いまお薦めのスキルはこれだ! 2007年春版

2007年秋、スキルの最新動向を知ろう

荒井亜子(@IT自分戦略研究所)
2007/10/25

今後注目のスキルとは?

 これまで、現在人気の講座とスキルを見てきたが、今後注目の講座、スキルについても聞いた。各社が共通して挙げたのは、プロジェクトマネジメント、Java、ヒューマンスキル、ITILだった。さらに、富士通ラーニングメディアとNECラーニングの2社がお薦めするのは、Access、Excel、VBA、PowerPointといったオフィス系のスキルだった。羽賀氏によると、業務改善のためのIT活用の教育は重要だそうだ。「エンジニアでも事務処理はある。例えば、Excelを使って集計・分析し、コストや稼働比率などを考えなければいないケースもある」(羽賀氏)。こういった内容に関しては「人から教わった方が効率的で楽」なのだという。実際に講座を開設すると全体を通して予想以上に反響があり、受講者の約2割をエンジニアが占めているという。

 富士通ラーニングメディアの受講人気ランキングを見ると、「実践」と名の付く講座が上位に多く、資格取得に向けた講座は見当たらない。また、同社の受講者数の増加率が高いとされる、プロセスモデリングやデータモデリングといったアプリケーション開発における分析・設計の実践トレーニングも、現場で直ぐに活用できるスキルを身に付ける講座である。「実践」と名の付く講座が上位に多いことについて羽賀氏は、「ここ2〜3年、資格ビジネスは伸びていない。資格取得を、目的ではなくスキルアップのマイルストーン的に考える人が多くなったのだと考えている。さらに、昨今の、OJTが昔ほど機能していない現状から、実際の現場ですぐに役立つスキルを研修で身に付けたい、そういった研修を開催してほしいという要望が非常に強い」と述べる。NECラーニングの矢納氏は「資格は客観的に知識を測れるが、実力を測るという観点では弱い面もある。また昨今、資格が多すぎてどれが有効なのか分かりにくくなっている。ただ、資格取得は勉強をした分が成果として出るためモチベーションになる」と述べた。

 では、数ある資格の中でお薦めな資格とは何か。そして、資格を取得する意義とは何なのだろうか。グローバルナレッジの担当者に聞いた。

MCPとCCNAの改訂とその対策

グローバルナレッジ ソリューション本部 アーキテクチャーグループ プロダクトマネージャ 福田真紀子氏

 グローバルナレッジ ソリューション本部 アーキテクチャーグループ プロダクトマネージャ 福田真紀子氏は、この秋以降の注目は、何といってもWindows Server 2008に対応した認定資格(MCPプログラム)だそうだ。9月13日のマイクロソフトのリリースにあるとおり、製品出荷前に(ベータ試験が先行で行われることはあったが)アップグレード資格試験を実施することは、MCP開始以来初である。福田氏によると、年末年始にかけてWindows Server 2008認定資格に関する大規模なプロモーションが計画されているそうだ。

 MCPの資格取得の進め方には、2つの道がある。1つは、製品に関する基礎的な技術を証明するMCTSの資格を多く取得し、基礎技術の幅を広げる道。もう1つは、分野を絞ってMCTS(Microsoft Certified Technology Specialist)を取得し、Windowsアプリケーション開発、Webアプリケーション開発など、特定分野のノウハウをアピールする資格MCPD(Microsoft Certified Professional Developer)、または、データベース管理、ビジネス・インテリジェンスなどの特定分野の専門知識と職務遂行能力を証明するMCITP(Microsoft Certified IT Professional)と、上位資格を取得していき、得意分野を突き詰めていく道だ。福田氏は「MCTSでも、1つの資格だけでは仕事の幅が狭まる。少なくとも2つの分野は必要。まずはMCTSを多く取得し知識の幅を広げ、その後に上位資格に挑戦し、知識の深さを極めていくという方法がお勧め」と語る。「例えば、WindowsをベースとしたITインフラを構築するには、MCTSのSharePoint ServerとExchange Serverの組み合わせはいまや必須。さらに、高度な設計の知識を身に付けることで効果的な提案ができる」とも付け加えた。

 福田氏は「確かに昔ほど資格取得を目的として受講をしにくる人はいない」と述べる一方、資格を取ることの重要性について「例えば、.NETの試験は難しく範囲も広い。講師でも何も準備しないでアップグレード試験を受けにいくと、1度で合格できないこともある。資格試験を受けることで、ある程度できると思っている人でも、自分の弱い部分が分かる。自分のスキルのバランスをちゃんと測るためには資格試験を受けてみて、足りないところを伸ばしていくことは重要」と説く。

 Windows Vistaの講座には予想以上の集客があったという。「XPや2000のときのように、クライアントのトレーニングは集客できないのではないかと思われていたが、Windows Vistaに関しては違った。Windows Vista自体が大きな変化だったこともあると思うが、MSDST(Microsoft Certified Desktop Support Technician)の後継に当たる試験も出てきていることから、今後資格取得者も伸びていくだろう」(福田氏)と語った。

グローバルナレッジ ソリューション本部 ネットワークグループ プロダクトマネージャ 拝野学氏

 続いて、同社 ソリューション本部 ネットワークグループ プロダクトマネージャ 拝野学氏に、ネットワーク関係について話を聞いた。拝野氏は、ネットワークにおける注目の資格として、今年の12月に日本語の試験が開始される予定のCCENTを挙げた。CCENTとは、ネットワーク入門者向けの認定資格で、CCNAの下位に当たる。「CCNAが年々難しくなってきていることもあり、ネットワークをこれから学ぶという人には(CCNAは)敷居が高くなってきている。ネットワークエンジニアのすそ野を広げることがCCENTの目的。また、シスコシステムズの製品はいままで大企業向けが主だったが、今後中小企業向けにも販売していく戦略があり、中小企業を顧客としているネットワークベンダの育成も兼ねていることも背景にある」(拝野氏)。

 言及しておきたいのは、CCENTの開始で、CCNAの範囲も広まることだ。現行のCCNAの試験は2008年3月末で終了する、今後は、IPアドレスの設定、基本的なセキュリティの導入、ワイヤレスネットワークの概念の理解などが含まれるICND1、小規模から中規模のルーティングネットワーク、スイッチングネットワークの導入・運用、およびトラブルシューティングに必要な知識とスキルが含まれるICND2、ICND1とICND2が合わさったコンポジットのCCNAという新しい試験が3つできる。それに、CCENTのみの取得であればICND1試験に合格すればよいが、新CCNAの取得にはICND1とICND2両方の試験に合格、もしくは新しいCCNA試験に合格する必要がある。すなわち、CCNA資格を取りたい人は2008年3月末までに受けた方が範囲も狭くて済む。

 具体的に、CCNAの範囲がどう変わるのかを尋ねると、新しいCCNAには、無線LANの内容が追加、そしてVPNなどネットワークにおけるセキュリティの内容が強化されるとのこと。また、ICND2は実際のオペレーションができることに重点を置いているということだった。

 拝野氏は、「ネットワークで今後身に付けておいた方がいいスキルはIPv6。いままで『来る来る』といわれながらなかなか来ていないが、Windows Vistaで標準対応になっていることからも、今度こそ来るはず! そのとき困らないためにもいまのうちから身に付けておいた方がいいと思う」と述べた。IPv6は、新しいCCNAにも含まれるようになった。

 一般のエンジニア向けのCCNAやCCENTの人気はさることながら、より専門の分野では、シスコのセキュリティ製品であるASAに関するコースが人気だそうだ。拝野氏によるとシスコのセキュリティのコースの中でも特に需要が高いという。

 以上見てきたように、ITエンジニアの資格取得への意向は弱まりつつあるようだ。とはいえ、資格取得は、自分の弱点を客観的に測れる、試験に合格することでモチベーションが高まるなどのメリットもある。

 2006年からの傾向として、「2006年秋・いまお薦めのスキルはこれだ!」「いまお薦めのスキルはこれだ! 2007年春版」にあるように、プロジェクトマネジメント、Java、ヒューマンスキル、ITILはここ数年人気が高く、いまや定番と化していることから今後も注目のスキルといえる。また、基礎を固めたうえで、実践的なスキルを身に付けることが大切という傾向も定着しつつあるようだ。今回の記事を、自分に必要なスキルや資格を見極めるヒントにしていただきたい。


今回のインデックス
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