだ! 2007年春版

いまお薦めのスキルはこれだ! 2007年春版

長谷川玲奈(@IT自分戦略研究所)
2007/4/24

ITエンジニアがいま学ぶべきスキルは何か? 顧客とのやりとりに必須のスキル、新人指導に役立つスキルとは。教育のプロに聞いた。

 昨年(2006年)、「2006年秋・いまお薦めのスキルはこれだ!」として教育ベンダが習得を勧めるスキルを聞き、若手エンジニアのヒントにしようと試みた。「Java」「セキュリティ」「ヒューマンスキル」などが挙げられつつ、全体として明らかになったのが「基礎的なスキル」「自分の担当分野だけではなく、広範囲のスキルを身に付けること」の重要性だった。

 いま人気のスキル、学ぶべきスキルについて、昨年秋から変化はあったのだろうか。

 今回、人気のスキルとして教育ベンダ3社がそろって挙げたのが「プロジェクトマネジメント」だ。必ずしもPMP資格取得を目的とはせず、年代、職位など学ぶ層が広がり、新人研修にも多く取り入れられているという。また、若手に必要なヒューマンスキルとしてコーチングやファシリテーション、ヒアリングのスキルが挙げられた。

伸び率著しいプロジェクトマネジメント関連コース

 ネットラーニング 代表取締役社長 岸田徹氏によると、同社の提供コースで受講者が目立って増えているのがプロジェクトマネジメント系だ。「『PMI公式認定ITプロジェクトマネジメント』は35PDU(PDU:Professional Development UnitはPMP資格の更新に必要なポイント)が取得できるコースで、大変人気があります」という。受講者数の伸び率が高いコースとして「組み込み用リアルタイムOS基礎」「オブジェクト指向基礎」が続く。

ネットラーニング 代表取締役社長 岸田徹氏

 「PMI公式認定ITプロジェクトマネジメント」は伸び率もトップだが、2006年4月〜2007年3月の受講者数ランキングにおいても全体の4位という位置にある。受講者の年代層は20代後半〜30代が多いが、「4位まで上がってきている要因として、受講者層の広がりを感じている」という。そういった意味で若手エンジニアに取得を勧めたいスキルは「やはりプロジェクトマネジメント系」ということだ。

 「新入社員研修の担当者からも、PMBOKの知識を学ばせたいという要望が増えている」という現状もあるようだ。これに対応して、PMBOKに対応したPMI認定コースが秋にも追加される予定だという。

 定番的な人気コースとしては、「C言語プログラミング」「Javaプログラミング」「UNIX」「システム設計」「ネットワークTCP/IP」が挙げられた。「中堅向けのコースで、各分野の経験のある人たちがさらに学習したいときに受けるものです」

 そのほかの注目スキルとして、岸田氏は「英語力」を挙げた。オフショアを含めて海外のITエンジニアと仕事をする機会が増える中、「コミュニケーションという意味で『徹底添削! 英文ビジネスeメール入門』というコースが伸びています。合計20回の添削指導があり、大変実践的で人気があるコースです」という。英語という分野では、もともとTOEIC関連のコースはITエンジニアにも人気があるそうだ。

 職場で英語を使う頻度は、所属する会社や担当する案件にも依存するように思えるが、今後のITエンジニアには英語力も重要になっていくのだろうか。「ITエンジニアが英語を使う機会はけっこう多いと思います。技術情報は英語で読んでいる人たちが多いでしょう。きちんと情報をたどろうとすると英語で読まざるを得ませんから。これまでは読むところだったのが、最近はコミュニケーションの面でも英語が重要になってきています」

1位
基本情報技術者総合対策コース
2位
C言語プログラミング Step1
3位
Javaプログラミング Step1
4位
PMI公式認定ITプロジェクトマネジメント
5位
UNIX Step1
ネットラーニングの2006年4月〜2007年3月の受講者数ランキング

PMBOKの認知は進む

 グローバル ナレッジ ネットワーク ソリューション本部 PM/SWEグループ プロダクトマネージャー 田中亮氏は、「資格としてではなく、PMBOKというもの自体が認知されてきたようです」と話す。

 受講者の状況として「PMP資格は依然として堅調ですが、資格にこだわらずPMBOKのフレームワークを学びたいという人が増えてきていると感じます」という。以前は試験対策としての受講がほとんどだった。「プロジェクトをマネジメントするに当たって、マネージャだけでなくメンバーもPMBOKに従った用語などを習得すべきであるという話を、お客さまからよく聞くようになりました。例えば進ちょく報告などの場面において、マネジメントされる側もフレームワークを分かっていないとなかなかうまく進められないということが背景としてあるようです。そこからチーム全体で学びましょうという考え方が広がっています」

 昨年、PMPの下位資格に当たるCAPM(Certified Associate in Project Management)資格が日本語に対応した。「メンバー向けのエントリー資格で、米国とともに日本でも取得者が増えてきています。注目されつつある状況だと思います」。新入社員研修でも「PMBOKに従ってプロジェクトを学ぶコースを取り入れているところが多いです」とのことだ。

 加えて「上流工程の設計のフェイズ、要件定義に関するスキルは注目されている」という。

 同社 ソリューション本部 テレコム・公共第1グループ マネージャー 技術教育エンジニア 吉原岳洋氏は、ネットワーク分野のベンダ資格系・要素技術に関してこう語る。「2007年3月のCCNPの試験切り替えに伴い、駆け込み受験のための受講者が増えるのではと予想していましたが、やはり2006年末はCCNP関連コースが急激に伸びました。現在が新試験対応で、旧試験からのアップデート部分が比較的少ないBSCIとBCMSNのコースに人気があります」

グローバル ナレッジ ネットワーク ソリューション本部 テレコム・公共第1グループ マネージャー 技術教育エンジニア 吉原岳洋氏

 要素技術で目立つのが、やはり基礎的なコース。「入門系は安定的に集客があります。ネットワークはアプリケーションの下というか土管の部分なので、ITエンジニアであれば知っておく必要があります。トレンド的にもネットワークを絡めたアプリケーションは増えていますから」

 セキュリティ関連コースの集客も増えている。「『どうやって学んだらいいですか』という問い合わせが多く、それに対してネットワークのセキュリティ関連コースを数多く用意しています。お薦めのスキルです」

 吉原氏は「ネットワークは目に見えないので、分かりにくい側面を持っている」という。そのため「新入社員研修で、ネットワークのトレンドを紹介して面白さを教えてほしいという要望が多いです。例えば携帯電話やWiMAX、VPNの仕組みを分かりやすく解説し、ネットワークの面白さを学ばせるコースを用意しています」。その後基礎に進ませるという流れだという。

 同社 ソリューション本部 アーキテクチャーグループ 技術教育スペシャリスト 片岡正枝氏は、マイクロソフト・オラクル・Linux関連技術について「開発系の技術者はあまり資格にこだわらなくなってきている印象があります。それより現場ですぐに役立つスキルを求めている人が多いようです」と話す。

 「開発をするにも、ものを売るにも切り離せないWindows関連知識の基礎コースは根強い人気です」と語る片岡氏は、目先の技術のみを求めるITエンジニアの行動に警鐘を鳴らし、基礎の重要性をこう説明する。「ピンポイントでトラブルシューティングに役立つ話題が欲しいという人が多いのですが、そうしていると多分追いつかなくなります。つまり、トラブルとトピックが1対1で結び付いていると、トラブルが100あったらトピックも100必要なことになってしまうのです。基礎をしっかり学ぶことでトラブルの6割が解決できれば、あとの4割は予測できるようになります。そういう意味でも、若い人には特に基礎を学んでほしい」とのことだ。「ITエンジニアはすべての要素を幅広く身に付けて、その上に専門的な部分が必要になっているのかなと感じます」


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